気分はガルパン、、ゆるキャン△

「パンツァー・リート」の次は「SHINY DAYS」や「ふゆびより」を聴いて元気を貰います

知恩院伽藍を抜けて

2022年10月12日 | 洛中洛外聖地巡礼記

 知恩院三門より男坂の階段を登って広い伽藍域に出ました。左に御影堂(寛永十六年(1639)建立、国重要文化財)、右奥に経蔵(元和七年(1621)建立、国重要文化財)が見えました。いずれもコロナ対策の為非公開となっていたため、外から建物を見るにとどめました。が、U氏は「ここに来られただけでもう充分だな。徳川家の京都永代菩提所かくなりや、と実感出来たのは成果だ」と上機嫌でした。

 

 続いて左脇の阿弥陀堂(明治四十三年(1910)再建)を見ました。この日は何かの仏事または催事があったものか、三門、経蔵、そしてこの阿弥陀堂に徳川家の三つ葉葵紋の幔幕がかけられてありました。U氏は気に入った様子で「徳川葵って、やっぱりカッコいいよなあ・・・」と何度もつぶやいていました。

 

 阿弥陀堂の脇を通って北へ抜けようとする途中で、U氏が「右京大夫よ、あれ五輪塔だよな」と法務棟の通廊わきにある立派な上図の五輪塔を指しました。見た途端に、あっ、これは古い遺品だ、と分かりました。水輪が逆さになっている気がしましたが、まぎれも無く鎌倉期の優品でした。笠の四隅の反りの形式からみて鎌倉後期かな、と見てとりましたが、U氏は私以上に興奮していて、「おい、これが知恩院にあるという、徳川四天王の一人、酒井忠次の墓塔なんだろうか」と聞いてきました。

「え、酒井忠次の墓がここにあるんかね・・・」
「そう書いてあったぞ、確か千姫の墓もここにあるってさ」
「ふーん、初めて聞いたな・・・。でもこの五輪塔はもっと古い鎌倉期のものやから、酒井忠次の墓とは違うと思う」
「あれっ、違うのか・・・・」
 そこでU氏はスマホで検索して調べていましたが、やがて顔を上げて「うん、違ったよ。忠次の墓はこの裏手の墓地にあるらしい」と言いました。
「でさ、こっちのは、知恩院が徳川家によって慶長年間(1596~1614)に拡張整備された際、ここにあった速成就院という寺の遺物らしい」
「速成就院?・・・どこかで聞いた名だな・・・、あっ、五条河原町の白毫寺のことか」
「うん、太子堂白毫寺って書いてあるよ・・・」

 差し出されたスマホ画面を見て、やっぱり河原院の白毫寺か、あの寺は知恩院のここが旧地だったのか、と理解しました。由緒は不明ですが、聖徳太子を祀りますので、古代からの歴史があったはずですが、現存する最も古い遺品はこの五輪塔であることになります。京都の鎌倉期の五輪塔としては優れた作域を示しており、白毫寺では忍性の墓と伝えていたそうですが、それも鎌倉後期の年代観とは矛盾しないのが興味深いです。

 

 五輪塔を見物した後、北へ進んで右手に集会堂(寛永十二年(1635)建立、国重要文化財)を見ました。これも非公開でしたが、外観の立派さを見て取るだけで充分でした。

 

 そのまま北へ進んで、小ぢんまりとした北門をくぐりました。土塀の外に出て西側の視界が開け、市街地の広がりが望まれました。伽藍域が高所にあることが改めて実感出来ました。

 

 北門からは、寺の裏参道の石段が曲がりくねりながら下へ続いていました。その石段にそって石垣が高さを増していき、これも一種の防御施設として機能しそうな雰囲気をみせていました。城郭の構えとあんまり変わらんな、とU氏が言いましたが、同感でした。

 

 北門を振り返りました。横の白壁の土塀は寺務所のそれですが、城郭の土塀のような雰囲気がありました。この感じ、なんかええなあ、と話したら、U氏も頷いていました。

 

 少し降りると、失われた土塀の石垣も見えてきて、本来は北門そのものが外から見えなかったのだろう、と思わせられました。石段の通路をクランクさせる点も、斜めに積まれる石垣の塁線が角のところで突きだして空間を意図的に狭めている点も、有事の際の防御線としての役割を持たせる目的によるものだろう、と思いました。U氏もそのことが分かるようで、「城郭の搦手口の構えだな」と興奮していました。

 

 裏参道を下まで降りてゆくと、伽藍域の外郭の石垣が高く積まれているのが見えました。上図は裏参道の下まで行ってから振り返ったところですが、奥に高い石垣が見えます。確かに徳川家は知恩院を城塞化しているわけです。いわゆる寺院城郭の典型例でしょう。

 

こうしてみると、城郭への入り口のような雰囲気でありました。石畳道、階段、高い石垣とくれば、土塀や櫓が次に現れてきそうで、ここが知恩院という浄土宗の寺院の境内地であることを忘れそうになりました。  (続く)

 

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