胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

十二指腸、胃上皮化生、ブルンナー腺、高麗大学(2)

2010-01-26 | 小腸非腫瘍
 先ほどの続きです。ブルンナー腺から伸びてきた胃腺窩上皮型細胞からなる腺管はやがて十二指腸の最表層に達します。この結果できた構造を私は勝手にBrunner's gland/Foveolar duct unitと呼んでいます。これが十二指腸における胃上皮化生発生経路の一つです。
 十二指腸球部には胃上皮化生が多発するように、同部にできる胃癌には胃型のものが多く認められます。

【写真:Brunner's gland/Foveolar duct unit】
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十二指腸、胃上皮化生、ブルンナー腺、高麗大学(1)

2010-01-26 | 研究会、学会
 대한소화기내시경학회, 대한병리학회 소화기병리연구회(韓国消化器内視鏡医-病理医合同シンポジウム)がソウルの高麗大学であり、胃癌の話と十二指腸胃上皮化生の話をしました。
 H.pylori胃炎や高酸状態で十二指腸球部に胃上皮化生が多発します。1999年にHistopathology誌に胃上皮化生の組織発生にブルンナー腺の再生が関わることを報告しました。私の最も好きな仕事の一つですので、是非Histopathology 1999, 35, 38–43をご覧下さい。
【写真は十二指腸の潰瘍底で剥き出しになったブルンナー腺です。肉芽組織直下のブルンナー腺最表層にKi67陽性でMUC5ACを発現する胃腺窩上皮型細胞が生み出されています。私はこの部分をNeo-G zoneと言っています】
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壁深達度、TNM分類第7版、胃癌取扱い規約第14版、新旧比較

2010-01-19 | 胃癌全般
 TNM分類が色々と改訂されました。胃癌取扱い規約第14版にも反映されるようです。病理医としては今まで通り壁深達度を判定しますが、T分類も記載(入力)する場合には注意が必要です。以下、新旧比較させてみました。実際的には出版されたものを参照して下さい。

胃壁深達度【胃癌取扱い規約第13版, 1999年】
T1:MまたはSM
T2:MPまたはSS
T3:SE
T4:SI
TX:不明

壁深達度【胃癌取扱い規約第14版(予定)、TNM分類第7版, 2010年】
TX:不明
T0:癌がない
T1
  T1a:M
  T1b:SM
T2: MP
T3: SS
T4
  T4a: SE
  T4b: SI

*T1bは、その浸潤の深さにより2分類する。粘膜下組織への浸潤が粘膜筋板下端から0.5mm未満のものをT1b1、それ以深をT1b2とする。
**他臓器とは、肝、膵、横行結腸、脾、横隔膜、腹壁、副腎、腎、後腹膜腔を指す。漿膜浸潤が大網・小網に波及する場合はT4bとはしない。横行結腸間膜への浸潤は、間膜内の血管または間膜後面まで波及する場合にT4bにする。

【写真:のぞみ193号は2月10日まで限定的に500系運用になっています】
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Group分類、胃癌取扱い規約

2010-01-03 | 胃癌全般
 本年も胃生検の小部屋をご贔屓に、どうぞよろしくお願いいたします。近々、胃癌取扱い規約改定第14版が発刊されると思います。病理でもっとも着目されるであろう、新Group分類について触れてみたいと思います。2009-3-9にも同様の投稿をしています。実際的には今後発刊されるものをご覧下さい。
(新WHO分類も今年中に出るという噂です)

原則
 胃の内視鏡的生検材料を対象とし、ポリペクトミー材料、内視鏡的粘膜切除材料、内視鏡的粘膜下層剥離材料や外科切除材料は除外する。
 Group分類は上皮性のもののみに用い、非上皮性のものには用いない。
 このGroup分類は病変の診断(疾患)区分を明確にすることを目的とするものであるため、生検診断の際には診断名を記載し、それに各Group分類を併記することを原則とする。

新分類と臨床的対応
Group X:生検組織診断が出来ない不適材料
 上皮成分が採取されていない標本。採取されていても挫滅や熱凝固で組織診断ができない組織検体。
Group 1:正常組織および非腫瘍性病変
 正常組織、化生性粘膜、炎症性粘膜、過形成粘膜などが含まれる。びらんおよび潰瘍、過形成性ポリープなどに再生性・反応性異型が認められても、非腫瘍性と判断される組織は本群に含まれる。
Group 2:腫瘍性(腺腫または癌)か非腫瘍性か判断の困難な病変
 このGroupには次のような症例が含まれる。このGroupに含まれる診断をする場合は、臨床医に対しては判断の困難な理由を明らかにし、付記することが望ましい。
(1) 異型細胞は存在するが、組織量が少なく細胞異型からでは腫瘍性病変としての判断が困難な病変(臨床的な再検査を行い確定診断が必要)。
(2) 異型細胞が存在するが、びらんや炎症性変化が強く腫瘍か非腫瘍かの判断が困難な病変(臨床的に消炎後再生検を行なうか十分な経過観察が望まれる)。
(3) 異型細胞が存在するが、病理組織の挫滅や傷害が強く腫瘍か非腫瘍かの判断が困難な病変(臨床的な再検査を行い確定診断が必要)。
また、このGroupの診断をつける場合、病理側としては、まずは深切り切片の作製、細胞増殖能やp53蛋白免疫染色などの追加検討を行なう。さらに同一症例の再生検にて本Group診断が続く場合には、専門家への病理コンサルテーションを行うことをすすめる。
Group 3:腺腫
 腺腫と判断されるもの。この群の中には細胞異型および構造異型の点で幅のある病変が含まれるが、良性腫瘍と判断されるもの。
Group 4:腫瘍と判定された病変のうち、癌が疑われる病変
 腫瘍性病変と考えられるが腺腫か癌か鑑別ができない病変。
Group 5:癌
 癌の組織型を付記する。2種類以上の組織型が存在する場合、その組織型を優勢像から列記することが望まれる。

【写真は外科・病理 胃癌取扱い規約改定第9版が出た頃の石北本線常紋信号所です。クッシー少年作です。】
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