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僕が講義とバイトを終えてアパートに帰ると、部屋の前に見知らぬ女がしゃがみ込んでいた。彼女は華子(かこ)と名乗り、嘗て交わした約束の為に会いに来たと言う。済し崩しに同棲生活を送る事になった僕は、次第に華子へ惹かれて行くが、彼女は難病に侵されていて、後僅かな命しかなかった・・・。
共に過ごす時間を大切にする2人。然し、彼女には未だ隠された秘密が在った。
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第14回(2015年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の隠し玉に選ばれた小説「カササギの計略」(著者:才羽楽さん)は、僕・岡部(おかべ)がバイトを終えてアパートに帰った際、部屋の前に見知らぬ美女がしゃがみ込んでいた所から話が始まる。彼女は何故か自分の名前を知っており、「何方様ですか?」の問いには「ミシェル。」の一言。再び「何方様ですか?」と問い掛けた所、行き成り左頬に平手打ちを食らわした彼女は、「早く、開けてよ。」と馴れ馴れしく言うのだった。
「彼女は一体、何者なのだろうか?」、「嘗て交わした大切な約束とは?」、「彼女が口にした『ミシェル』とは、何の事なのか?」等々、気になる要素は多い。「出出しで、読者をストーリー世界にぐっと引き込む。」という点で、成功していると言って良いだろう。
最初は関係性が感じられず、「何の為に描かれたのだろう?」と思っていた人や出来事が、後になって次々にリンクして行く。新人作家とは思えぬ、実に見事な筋立て。
「幾ら美人とはいえ、見知らぬ女性を簡単に家に入れるか?狩野英孝じゃ在るまいし。」といった不自然さは在るものの、ストーリーとしては読ませる内容。
「愛する人の為には、他人に対してこんなにも冷酷になれる物なのか?」とゾッとする思いは残るが、最後の最後に待っている出来事が救いでは在る。
総合評価は、星3.5個とする。