防災ブログ Let's Design with Nature

北風より太陽 ソフトなブログを目指します。

歴史と現場に学ぶ - 建築に関わる人はホントに理科系か? -

2009年11月04日 | 防災・環境のコンセプト

最近防災科学技術研究所の家屋の耐震実験結果が注目を集めています。ケンプラッツの記事では、実験映像の動画とともに紹介されています。

長期優良木造3階立てが「想定通り」倒壊
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20091030/536517/

これをみると、耐震性能2に該当する家屋が「倒壊」に至っています。いろんなコメントを読んでいると、建物の剛性にこだわりすぎたとか、伝統的な木造建築物の耐震性をもっと見直すべきだという声が多いようです。そのなかで、以下のブログが紹介されていました。

建築をめぐる話・・・・・つくることの原点を考える   下山眞司
http://blog.goo.ne.jp/gooogami

興味深い記事としては、

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日本の建物づくりを支えてきた技術-12 古代の巨大建築と地震
http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/792cba3b7d2c718ef5671822c66625dd
古代の工法の「遊び」の多い「継手・仕口」が、地震の建物に与える影響を逓減させる効果があったのかもしれません。つまり、組物の「斗」「肘木」「斗」・・・と組み合わせてゆく各接点での「遊び」が、力を伝えるときに、伝える大きさ・量を減らしてしまう、のはないでしょうか。「ガタ」の効用です。

建築にかかわる人は、ほんとに《理科系》なのか
http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/dce40811dcf66a31f907506808f66b18
『理』とは「すじみち」のこと、「ものごとをすじみちを通して考えること」が「理科」であり「科学」のはずだ。それは決して、数学や物理の問題が解ける、計算がうまくできる、ということではない。単に計算ができても、それは「理科」「科学」を習得できていることではない。
 残念ながら、最近のいわゆる「理科系の人」は、計算はできても「理詰めで考える」のが不得手のようだ。「木造住宅耐震診断士」という「資格」がある。先日、その資格を得た幾人かと話をする機会があった。当然「木造」を理解しているものと思った。しかし違った。理解しているのは、木造建築にかかわる法律だった。「木造に関する法律の理解≠木造の理解」なのは自明ではないか。《法律の規定を充たせば耐震建物になる》と、ほんとに思っているのだろうか。恐ろしい話だ。
 私には、「理科系の人」ほど、理科系ではないように見える。
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私は砂防関係(広義で)に関わっていますが、同じようなことを感じることがあります。土石流は直進性がある、流線にそって、、大体30度くらいで氾濫する、、などどいった「マニュアルに書かれているとおりに設定したパソコンのなかの現象」を信じている人が増えてきています。実際に災害として報道される規模の土石流は、段派状に何度も繰り返し(その意味では山津波の方が的確な表現です)発生しますし、先頭巨礫や大きな流木の影響で、まずどちらに行くかわからないし、扇状地という言葉があるように30°に限定されることはない。地形を判読して過去の氾濫範囲を歩いて程度推測するとか、瀬と淵の分布の仕方からどのあたりからの崩壊・堆積土砂が被害をもたらすのか、現場を丹念に調べ歩くことしかありません。

基準書に載っていないことを理由に”想定外”として免責することが簡単ですが、それではかなり行政書士的、文系的な仕事といえるでしょう(それらの仕事の意義がどうということではなく、それを自然科学と思っていることが問題)、もちろん道理にはかないません。