SMEI / ドラベ症候群 / 重症乳児ミオクロニーてんかん について

SMEIの診断を受けた長男に関連して調べたことたち

ミダゾラムの経鼻投与の有用性とその適応承認の状況について

2013年12月24日 | 治療・予防など

ミダゾラムの経鼻投与について(Therapeutic Intranasal Drug Delivery)

ジアゼパムの経肛門投与との比較
ジアゼパムの経肛門投与とミダゾラムの経鼻投与または経口腔粘膜投与を比較している論文発表は、RCTが3つ在宅での観察研究が1つある。

  •  長期療養学校におけるてんかんをもつ学生における研究(Lancet, 1999)
    ミダゾラムの経口腔粘膜投与による効果は75%(30/40)
    ジアゼパムの経肛門投与 59%(23/39)
    統計学的な有意差は見られなかったが、アクセスが容易な経口腔粘膜投与による治療の良好な成績により学校での治療方法に変更が見られた。
     
  •  同様に経口腔粘膜投与の優位性を結論とした論文も公表された(J Pediatr, 1999)
     
  • ミダゾラムの経鼻投与とジアゼパムの経肛門投与を比較した研究(J Child Neurol, 2002)
    ミダゾラムの経鼻投与による効果は87%(20/23)
    ジアゼパムの経肛門投与 60%(13/22)
    統計学的有意差あり(P<0.05)

 

いずれの研究結果でも臨床的に重大な有害事象は確認されていない

  • 在宅での観察研究(Pediatr Emerg Care, 2007)
    救急治療の方法をジアゼパムの経肛門投与からミダゾラムの経鼻投与に変えて、変更前後の効果とコンプライアンスを比較したところ
    救急外来受診前のけいれんのコントロールは78%から100%に変化
    緊急挿管による呼吸管理の必要性は33%から0%に変化
    入院の必要性は89%から40%に変化
    平均けいれん時間は30分から11分に変化
    ジアゼパムの経肛門投与時では、けいれん再発のオッズ比が8.4倍、救急外来での挿管のオッズ比が12.2倍、入院率のオッズ比が29.3倍、ICU入室率のオッズ比が53.3倍であった

⇒ ジアゼパムの経肛門投与と比較して、ミダゾラムの経鼻投与または経口腔粘膜投与はより簡易で安全性もあるため優れていると考えられる


ベンゾジアゼピンの経静脈投与との比較
ベンゾジアゼピンの経静脈投与とミダゾラムの経鼻投与または経口腔粘膜投与を比較している論文発表は、RCTが3つある。

  • 10分以上けいれんが持続する場合のジアゼパムの経静脈投与(0.3mg/kg)とミダゾラムの経鼻投与(0.2mg/kg)の比較(BMJ, 2000)
    止痙率はミダゾラムの経鼻投与88%(23/26)、ジアゼパムの経静脈投与92%(24/26)で統計学的な有意差なし
    受診から止痙までの経過時間はミダゾラムの経鼻投与6.1分、ジアゼパムの経静脈投与8.0分であり
    けいれんを止める効果は同等であるが、血管を確保する手間が省ける分、ミダゾラムの経鼻投与の方が早く効果が得られる
  • 同様に救急外来を受診した2-15歳、70名の患者における、ジアゼパムの経静脈投与(0.2mg/kg)とミダゾラムの経鼻投与(0.2mg/kg)の比較(Epilepsy Behav, 2004)においても、両者は同等に効果があり、有害事象を認めなかった
     
  • 長時間のけいれんに対する60人の小児におけるジアゼパムの経静脈投与(0.3mg/kg)とミダゾラムの経鼻投与(0.2mg/kg)の比較(Iran J Pediatr, 2012)
    薬剤の使用開始からけいれんが止まるまでの時間は、ジアゼパムの経静脈投与で2.16分、ミダゾラムの経鼻投与で3.16分
    一方で血管確保に時間を要するため、ジアゼパムの経静脈投与では有意にがかかった時間が長かった(6.42分)
     
  • 同様のインドにおける小児におけるジアゼパムの経静脈投与(0.3mg/kg)とミダゾラムの経鼻投与(0.2mg/kg)の比較(J Neurol. 2013)
    同様にけいれんを止めるまでの全体の経過時間はジアゼパムの頚静脈投与で17.2分、ミダゾラムの経鼻投与で6.7分
    一回目の薬剤使用での効果はジアゼパムの経静脈投与66%、ミダゾラムの経鼻投与65%
    中枢神経系感染の割合が26%と高いことも影響している可能性
     
  •  ERやNICUにおける100名の小児におけるジアゼパムの経静脈投与(0.3mg/kg)とミダゾラムの経鼻投与(0.2mg/kg)の比較(RRJMH, 2013)
    他の報告と同様、両者の効果は同等であり、1回の薬剤使用による効果
    は94%、僅かに経鼻投与の方が止痙までの時間が早かった
    この研究には7名の新生児と26名の乳児が含まれている 
上記の全ての研究でミダゾラムの経鼻投与は効果が早く、安全かつ簡便であることを示している
また、メディカルセンターのみではなく、一般のクリニック、在宅での治療も可能と考えられる

在宅でのミダゾラムの使用報告
  • 在宅で家族によるミダゾラムの経鼻投与の報告(Arch Dis Child, 2004)
    83%(333/40)で効果あり、83%(20/24)がジアゼパムの経肛門的投与よりも望ましいとした 
     
  • 22名の患者における54回の痙攣治療の評価(J Paediatr Child Health, 2004)
    89%に効果があり、呼吸器の問題も認めず、90%の家族が経鼻投与に困難を感じなかった
    15名の過去にジアゼパムの経肛門投与を行っていた家族のうち13名が経鼻投与がより簡便であると答え、14名がより好ましいと答えた
     
  • 26名の患者における125回の痙攣治療の評価(Eur J Paediatr Neurol, 1999)
    98%で10分以内に効果があり、重篤な有害事象を認めなかった 
     
  • 思春期と成人の患者における長期療養施設での報告(Seizure, 2000)
    94%(79/84)で効果あり、効果のなかった5例中 3例では経口腔粘膜投与で効果が認められた
     
  • ジアゼパムの経肛門投与と比較した前向き無作為化比較試験の結果(Arch Pediatr Adolesc Med, 2010)
    ミダゾラムの経鼻投与群(50治療)はジアゼパムの経肛門投与群(42治療)と比較して、でわずかに止痙までの時間が早かった(3分 vs 4.3分)
    ミダゾラムの経鼻投与は簡便であり、全体の満足度が高かった。また安価であるため費用効果にも優れると考えられる 
  • レビュー(まとめ)(Acad Emerg Med, 2010)
    ミダゾラムは経鼻であっても経口腔粘膜であってもてんかんの治療に対してジアゼパムよりも優れている 
    ただし同時期に、21人の成人における124回の痙攣治療成績において、ミダゾラム10mgの経鼻投与とジアゼパム10mgの経肛門投与の効果、止痙までの時間に有意な差はないとする報告もある(Epilepsia, 2010)
     
  • 費用効果について言及したレビュー(J Pediatr Pharmacol Ther, 2013)
    ジアゼパムが数百ドルの費用に対して、ミダゾラムは20ドルであり、在宅での治療においてミダゾラムが考慮されるべき 


各国での承認適応について
(2013. 12)

世界的にもミダゾラムの痙攣重積に対する使用適応は一般的ではなく、国際学会でミダゾラムの経鼻投与の有用性について議論が行われている(第42回国際小児神経学会)

日本における状況
日本におけるドルミカムは静脈投与のみの承認、けいれんに対する使用適応もなし(添付文書
ただし、専門学会からはミダゾラムがけいれん重積に対する治療薬として推奨されている(日本神経学会 てんかん治療ガイドライン
そのため、日本小児神経学会から厚生労働省に要望書の提出あり(2012. 11. 1)

アルフレッサファーマ株式会社が小児てんかん重積状態に対する新規ミダゾラム製剤の国内開発を計画し、臨床試験を実施している 

参考
厚生労働省では医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬の要望を随時募集している(厚生労働省HP)
・要望の検討の結果、開発企業の募集又は開発要請を行った医薬品のリスト
・チオペンタールのけいれん重積に対する承認適用の要望(企業見解

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