ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「娘が巣立つ朝」

2024年08月14日 | 書籍関連

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高梨(たかなし)家の一人娘・真奈(まな)が、婚約者の渡辺優吾(わたなべ ゆうご)を連れて実家に来た。優吾は快活爽やかと、とても好青年で在る事は間違い無いが、両親の健一(けんいち)と智子(ともこ)とは、何処か会話が嚙み合わない。真奈は優吾君と、上手く遣って行けるのか?両親の胸に兆す一抹の不安。

そして、健一と智子も、其れ其れ心の中にモヤモヤを抱えている。健一は長年勤めた会社で役職定年が近付き、最近会社での居心地が良く無い。週末は、介護施設の母を見舞っている。将来の見通しは、決して明るくない。智子は着付け教室の講師をして忙しくしているが、家で不機嫌な健一に辟易している。もっと仲の良い夫婦のだったのに・・・。

娘の婚約を切っ掛けに、一家は荒波に揺さぶられ始める。父母、そして娘。3人其れ其れの心の旅路は、時に隔たり、時に結び付き・・・紡がれて行く家族の物語。
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伊吹有喜さんの小説娘が巣立つ朝」を読了。伊吹さんの作品を読むのは、総合評価「星4.5個」を付けた「犬がいた季節」に次いで2冊目。半年後に結婚する事を決めた26歳の高梨真奈と其の相手・渡辺優吾、真奈の父母、そして優吾の父母という“2つの家族”を取り巻く“心の揺れ”を描いた内容だ。

以前にも書いた事だが、自分の父方母方親族とでは、“家族の概念”が全く異なった。何方も親族間の仲は良いのだけれど、母方の方は「親族間が付かず離れずといった、程好い距離感を保っていた。」のに対し、父方の方は「家長たる祖母(祖父は定年後、早い段階で亡くなっている。)は絶対的な存在で、其の祖母を中心に、親族の距離感が密接だった。」という感じ。何方にも良しor悪しが在ろうけれど、嫁や婿等、“他所から入って来た人達”にとって、親族の距離感が密接な父方の一族に慣れるのは大変だろうし、居心地の悪さを感じる事も、間々在ったと思う。

良く言われる事だが、夫婦とは言え、所詮、元々は他人同士で在る。長年一緒に暮らし、似通った部分が出来上がったとしても、全ての面に於て一致する訳では無い。況してや“妻の親族”や“夫の親族”となると、合わない事が少なく無くて当然。経済格差学歴格差が凄かったり、趣味・嗜好が違い過ぎると、相手の親族と上手く遣って行くのはしんどい事だろう。

渡辺優吾本人は非常に好青年だが、異常な潔癖症に加え、人生設計に“甘さ”を感じてしまう。又、彼の両親は所謂YouTuberで、父“カンカン”は働き方や暮らし方に付いてのアドヴァイザー、そして母“マルコ”は料理研究家という事なのだが、共に自身が“意識高い系”で在る事を「此れでもか!」と言わん許りに打ち出している、非常に“エキセントリック”な存在。イメージで言えば、「父“カンカン”は、パンツェッタ・ジローラモ
氏の“ちょいわるおやじ風味”を、母“マルコ”は工藤静香さんの『家族を前面に出し、“商売の”にする事を厭わない。』様な所を、其れ其れ極限迄“煮詰めた”。」様な感じが在る。加えて、カンカンは軽薄さが在るし、マルコは相手の気持ちを全く考えずに、嫌み平然口にするのだから、正直、自分は付き合いたいと全く思えない一家だ。

裕福な渡辺家に対し、高梨家は“普通の家族”。とは言え、仲が良かった健一と智子夫婦の間には、微妙な隙間風が吹いていたのだが、娘の結婚を目前に控え、互いの距離感がどんどん開いて行くという状況。相手の一族との余りの差に悩む高梨家は、自身の家族内にも不穏な空気が漂っている訳だ。

全部が全部と言う訳では無いけれど、夫婦や恋人が別れた場合、概して男性は其れ引き摺り続け勝ちだが、女性はスパっと切り替えられ勝ち。の様に思う。「連れ合いが亡くなった場合、男性はガクッと老け込んでしまったが、女性は新たな生活をエンジョイしている。」というケースを、自分の周りで結構目にして来たし。

「どういう結末になるのだろう?」というのが、全く予想出来ない作品だった。でも、結末に到ると、上記した“男女の違い”を痛感させられた。読み手が男性or女性の違いによって、「作品をどう捉えるか?」に大きな差が出て来る様な気がしている。女性の場合「うんうん、判るよ!」と“好意的な捉え方”が、そして男性の場合「何か納得行かないなあ。」という“モヤモヤした思い”を抱える人が多いのではなかろうか。

自分の場合は男性なので、モヤモヤした思いが残ってしまった。高梨家のみならず、渡辺家の今後が上手く行くのか、物語の中の話とはいえ心配で在る。

総合評価は星3つ


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