胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

PPI-related gastropathy

2020-07-04 | 胃腫瘍様病変
 長期間PPIを服用されている方の体部隆起性病変から生検された組織像です。クリックしてみてください。
 本ブログでは古くは2009-04-21と2016-10-30にparietal cell protrusion, parietal cell hyperplasiaを、2015-09-06に白色扁平隆起をテーマにして投稿しています。今回はそれらの合わせ技です。
 胃底腺粘膜の腺窩上皮には限局性の過形成がみられ(lozalized/polypoid foveolar hyperplasia)、胃底腺ではparietal cell protrusionを伴う拡張がみられます。
 胃炎の京都分類という教科書では、PPI-related gastropathyという洒落た述語が提唱されています。

Biopsy obtained from an elevated lesion of the body of a patient taking PPI for a long time. Please click.
In this blog, I posted “parietal cell protrusion; parietal cell hyperplasia” on 2009-04-21 and 2016-10-30, and “white and flat elevated lesions” on 2015-09-06. This time, it's a combination of them. Localized foveolar hyperplasia and dilatation of fundic glands with parietal cell protrusion are seen.
In the text book of “Kyoto Classification of Gastritis” , a stylish term “PPI-related gastropathy” is proposed.


JR草津線や湖西線を走る甲賀流113系「忍トレイン」です。
Series 113 "Ninja (SHINOBI) Train" running on the JR Kusatsu Line and Kosei Line in Shiga Prefecture. It may be Koka style.
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多発性白色扁平隆起 multiple white and flat elevated lesions

2016-10-30 | 胃腫瘍様病変
 胃病理学の総論的な用語に腺窩上皮過形成 foveolar hyperplasiaというのがあります.米軍の病理教科書だと focal foveolar hyperplasia (foveolar hyperplasia)という小見出しになっています.腺頸部細胞増殖帯より表層部の腺窩上皮(表層粘液細胞)が過形成性に増殖し,しばしば蛇行します.個々の細胞の粘液産生も豊富になることが多いですが,吻合部胃炎などでは逆に粘液産生が低下します.
 原因は何でもありで,H. pylori胃炎で慢性活動性胃炎が持続し,foveolar hyperplasiaが目立つ明瞭な隆起性病変(ポリープ)となったものを腺窩上皮型の過形成性ポリープ(foveolar hyperplastic polypとかhyperplastic polyp of foveolar type)とよびます.単に過形成性ポリープhyperplastic polypというものはこれを指すことが多いです.前庭部に多い化学性(反応性)胃炎(疣状胃炎,raised erosion)や,GERDに関連して生じる食道胃接合部の「炎症性ポリープ」の胃側病変もfoveolar hyperplasiaが特徴的です.

 さて,PPI投与例や除菌後に胃体上部から穹窿部大彎に白色調の扁平隆起が多発して認められることが最近注目されています.これが多発性白色扁平隆起で,春間・川口病変ともいわれています.

 このことをよく知らない先生方からは「腸上皮化生?」「腺腫?」を疑って生検されてくることが多かったですが,病理学的には胃底腺粘膜に生じた(focal) foveolar hyperplasia(の一種)なのです.H. pylori胃炎内によくみる過形成性ポリープ(腺窩上皮型)と違って粘膜固有層の炎症が乏しいです(一番上の生検写真,クリック).

 最寄り駅を通過する,知る人ぞ知る「SL北びわこ号回」です.今日はトワイライト色のEF65が牽引していました.運がいいとEF65+C56160(まれにC571)の電蒸運転をみることができるそうです.近い将来はD51200でしょうか?
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Parietal cell protrusion, parietal cell hyperplasia (3)

2015-09-06 | 胃腫瘍様病変
最近にわかに注目されてきましたので2009年以来6年ぶり同じネタを投稿します.
PPIやガストリン高値でみられる変化です.
除菌後胃生検と記載された症例でよくみかけますね.
1) pseudoparietal cell hyperplasia/hypertrophy
2) parietal cell protrusion
3) FGP-like lesion
などと言われています.個人的には2)を好んで用いていますが,胃底腺ポリープとよく似たものには3)を使っています.
下の写真は500系こだまです.先端がprotrusionした壁細胞に似ています.
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endocrine cell micronest, ECM, A型胃炎

2009-05-21 | 胃腫瘍様病変
 A型胃炎と思われる体部腺領域の胃生検組織です。Gastrinも「高値」の範疇でした。内分泌細胞(たぶんECL細胞)の増生がわかると思います。
 イタリアの大先生は
  hyperplasia: micronodular clusters, 5 or more cells
  adenomatoid hyperplasia: 5 or more micronodules
  dysplasia: 150μm - 0.5mm
  neoplasia > 0.5mm or intramucosal invasive
(adenomatoid hyperplasiaとかdysplasiaとかいう用語は...)
 本邦からの有名な論文とGIPaCでの耳学問では、A型胃炎などで萎縮した胃底腺粘膜をみて内分泌細胞の集簇巣を、おおよそ0.1mm、0.1-0.5mm、0.5mmを境にECM、microcarcinoid (neoplastic ECM)とcarcinoidに分類し、0.1mmより小さくてもcarcinoid-like structureやatypiaがあればneoplastic ECMとするのがよいのでしょうか。
 A型胃炎といっても、H. pylori胃炎が重なっていたり、PPIを常用されている方であったりすると複雑になってきます。特に生検では切れ方によってnestの大きさは随分変わってきます。内視鏡的には明らかな腫瘍がなくても、ECMがあるところはないところに比べて発赤しているきれいな写真を見せてもらったことがあります。
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parietal cell protrusion, PPI

2009-04-21 | 胃腫瘍様病変
 昨年8月23日にも投稿していますが、立派なparietal cell protrusionをみかけたので、アップいたします。今の施設でも、このような胃生検がついつい気になってしまいます。この組織像は
1) pseudoparietal cell hyperplasia/hypertrophy
2) parietal cell protrusion
3) FGP-like lesion
などと呼ばれています。(1)は我らが独逸の腫トルテ先生が名付け親ですが、英米人は(2),(3)が好きなようです。日本の仲間ではあまり話題になりませんが・・・
 PPIの服用または高ガストリン血症の際に壁細胞が尖がった帽子の様になるのが特徴的です。これ自体は見落としてもあまり問題のない所見だと思いますが、カルテを辿っていくと色々なことが見えてくるかもしれません。
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Fundic gland polyp with atypia (4)

2009-01-13 | 胃腫瘍様病変
 MIB-1(Ki67)染色すると予想以上に陽性細胞は少なく局在しています。活字になっているものとしては、先に紹介したNYのスーザン(AJP:APC/β-catenin異常に言及)と、病理と臨床の臨時増刊号(vol.24, 「悪性と誤りやすい良性疾患、良性と・・・」)の胃のところに載っています。
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Fundic gland polyp with atypia (3)

2009-01-13 | 胃腫瘍様病変
 表層部の腺窩上皮型の細胞の核が細長く立っているのが気になります。写真のように表層部まで立っているところもあれば、小さくなっている(表層分化)ところもあります。少し下のほうでは壁細胞が混じり合っています。
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Fundic gland polyp with atypia (2)

2009-01-13 | 胃腫瘍様病変
 同じ症例の別のところです。同様の症例は東北と湾岸の大先生によるVSを用いたアンケートで、10人の「消化管を専門とする」病理医の間で、「がん、非がん、わからない」(Group IからGroup Vまで)と意見がバラバラに分かれました。議論を蒸し返すようで申し訳ありません。
 とくに、写真の左上のところなど、腺窩上皮型のadenocarcinomaとの鑑別が問題になります。
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Fundic gland polyp with atypia (1)

2009-01-13 | 胃腫瘍様病変
 変な胃底腺ポリープがあったのでESDをしてもらいました・・・という相談がありました。この手ものは以前、玄界灘の近くの病理学会総会で、「臓器別診断講習会」デビューをした時、NYのスーザンの論文を引用する形で"fundic gland polyp with dysplasia"と紹介し、大先生に「それは幼若化だ!!」とボコボコにされた思い出があります。その時には、Dr Curryに助けてもらいました。
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Hamartomatous Inverted Polyp of Stomach (3)

2009-01-03 | 胃腫瘍様病変
 別のところの拡大です。左側は被覆粘膜で、本例ではH. pyloriの感染のない、非萎縮性胃底腺粘膜でした。
 本年も「胃生検の小部屋」をよろしくお願いします。
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Hamartomatous Inverted Polyp of Stomach (2)

2009-01-03 | 胃腫瘍様病変
先ほどの拡大です。ポリープの中には粘膜下異所性胃粘膜と同様、粘膜筋板で囲まれた区画性ともいうべき粘膜が認められます。大腸のPJ型ポリープとも似ています。
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Hamartomatous Inverted Polyp of Stomach (1)

2009-01-02 | 胃腫瘍様病変
 昨秋、同じ週に2件、胃のポリペクトミー標本に関する同様の相談が別施設からありました。元の診断は過形成性ポリープで、誤りではないのですが、「何か多彩な像なので、ちょっと...」ということです。組織診断名としては"Hamartomatous Inverted Polyp"が良いのではないでしょうかと返答しました。そのうちの1例を提示します。この言葉での検索で、きれいな症例報告にもヒットします。
 病変の成り立ちとしては、文字通り過誤腫であるのか、あるいは多くの粘膜下異所性胃粘膜と同じく後天的な機序が考えられると思います。
 まずはルーペ像からクリックして下さい。
 
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幽門腺過形成、Pyloric gland hyperplasia

2008-08-25 | 胃腫瘍様病変
 大阪の幽門腺過形成です。これは残胃吻合部胃炎のところから採られた生検で、やや難しいと思います。
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幽門腺過形成、Pyloric gland hyperplasia

2008-08-25 | 胃腫瘍様病変
 次に서울の幽門腺過形成です。これはH. pylori胃炎の胃底腺領域粘膜です。偽幽門腺過形成というべきかもしれません。
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幽門腺過形成、Pyloric gland hyperplasia

2008-08-25 | 胃腫瘍様病変
 胃型腺腫(幽門腺型腺腫)なんてレア物を扱って周りに吹聴していると、胃炎に際して時々みられる幽門腺過形成との混乱を助長してしまっているようです。このところ立て続けに、腫瘍か?反応性か?というコンサルトで、反応性の所謂「幽門腺過形成」がありました。まずは中部地方の幽門腺過形成です。幽門腺型腺腫でみられる様な、小型円形ながら核小体が見られ緊満感のある元気な核も混在しますが、幽門腺過形成ではそれが少なく、普通の幽門腺でみられるような扁平な(へしゃげた)核をもつ細胞が必ず混在します。
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