胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

体部腺・固有腺型胃がん, Dr. Curry type

2008-10-21 | 胃分化型腺癌
 これはMUC6の染色です。MUC6は幽門腺型粘液のマーカーとしてよく知られるようになっていますが、炎症も腫瘍もない健常成人粘膜上皮組織では幽門腺、頚部粘液細胞(副細胞)、ブルンナー腺で発現がみられます。本例でMUC6を染色したところ腫瘍腺管が強陽性を示し、粘膜深部~粘膜筋板内で手つなぎ・横這い様の分岐・融合をしている姿が描出されました。MUC6やMUC5ACあるいはその系列の染色が婦人科病理分野でもよく用いられていますが、その点についてはDr.近江富士やFrau Dr.鈴鹿山脈の論文をご参照下さい。Dr.鈴鹿山脈は私の妹弟子です。
 なお、腫瘍を語る前には胃粘膜の分化と増殖の正常動態を知っておく必要がありますが、この分野では私の恩師である伊賀流一門総帥Prof.Ninjaに叩き込まれました。胃の頚部粘液細胞(副細胞)はペプシノゲン1を分泌する主細胞の前駆細胞と考えられています。(発生学的に異論を唱えるものもいますが・・・)
 このタイプの腫瘍ではMUC6とpepsinogen-1にdouble positiveになるものがほとんどで、頚部粘液細胞-主細胞系列への分化を示していると考えることができます。文献的にはchief cell differentiationを示す胃がんと報告されたものがあります。またchief cell hyperplasiaと報告されているものもこれである可能性があります。
 MIB-1抗体で染色しますと、正常増殖帯のところ以外に、腫瘍と目されるところにパラパラと陽性細胞が認められますが、indexは低く、low gradeなものであることが示唆されます。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

固有腺・体部腺型胃がん

2008-10-21 | 胃分化型腺癌
 先ほどの拡大写真です。胃底腺に類似していますが、不整に、鋭角的な分岐を示しています。やはり核異型も認められると思います。正常胃底腺と比較しましょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

固有腺・体部腺型胃がん

2008-10-21 | 胃分化型腺癌
 Dr.Curry型と呼んでいる胃がんを紹介します。この前も遭遇し、Curry先生にもみてもらったところです。このごろちょくちょくコンサルトされます。知ってないとスルーするし、知っていても診断に勇気がいるかもしれません。胃底腺(体部腺)細胞への分化が明瞭な分化型腺癌で、胃底腺粘膜の下の方で増殖し、ゆっくりと、間質反応にも乏しく、粘膜筋板から粘膜下層に浸潤していきます。非常にlow gradeと考えられます。SMT様の低い隆起でみつかることが多いので、内視鏡的には上皮性変化に乏しいと思います。まずは弱拡大、クリックしてください。一見正常の胃底腺粘膜ですが、下のほうに注目しましょう。すでに粘膜筋板の中に侵入しています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする