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アルコールが一滴も無い筈の閉鎖病棟で泥酔を繰り返す人気小説家。キックボクシングのタイトル・マッチ、勝利の瞬間にリングで死亡した王者。片や厳重な警備の病院で、此方千人以上の観客が見守る中で。丸で神様が魔法を使ったかの様な奇妙な「密室」事件、其の陰に隠れた思いも寄らぬ「病」とは? 天才女医・天久鷹央(あめく たかお)が不可能犯罪に挑む。
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現役の医師でも在る小説家・知念実希人氏には「天久鷹央の推理カルテ・シリーズ」というのが在り、今回読んだ「神話の密室 天久鷹央の事件カルテ」は、其の第11弾となる。「怜悧な頭脳と厖大な知識を持っているが、コミュニケーション能力が極めて低く、要らぬ軋轢を生み捲っている変人女医・天久鷹央。」がシャーロック・ホームズ役、そして内科医見習いの小鳥遊優(たかなし ゆう)がジョン・H・ワトソン役という設定。
「我々一般人は全く同じ意味合いで使っている『アルコール中毒』と『アルコール依存症』だが、全く違う疾患で在る事。」、「異食症や全身性アミロイドーシス等、一般的には余り知られていない様な疾患が取り上げられている事。」等、現役の医師ならではの記述が興味深い。
「バッカスの病室」と「神のハンマー」という2つの中編小説で構成されており、共に“密室殺人”がテーマとなっている。個人的には「バッカスの病室」の方が面白く、「アルコールが一滴も無い筈の閉鎖病棟で、何で泥酔したのか?」という“答え”に、「そう来たか!」という意外さが在ったから。
総合評価は、星4つとする。