胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

好酸球性胃腸炎 Eosinophilic Gastroenteritis EGE

2023-03-18 | 消化管全般
・見出し写真は好酸球性胃炎です(写真クリック!)
・好酸球性腸炎に関する質問があり、ネット上で「幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン 2020 年 09 月 14 日」のPDFが拾えたので読んでみました。
・また、先日、好酸球性消化管疾患を多くやってはる臨床の先生から、「病理診断の20個以上」という所見が独り歩きして・・・というお話を浜名湖で聞きました。

現在日本の好酸性胃腸炎(食道ではなくて)の診断基準では(このガイドラインの15頁)
*「好酸球主体の・・・」*「20/HPF以上・・・」*「他の・・・を除外」
となっています。20個/HPFの妥当性はさておき、病理では「主体」が重要、臨床では「除外」が重要、と思います。食道重層扁平上皮内の判定と異なり、胃粘膜固有層や小腸・大腸の粘膜固有層では、好酸球は生理的にもあるし、他の胃腸炎でも好酸球数はすぐに20個を超えてしまいます

このガイドラインにも「食道以外では生理的好酸球が存在し注意を要する。消化管好酸球数につ いては一定の傾向はあるが (文献4個)、国際的に確立された基準値はない。一般に終末回腸から右側結腸では健常者でも 20/HPF 以上の高値をとることがある。また上皮内、胃腺や陰窩、 筋層への好酸球浸潤、好酸球性膿瘍、シャルコー・ライデン結晶などが参考所見として有用である。また内視鏡所見が肉眼的に正常であっても、正確な診断には数箇所の生検が必要で ある。」という大事な記述もありました。

同盟国の文献(PMID: 31008735)では
As there are no consensus diagnostic guidelines for non-esophageal EGIDs, when pathology reports enumerating eosinophil counts were available, these reports were reviewed to confirm if the number of eosinophils reached a threshold level based upon the area of biopsy: stomach ≧30 eosinophils/high-powered field (hpf); small intestine ≧50 eosinophils/hpf; or colon ≧60 eosinophils/hpf.と、「胃では30個以上、小腸では50個以上、大腸では60個以上」とする記述もありました。



滋賀の狸が静岡出張中(写真クリック:神尾駅)。私も縁あってちょくちょく静岡に行きます。
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papillary vs. villous

2013-04-15 | 消化管全般
 MAXときに乗って拡大内視鏡研究会というマニアのイベントに行ってきました。
 写真(クリック)左は胃のpapillary adenocarcinoma、右は大腸のvillous adenomaです。
 病理組織学的にpapillaryという用語は米国の病理レジデント向けの教科書をみると、finger-like projections with fibrovascular coreと説明されています。Villousの説明を読むと、in essence same as papillaryとなっていますが、腸上皮の形態を述べる時はこっち、と書いてあります。Papillaとvilliの語源はともかく、papillaryとvillousは病理組織学ではほぼ同義語になっているようです。
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Granular cell tumor, 顆粒細胞腫(2)

2009-08-16 | 消化管全般
先ほどの標本のS100蛋白染色です。きれいに染まっています。
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Granular cell tumor, 顆粒細胞腫(1)

2009-08-16 | 消化管全般
 顆粒細胞腫の診断がついた大腸生検です。食道や乳房など、顆粒細胞腫は色々なところに発生し、毎年のように病理専門医試験にも出題されているようです。胃や腸にもまれに発生し、大腸では右側結腸に多いと書かれています。粘膜下層主体に増生し、大臼歯様の形態を示すこともあります。粘膜固有層に浸潤すると粘膜上皮構造が萎縮してくるのもひとつの特徴です。
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未分化癌、Vimentin陽性

2009-06-23 | 消化管全般
 さきほどの未分化癌のVimentin染色です。「Vimentin陽性未分化癌」と言ったりもします。これは胃癌ですが、食道や腸原発もごく稀に見られます。実際は色々染色しまくってあらゆる可能性を否定することが必要です。
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未分化癌(胃)

2009-06-23 | 消化管全般
 胃の「未分化癌」(とした症例の写真)です。"undifferentiated carcinoma"です。よく似た言葉の「未分化型癌(undifferentiated-type carcinoma)」とはちょっと異なります。HE標本をくまなく探しても、明らかな上皮性分化がよくわかりません。個々の細胞が形質細胞に似ていたり、いわゆるRhabdoid featureを示したりします。実際の標本では形質細胞腫を含むリンパ腫、GISTを含む肉腫など色々鑑別にあがり、議論になります。
 たいへん難しい診断です。
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印環細胞様LEL, 胃MALTリンパ腫

2009-06-23 | 消化管全般
 前回の投稿が印環細胞癌であったので、それと直接関係はありませんが、胃のMALTリンパ腫でみられることのあるsignet ring cell型のLELを呈示します。
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偽手つなぎ(2)

2008-11-26 | 消化管全般
 同じ日に、今度は胃生検で「偽手つなぎ」を見つけました。
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偽手つなぎ(1)

2008-11-26 | 消化管全般
 十二指腸生検ですが、如何でしょう?という相談が妹弟子からありました。一見、手つなぎ風ですが、標本の薄切で粘膜がうまく斜切りになったのでは?と考えましたので、偽手つなぎと呼ぶことにしました。鋭角に分岐しているように見えますが、腺管同志の距離は均一で、固有層(間質)に変化もみられません。
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平滑筋が絡みつく (線維筋症、fibromusculosis)

2008-09-10 | 消化管全般
 粘膜筋板から平滑筋束が固有層内に伸びてくることがあります。英語の教科書では
「fibers of the muscularis mucosa extend high into the lamina propria」
などと説明されている現象です。
 ・線維筋症
 ・fibromusculosis
 ・fibromuscular obliteration
等という用語を病理医がしばしば用います。例えば、MPSと言えばfibromuscular obliterationと、○○のひとつ覚えになっています。しかし、平滑筋束が粘膜筋板から固有層に伸びてきて上皮に絡みつく所見は、程度の差はありますが、MPSだけではなく色々な病変でみることができます。例えば
(1) Chemical/reactive gastritis (欧米的にはChemical/reactive gastropathy):逆流胆汁やNSAIDsなどによる胃炎です。
(2) 憩室の周囲にみられるポリープ様組織:redundant tag, redundant mucosal fold, polypod tag, nipple-like tagなど呼ばれています。
(3) Inflammatory myoglandular polyp(東北の大親分のポリープです)
(4) MPS
(5) Peutz-Jeghers(型)ポリープ
などです。
 (5)は過誤腫ですからちょっと話が別になりますが、(1)-(4)には共通性があります。いずれも物理的・化学的な慢性刺激がその発生に関与している可能性があるのです。(2)や(4)では機械的牽引力という言葉でよく説明されます。(3)のIMGPについて東北の大親分は「微小な過形成病変に慢性刺激が関与する・・・」と説明されています。他にも脂肪腫の先っぽの粘膜に似たような所見がみられることもあります。
 写真は逆流胆汁が目立ち、発赤の強い前庭部粘膜からの生検組織、Chemical/Reactive gastritisです。腺窩上皮過形成と平滑筋の増生が目立ちますが、炎症細胞浸潤はごく軽微で、H. pyloriもいません。


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