胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

多発性白色扁平隆起 multiple white and flat elevated lesions

2016-10-30 | 胃腫瘍様病変
 胃病理学の総論的な用語に腺窩上皮過形成 foveolar hyperplasiaというのがあります.米軍の病理教科書だと focal foveolar hyperplasia (foveolar hyperplasia)という小見出しになっています.腺頸部細胞増殖帯より表層部の腺窩上皮(表層粘液細胞)が過形成性に増殖し,しばしば蛇行します.個々の細胞の粘液産生も豊富になることが多いですが,吻合部胃炎などでは逆に粘液産生が低下します.
 原因は何でもありで,H. pylori胃炎で慢性活動性胃炎が持続し,foveolar hyperplasiaが目立つ明瞭な隆起性病変(ポリープ)となったものを腺窩上皮型の過形成性ポリープ(foveolar hyperplastic polypとかhyperplastic polyp of foveolar type)とよびます.単に過形成性ポリープhyperplastic polypというものはこれを指すことが多いです.前庭部に多い化学性(反応性)胃炎(疣状胃炎,raised erosion)や,GERDに関連して生じる食道胃接合部の「炎症性ポリープ」の胃側病変もfoveolar hyperplasiaが特徴的です.

 さて,PPI投与例や除菌後に胃体上部から穹窿部大彎に白色調の扁平隆起が多発して認められることが最近注目されています.これが多発性白色扁平隆起で,春間・川口病変ともいわれています.

 このことをよく知らない先生方からは「腸上皮化生?」「腺腫?」を疑って生検されてくることが多かったですが,病理学的には胃底腺粘膜に生じた(focal) foveolar hyperplasia(の一種)なのです.H. pylori胃炎内によくみる過形成性ポリープ(腺窩上皮型)と違って粘膜固有層の炎症が乏しいです(一番上の生検写真,クリック).

 最寄り駅を通過する,知る人ぞ知る「SL北びわこ号回」です.今日はトワイライト色のEF65が牽引していました.運がいいとEF65+C56160(まれにC571)の電蒸運転をみることができるそうです.近い将来はD51200でしょうか?
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リンパ球性胃炎 lymphocytic gastritis

2016-10-15 | 胃炎
リンパ球性胃炎です.
上皮内リンパ球がメッチャ増加しています.CD8+Tリンパ球といわれています.
古くはHaotらによるVarioriform gastritisという論文が有名です(1989年).
メネトリエ病,肥厚性胃炎,スプルー,collagenous gastritis/colitisなどとかぶることがあるようですが,H. pylori胃炎でも反応性にみられることがあります.
スタンフォード大学の病理サイトをみると
May be associated with:
◾Collagenous gastritis
◾Celiac disease:Predominantly antral
◾Helicobacter:Predominantly in body mucosa or diffuse
◾Crohn disease
◾HIV infection
◾Lymphoma
と記載されていました.

身近なヒトが関連している論文ですと,
Verh Dtsch Ges Pathol. 1996;80:208-11. German. PMID:9065003
Intern Med.1998 Dec;37(12):1019-22. PMID:9932632. Free Article
がPubMedでヒットします.前者は独語論文ですが,後者はfree articleです.いずれもピロリ菌関連です.


先日ケルン駅でみた客車列車.牽引は西ドイツ時代に製造された120型電気機関車です.
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