胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

潰瘍瘢痕Ul-IIs: 0-IIc, Ul(+)

2010-10-11 | 胃癌全般
 胃のESD適応などで潰瘍瘢痕の有無が問題になりますが、実際のところ潰瘍瘢痕の有無はどのように判定されるのか教科書には載っていません。当院では癌細胞の広がりだけでなく、伝統的に潰瘍や潰瘍瘢痕の領域もマッピングしています。一例を紹介したいと思います。
 見出し写真(クリック)は0-IIc病変で癌組織の辺縁にUl-IIs(+)と診断した症例です。写真の中央部3/4~2/3くらいの領域では粘膜筋板の構造が読めません。癌は写真の左上の粘膜内に少量みられるだけです。
 潰瘍瘢痕の領域は「粘膜筋板の断裂」を最も重視してマッピングしています。消化性潰瘍によって断裂した粘膜筋板のところは膠原線維で置き換えられてきます。平滑筋も再生しますが、元通りのきれいな平行線にはなりません。この潰瘍瘢痕の左側では筋板の断裂部が比較的わかりやすいですが、右側はやや難しいです。
 粘膜筋板の断裂に伴って粘膜下層に線維化が広がりますが、逆に粘膜下層の線維化=潰瘍瘢痕領域と読んでしまうと、広く読みすぎてしまい、肉眼像とは合いません。
 また、がっつりした上手な生検部位でも粘膜筋板が断裂しますが、生検瘢痕を消化性潰瘍瘢痕と読んではいけません。
 
 私はきれいな粘膜筋板のことを京都・草津間複々線と呼んでいます。
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特殊型胃癌(2) リンパ球浸潤癌

2010-10-10 | 胃癌全般
先ほどの症例の粘膜内病変部です。EBER-1 ISHですが、陰性領域があります。意味深です。
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特殊型胃癌(1) リンパ球浸潤癌

2010-10-10 | 胃癌全般
 胃癌取扱い規約では高頻度に出現する腺癌を一般型とし、その他を特殊型としてきました。1999年発刊の第13版では腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、カルチノイド腫瘍とその他の癌が記載され、その他の癌として小細胞癌、未分化癌、絨毛癌とα-fetoprotein産生胃癌があげられていました。第14版では、特殊型はカルチノイド腫瘍、内分泌細胞癌、リンパ球浸潤癌、肝様腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、未分化癌となっています。その他の癌としては絨毛癌、癌肉腫、浸潤性微小乳頭癌、胎児消化管上皮類似癌と卵黄嚢腫瘍類似癌をあげられています。発生頻度や用語などを再考し、Epstein-Barrウイルスと関連するリンパ球浸潤癌を低分化腺癌充実型から特殊型のひとつとして独立させた結果であると思われます。また取扱い規約では「一般型の胃癌の一部に特殊型の組織像がみられるものは、その旨を診断に付記する」ことになっています。内分泌細胞癌、肝様腺癌を含むα-fetoprotein産生胃癌、扁平上皮癌や浸潤性微小乳頭癌では分化型癌成分がみられることが一般的であり、分化型癌がそれらの前駆病変と考えられています。
 某誌の来月号は特殊型胃癌の特集号です。

【写真】リンパ球浸潤癌の1例
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