胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

早期胃癌研究会、画像診断教育レクチャー

2009-10-20 | 研究会、学会
臨床医が知っておくべき病理「上部消化管の病理診断と特殊染色」要点
1) 治療、追加治療に直結(例:デスミン、VB-HE、D2-40)
食道癌ESD標本で、「M1-M2 or M3-SM1」など、胃癌でも治療適応性が「微妙」な症例は粘膜筋板を同定するためのデスミン、脈管侵襲をみるためのVB-HE(またはEVG)、D2-40を是非やりましょう。HE染色標本のみでly, vの程度判定(0,1,2,3)には残念ながら再現性はありません(大腸癌研究会プロジェクト研究より)。胃癌の標本で潰瘍瘢痕の合併の有無を見るときもデスミンが役立つことがあります【写真】。
2) 良悪性鑑別の補助(例:Ki67, p53)
Ki67(MIB-1)染色では増殖細胞の局在性の有無に着目します。カルチノイドやGISTではMIB-1 indexが重要です。「Ki-67は陰性(または陽性)であった」という報告を聞くことがありますが、意味不明の文章になります。P53蛋白の過剰発現を用いた癌の補助診断にはHE染色をみるのと同様、「領域性」をみることが重要です。食道の異型上皮ではKi67の染色領域をp53陽性領域が凌ぐと癌診断を支持します。但し、p53蛋白の過剰発現がない癌も多くありますし、癌でも増殖細胞が局在することがあります。
3) 細胞の分化をみる(例:サイトケラチン、粘液形質など)
特殊染色で細胞の分化をみることによって腫瘍の由来を推定します。食道など扁平上皮癌vs.腺癌が問題となるとき扁平上皮~基底細胞のマーカーとしてP63, CK5/6, CK14, 34βE12など、腺癌のマーカーとしてCK8, CK18, CK7などのサイトケラチン染色を組み合わせます。
胃癌やバレット腺癌で形質発現をみることがあります。MUC2,MUC5AC, MUC6などのムチンコア蛋白、human gastric mucin, HIK1083などの糖蛋白(ムチン)、CD10、proton pumpなどの構成蛋白、pepsinogen Iなどの酵素、さらに腸分化の転写因子であるCDX-2をターゲットとした染色の合わせ技をやっているわけです。これらの意義については「早期胃癌2009」をご覧下さい。また病理と臨床臨時増刊号2007「診断に役立つ免疫組織化学」の胃のところもご参照下さい。
4) 運営委員(病理)からのお願い・・・・。

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平滑筋腫と上皮内腫瘍:leiomyoma and intraepithelial neoplasia

2009-10-14 | 食道腫瘍
 先ほどの拡大です。何と、平滑筋腫直上の扁平上皮に上皮内腫瘍が生じています。
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食道平滑筋腫、leiomyoma、leiomyomatosis

2009-10-14 | 食道腫瘍
食道の非上皮性腫瘍で最も多いのは、狭義のGISTではなく、平滑筋腫であると記載されています。比較的若い人にみられ、特に下部食道に好発します。芋虫状に連なって、あるいは多発して、leiomyomatosisという病態になりEGJをまたぐ症例も稀ですがよく知られています。
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Bottom up growth, IBD-related

2009-10-08 | 大腸腫瘍
 さきほどのKi-67(MIB-1)染色です。一部では表層近くまで陽性細胞が認められますが、増殖帯に相当する部分は腫瘍腺管の基本的に中下部に局在します。Bottom-upな生長です。散発性のtubular adenomaやtubulo-villous adenomaは通常Top-down growthです。但し、散発性のものでも鋸歯状病変は基本的にボトムアップです。
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腺腫?DALM? 低異型度癌,?adenoma-like dysplasia? in UC

2009-10-08 | 大腸腫瘍
 全大腸炎型のUCにみられた扁平隆起性の上皮内腫瘍性病変です。IBDに関連して発生した腫瘍か、sporadicな腫瘍か鑑別が重要になるでしょう。
 IBD-relatedの場合、DALMとかadenoma-like dysplasiaとか変なあだ名がついています。本邦では消化管の上皮内腫瘍にdysplasiaという用語を用いるのはあまり好まれていません。
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