青柳碧人氏は過去に「日本の昔話(「一寸法師」、「花咲か爺さん」、「鶴の恩返し」、「浦島太郎」、「桃太郎」)を基にしたミステリーの『むかしむかしあるところに、死体がありました。』」、そして、「西洋の童話(「赤ずきん」、「シンデレラ」、「ヘンゼルとグレーテル」、「眠れる森の美女」、「マッチ売りの少女」を基にしたミステリーの『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』」を著して来たが、今回読了した「むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました」は、「むかしむかしあるところに、死体がありました。」に続き、日本の昔話を基にしたミステリーだ。今回、「竹取物語」、「おむすびころりん」、「わらしべ長者」、「さるかに合戦」、「かちかち山」、そして「分福茶釜」を基にした、5つの短編小説から構成されている。
面白かったのは、「同じ男が何度も殺される。」という設定の「わらしべ多重殺人」という作品。「何度も殺された人間が、何故何度も生き返るのか?」に付いては、直ぐに判るのだけれど、「ストーリーが進むに連れて明らかになる、登場人物達の意外な関係性(繋がり)。」が良い。
又、“ループ物”を扱った「七回目のおむすびころりん」は、SFを取り入れたという点では面白いのだけれど(考えてみれば「竹取物語」も、SF作品と言えるのだが。)、設定的に判り難い部分が在るのが難。まあ、「設定的に判り難い部分が在るのが難。」というのは、「むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。」の全体に言え、「どういう事?」と前に遡って確認する事が何度か。
「有名な昔話や童話を題材にしたミステリー。」というのは着想がとても良いのだけれど、内容面では過去2作同様、自分はぴんと来なかった。
総合評価は、星3つとする。