胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

早期胃癌研究会

2008-12-23 | 研究会、学会
 12月度の早期胃癌研究会が二重橋の近くでありました。写真は翌朝、東京駅の上からみた神田、秋葉原方面です。
(1) 直腸のIIa+IIc / LST-NG pseudodepressed typeです。レントゲンで硬化像がみられるようです。病理学的にはsproutingとdesmoplasiaの目立つ粘膜下層浸潤癌です。粘膜筋板のとり方で、浸潤距離が200-300μmか、1200μmになるか問題となりますが、筋板がこれだけ断裂・消失しておれば後者の方がよいだろうということです。
(2) (1)と同じような直腸病変ですが、中央部に白苔が乗っています。高分化主体のadenocarcinomaですが、広い範囲で筋板が追えなくなり、粘膜下層浸潤があります。辺縁に残った粘膜筋板から延長して仮想粘膜筋板からの浸潤距離は150μmですが、表層から測定すると1500μmになります。
(1)(2)とも表層部には固有層を伴う粘膜病変らしきところもあり、色々議論は尽きないのですが、これまで蓄積されたデータに基づいたガイドラインにしたがって、表層から浸潤距離を測定するのがよいかと拝察しました。粘膜下層浸潤を深く読まれた画像所見もそれを反映しているように思いました。
(3) 粘膜下腫瘍様の発育を示す胃未分化型癌です。胃角小弯が固く、コの字の変化、二重輪郭がみられ、台形状の厚ぼったい3型と読めるそうです。病理学的には粘膜層が印環細胞癌、粘膜下層以深がpor2というパターンで、局所的スキラスですが、(1)(2)の大腸がん症例と異なって広い範囲で粘膜筋板が保たれていました。原発巣が問題となり、原発部位を示唆する粘膜層内で印環細胞癌の層構造が保持された領域は狭く、粘膜下層に浸潤したがん細胞が粘膜内に逆噴射した領域の方が広いのではないかという推察がなされました。
(4) 胃体下部前壁にある粘膜下腫瘍で、症状の出現とともに病変が増大した症例です。異所性膵が膵炎を起こし、偽のう胞を形成したという、大変希少な症例でした。
(5) 食道バレット腺癌で、全周性にESDされた症例です。いつものように見事な症例提示でした。分化型腺癌ですが、主病変ではCD10が染まる小腸型のところと、胃優位型の領域がありました。5mmほどの副病変(胃型)が同時多発していましたが、病理医の間で良悪性の意見がわかれました。
 では次回お会いしましょう。

 追伸:運営幹事会で、来年度のミニレクチャーは「病理で・・・」という空気になり、病理の講演が数回予定されています。病理の話になるとトイレや喫煙に立つ方も多いという意見もありましたが、臨床診断に直接役立つ内容を企画中、とのことです。
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食道色素研究会

2008-12-07 | 研究会、学会
 第60回食道色素研究会が日本橋近くでありました。写真は師走の東京です。
「EMR/ESD後、リンパ節あるいは他臓器再発を来たした表在型食道扁平上皮癌」という主題で、示唆に富む演題が14題あり、大変勉強になりました。
 pT1a(MM), pT1b(sm1)癌で転移を予測するのは大変困難ですが、病理医として必ず着目し、記述しておく点は以下のようなものでしょうか。

ly, v因子は? m3, sm1がん症例にはD2-40やVB-HE等が必須!
浸潤様式は? INFb or INFc、腫瘍下縁の不整、down growth, 小胞巣状浸潤
分化度だけではなく、細胞異型も
内分泌細胞癌・小細胞癌への分化の有無
上皮下進展:非腫瘍部の上皮下に浸潤する腫瘍巣の有無と程度
mm浸潤面の広さ
癌の厚み
血管増生、血管走行異常
導管内進展か浸潤か? 特染してみよう(CK7, CK14, α-SMA, 高分子ケラチン、D2-40等)。導管内(食道腺腺房内)に取り残しはないか?

追記:食道腺導管の筋上皮細胞~基底細胞がα-SMA~CK14に染まるという性質を利用して、食道癌が導管内に進展した場合、縁にそのような細胞が残存しているか否かを見ることが導管内進展の診断に役立つ、ということだと思います。

(病型としては、今回の検討では0-IIc要素のあるものが多く、特に陥凹部に結節状の隆起があるとか、IIcの辺縁が隆起しているものが危ないことが再認識された、と言われていました)

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「似て非なるもの」(3), Ninja's polyp

2008-12-02 | 胃分化型腺癌
 さきほどのルーペ像の一部を拡大しました。写真上部が胃型腫瘍、下部が過形成の腺窩上皮で、明瞭なフロントがあります。胃型で高分化型かつ低異型度のadenocarcinomaです。腺窩上皮と似ています。英米ではgastric-type dysplasiaでしょうか?本例では腫瘍のところだけp53蛋白の過剰発現がみられました。
 染めるまでもなく、MUC5ACが主体の陽性像を示すはずですが、このような「胃型」腫瘍で、MUC2がパラパラと染まってくることが多いです(胃優位型)。非腫瘍胃粘膜に腸上皮化生が起きるのと同様、腫瘍の部分も腸の方向へ多少は向かうようです。Prof.Ninjaの時代は電顕とPAS染色で胃型と記載されました。十数年前に私が数を増やして焼きなおし論文を書いたときにはGOS、conA(III)とHID-ABに染まるので、胃型やけれども腸方向への分化もあろうと屁理屈をこねました。
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「似て非なるもの」(2) 過形成性ポリープの癌化

2008-12-02 | 胃分化型腺癌
 伊賀流一門の恩師が1985年のJ. Clinical Pathologyに腺窩上皮型過形成性ポリープ内には腸上皮化生があまり見られず、そこに発生する腫瘍は胃型のものが多いと記載し、gastric-type dysplasiaとかgastric-type adenocarcinomaが注目されるきっかけになりました。今もよく引用されています。久しぶりにNinja's polypに遭遇しました。ルーペ像です。どうぞクリックして下さい。
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