ジャイアンツ・ファンで在り乍ら、当ブログではジャイアンツに対して辛辣な記事を多く書いて来た。「監督の采配」や「選手のプレー」への批判も少なくないが、一番多かったのは「チーム作り」に付いてだったと思う。「生え抜き選手の育成を怠り、無節操に他チームから主力選手を掻き集める。」という、詳細な戦略や長期的ヴィジョンが全く感じられない遣り方を何年も何年も見せられていたので、正直ウンザリしていたのだ。唯、「全くどうしようも無い。」と思い続けていたジャイアンツのフロントに対して、「もしかしたら良い方向に変わってくれるかも。」という期待を感じる様になったのは5年程前から。過去にコメント欄等でも何度か触れたが、2004年に球団代表に就任した清武英利氏の言動からは、それ迄のフロント関係者には珍しい「まともな感覚」が感じられたのが大きかった。その清武氏が2007年~2008年にかけて「週刊ベースボール」に連載していたコラムを一冊の本に纏めたのが、昨年末に発行された「巨人軍は非情か」。
首脳陣や選手達と密にコミュニケーションを図っている様で、彼等の意外な“顔”が垣間見られて面白かった。その采配振りには不満が多かった原辰徳監督。今季は様々な面で改善が為された事も在り、その評価を高く改めさせて貰ったのは以前にも書いたが、どうしても「柔なイメージ」だけは拭い去れなかった。しかし実際の彼は、“良い意味で”かなりの強かさている様だ。そんな逸話が幾つか紹介されている。又、選手達にかける言葉が時宜に適っており、言われた選手達がグッと来る様な内容。ハッキリ言ってしまえばかなり“臭い言い回し”では在るのだが、それをサラッと言えてしまい、尚且つ選手の側もスッと受け容れられるというのは、原辰徳という男の人間性在っての事なのかも。
「詳細な戦略や長期的ヴィジョンを持ってのチーム作り」というのは、この本からも窺い知る事が出来る。迷走し捲っていた昔に戻らない事を、一人のジャイアンツ・ファンとして切に願う。
「人には適材適所というのが在るのだなあ。」と再認識させられたのは、スカウトを担当している大森剛氏に触れた部分。1980年代のプロ野球事情に精通した方なら御存知とは思うが、この時代のジャイアンツはドラフト会議で不可解とも思える指名を2度している。「他にもっと良い候補選手が居る。」と思われたのに、実際に指名されたのは共に慶應大学に在学する選手。当時のオーナー・正力亨氏が慶應大学のOBで、「可愛い後輩を何とか獲れ!」と“現場介入”したのではないかとも噂された。「引退後はフロント入りか、オーナーの鞄持ちでもさせるつもりなのだろう。」と、はた山ハッチ(やくみつる)氏が四コマ漫画でしばしばネタにしていたし。
プロ野球選手として大森氏は、成功したと言い難い成績だった。否、ハッキリ言えば二流選手の範疇だったと思う。そんな状態でユニフォームを脱いだ彼だったが、スカウトとして早い段階から坂本勇人選手に目を付け、渋る上層部に彼の獲得を粘り強く訴え続けたと言う。その結果、ジャイアンツは坂本選手を獲得する事に。スカウトとしての大森氏が居なかったならば、若き主砲の今は無かったかもしれない。「プロ野球選手では無かった木庭教氏。」や「プロ野球選手としては成功出来なかった根本陸夫氏。」等、プロ野球選手として一流で無くても、素晴らしいスカウトになった先輩達は少なくない。大森氏が彼等の仲間入りを出来るかどうかは、彼自身の更なる努力に掛っている。
特に印象に残ったのは、トヨタ自動車の或る調査に触れた部分。
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では、野球頭のいい選手を見つけ、育てるにはどうしたらいいのか。野球センスに長けているということは、厳しい野球界で生き抜く力があるということだ。スカウトやコーチたちはその手がかりだけでもつかみたいと、日々、頭を悩ませている。そんな話をトヨタ自動車の幹部に話したら、「われわれ企業の永遠のテーマと重なりますねえ。」と言う。優秀な人材はどうしたら生まれるのか?学歴を重視して採用すればいいのか。採用試験の結果を重んじるべきなのか、それとも社員教育に力を注ぐべきなのか・・・。
トヨタの人事担当者が、入社した社員を追跡調査したことがある。「優秀な人材」と言っても難しいが、企業だから、「優秀」の定義を人事考課で上位の社員とした。追跡調査の結果、トヨタの社員の学歴や採用試験の結果と、入社後の人事考課の成績との相関関係は見いだすことができなかった。高学歴であったり、採用試験で上位を占めたりした新人がその後、できる社員になるとは限らない、というのである。
相関関係があったのは、優秀な係長に仕えた社員はその後、優秀な成績を残す傾向にあるということだったという。つまり、課長でも部長でもない、係長クラスの社員をどう育て、いかに配置するかが重要であり、係長こそが人材を生み出す、ということだ。
野球界で言えば、係長はチームマネージャーやコーチということになるが、トヨタの法則を球界やその他の企業にそのまま持ち込むだけではうまくいかないだろう。トヨタは「モノづくりは人づくり」という言葉を創業時から連綿と受け継ぎ、計画的な全社・部門別教育や育成異動を実施してきた。「社員を育てるということを大事にし、育てれば評価されるという土壌がなければ、トヨタ方式も生かされませんよ。」と、役員の一人は言う。
あらゆる組織のなかに、部下の手柄を横取りしたり、踏みつけたりする上司がいる。そうした者を排し、優秀な部下を育てればそれだけ評価があがり、給料も増えていくというシステムを整えたうえでなければ、トヨタ方式も役立たないというのだ。
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首脳陣や選手達と密にコミュニケーションを図っている様で、彼等の意外な“顔”が垣間見られて面白かった。その采配振りには不満が多かった原辰徳監督。今季は様々な面で改善が為された事も在り、その評価を高く改めさせて貰ったのは以前にも書いたが、どうしても「柔なイメージ」だけは拭い去れなかった。しかし実際の彼は、“良い意味で”かなりの強かさている様だ。そんな逸話が幾つか紹介されている。又、選手達にかける言葉が時宜に適っており、言われた選手達がグッと来る様な内容。ハッキリ言ってしまえばかなり“臭い言い回し”では在るのだが、それをサラッと言えてしまい、尚且つ選手の側もスッと受け容れられるというのは、原辰徳という男の人間性在っての事なのかも。
「詳細な戦略や長期的ヴィジョンを持ってのチーム作り」というのは、この本からも窺い知る事が出来る。迷走し捲っていた昔に戻らない事を、一人のジャイアンツ・ファンとして切に願う。
「人には適材適所というのが在るのだなあ。」と再認識させられたのは、スカウトを担当している大森剛氏に触れた部分。1980年代のプロ野球事情に精通した方なら御存知とは思うが、この時代のジャイアンツはドラフト会議で不可解とも思える指名を2度している。「他にもっと良い候補選手が居る。」と思われたのに、実際に指名されたのは共に慶應大学に在学する選手。当時のオーナー・正力亨氏が慶應大学のOBで、「可愛い後輩を何とか獲れ!」と“現場介入”したのではないかとも噂された。「引退後はフロント入りか、オーナーの鞄持ちでもさせるつもりなのだろう。」と、はた山ハッチ(やくみつる)氏が四コマ漫画でしばしばネタにしていたし。
プロ野球選手として大森氏は、成功したと言い難い成績だった。否、ハッキリ言えば二流選手の範疇だったと思う。そんな状態でユニフォームを脱いだ彼だったが、スカウトとして早い段階から坂本勇人選手に目を付け、渋る上層部に彼の獲得を粘り強く訴え続けたと言う。その結果、ジャイアンツは坂本選手を獲得する事に。スカウトとしての大森氏が居なかったならば、若き主砲の今は無かったかもしれない。「プロ野球選手では無かった木庭教氏。」や「プロ野球選手としては成功出来なかった根本陸夫氏。」等、プロ野球選手として一流で無くても、素晴らしいスカウトになった先輩達は少なくない。大森氏が彼等の仲間入りを出来るかどうかは、彼自身の更なる努力に掛っている。
特に印象に残ったのは、トヨタ自動車の或る調査に触れた部分。
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では、野球頭のいい選手を見つけ、育てるにはどうしたらいいのか。野球センスに長けているということは、厳しい野球界で生き抜く力があるということだ。スカウトやコーチたちはその手がかりだけでもつかみたいと、日々、頭を悩ませている。そんな話をトヨタ自動車の幹部に話したら、「われわれ企業の永遠のテーマと重なりますねえ。」と言う。優秀な人材はどうしたら生まれるのか?学歴を重視して採用すればいいのか。採用試験の結果を重んじるべきなのか、それとも社員教育に力を注ぐべきなのか・・・。
トヨタの人事担当者が、入社した社員を追跡調査したことがある。「優秀な人材」と言っても難しいが、企業だから、「優秀」の定義を人事考課で上位の社員とした。追跡調査の結果、トヨタの社員の学歴や採用試験の結果と、入社後の人事考課の成績との相関関係は見いだすことができなかった。高学歴であったり、採用試験で上位を占めたりした新人がその後、できる社員になるとは限らない、というのである。
相関関係があったのは、優秀な係長に仕えた社員はその後、優秀な成績を残す傾向にあるということだったという。つまり、課長でも部長でもない、係長クラスの社員をどう育て、いかに配置するかが重要であり、係長こそが人材を生み出す、ということだ。
野球界で言えば、係長はチームマネージャーやコーチということになるが、トヨタの法則を球界やその他の企業にそのまま持ち込むだけではうまくいかないだろう。トヨタは「モノづくりは人づくり」という言葉を創業時から連綿と受け継ぎ、計画的な全社・部門別教育や育成異動を実施してきた。「社員を育てるということを大事にし、育てれば評価されるという土壌がなければ、トヨタ方式も生かされませんよ。」と、役員の一人は言う。
あらゆる組織のなかに、部下の手柄を横取りしたり、踏みつけたりする上司がいる。そうした者を排し、優秀な部下を育てればそれだけ評価があがり、給料も増えていくというシステムを整えたうえでなければ、トヨタ方式も役立たないというのだ。
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単純だがきつい仕事や汚い仕事は下請け孫受けに回し、工賃単価を切り詰める。仕事が減れば真っ先にそこからカットし、本丸への影響を極力回避する。
創業者に「経営の神様」を頂く某有名電器企業の、ある事業部門の共栄会社に勤めていた事がありますが、共に栄えるとは名ばかりで、現状は上記のような下請けです。親企業には立派な労働組合がありますが、私の勤めた下請けには組合はないし、組合結成を手助けしようなんて動きもさらさら無い。労使とも、下請けには厳しいもんでした。
エリート集団にとって、生かさず殺さず便利に使える下請けがあってこそ、「真っ当な事を公言し得る」と、その時身にしみて感じました。
かつては、常勝巨人があってこそのプロ野球人気で、巨人が弱くては面白くない、と言われたものです。年俸も巨人とその他では歴然と差があったし、知名度・人気度から、引退後の再就職口でも差がついたものです。
だからプロを目指すものは、よほどの反骨心の持ち主でもない限り、江川君のように巨人軍に憧れるのが自然のなりゆき。
いっそのこと巨人リーグを作り、巨人本家と、元祖巨人、関西巨人、名古屋巨人・・・でプロ野球をいっそう盛り上げてくれ、と皮肉って思ったこともありますね。
そのブランドにもやや翳りが出て、今は「大リーグ」にとって変わられた気がしますが。
いずれにしても底辺を大事にしないシステムは、いずれそのシステム自体が大事にされない時代がやってくる・・・と信じたいのですが・・・。
カリスマ性を有した人物がトップに座った事で、目を見張る様な経営状態改善を見せた企業が在りました。もう暫く前になってしまうのですが、其処とのビジネス担当をする事になり「相当素晴らしいノウハウが在るのだろうな。」と興味津々で臨んだのですが・・・。
参考すべきノウハウが無い訳では無かったけれど、その企業の経営状態改善が大幅に為された最大要因が、煎じ詰めれば「下請け&孫請け虐め」に在るのを知るのに然して時間が掛からなかった。ビジネスって「相手に泣いて貰う事も在れば、逆に自分が無く事も在る。」というのが普通だと思うのですが、其処の姿勢は「終始一貫、自分達が儲かれば良い。」という物で、下請け&孫請けは常に泣かされていて、「こりゃあ酷い。」と感じたもの。ですから、近年になってこの企業の状態が悪くなったを知った時も、「当然だろうなあ。」としか思わなかった。
真っ当に働いている人間が、真っ当な生き方を出来ない社会って、本当におかしな物だと思います。
そう言えば、ナベツネは大人しいですね。彼が何か言う度に多くのジャイアンツ・ファンは肩身の狭い思いをして来ましたので、大人しくしてくれているのは喜ばしいです。
ジャイアンツが強くなったのも嬉しい事では在りますが、ジャイアンツ・ファンとして最も嬉しいのは生え抜き選手が頑張っての強さで在る事。
この本、買って読まないと・・・
係長の話、確かにその傾向があると思います。
最近の大企業のグループ企業の社内の中には「6人いる部に部長級の役職のものが4人、係長級が一人、一般職の女性が一人」なんていうところも多いです。
大抵この場合、係長級だけがヒドイ目に合って、心を病むなんて話もあるんですが、改善される気配もないんですよね・・
この本は以前から読みたいと思っていたのですが、その興味対象は「ジャイアンツという組織がどう変わって行っているのか?」という点。外部から色々分析している記事は結構目にしていたのですが、内部からの声というのは余り無かったので。
肝心な組織改革に付いても面白かったのですが、トヨタの話等その他の部分もなかなか興味深く、一気に読み終えてしまった次第です。
「中間管理職の悲哀」というのは色々言われている所ですが、このポジションがきちっとしていると組織が締まるというのも在るのでしょうね。