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長く生きているとやはり世相といいますか人々の考え方とかが変化していくのを感じられることが面白いわけですが、その時々でがっと変化を感じてさすがにぎょっとする時があります。
まあそれはほんとに時々あるのですが、それを感じさせてくれたのがカメントツさんの動画で語られた言葉でした。
まずカメントツさんが誰かというのは自分的には超有名な感じなのですがweb上で読んだ「こぐまのケーキ屋さん」の作者さんで主にwebマンガで活躍されていて紙の本も幾冊か出ているけど一般的にはまだ有名じゃない、という感じだったのが友人のために書いた「こぐまのケーキ屋さん」の4コマ漫画一作であっというまに人気者になってしまったという方であります。
私は偶然にもフォローしている方のリツィートで一作目から拝見できて他の方と同じく一目でファンになったのですが、私のような年配者には色々な意味で新鮮なマンガ作品なのでありました。
こぐまが主人公でケーキ屋さん、という設定はファンタジーとしてはむしろありきたりのようにも思えるのですが、そのありきたりに思える設定でこぐまの店長と人間の店員さんの会話だけで進んでいくようなほのぼの漫画がなぜこんなに自分のような老獪な者を含め多くの人の心をしかも一年以上にも渡ってつかんでいるのか、それはほんとに作品を読んでいくともうびんびんにというかじわじわというか泣きたくなるほど伝わってくるのです。
今の世界ってほんとにもうあっちを見てもこっちを見てもぎすぎすしている感覚がありますね。TV見てるとそんな話ばかりです。世界の平和とか言ってても隣国に対しても異国の人に対しても酷い言葉ばかり投げつけるのを聞いたり読んだりしていると辛くてしょうがありません。学校のいじめとか電車内でのいざこざとか、心がぐさぐさになってしまいます。
こぐまのケーキ屋さんの世界は優しくてほっとします。こぐまの店長と店員さんはお互いをすごく尊敬してて互いを思いやる気持ちが一番にあるのですよね。時々こぐま店長が失敗して店員さんがあわわとなっていてもそのことを可愛いなあ、でも店長のケーキは最高です、という気持ちがあるわけです。
でもそんな可愛い話も進んでいくとあちこち綻びができたりするものですが、カメントツさんのマンガはマジで本当に根幹に優しさ、争いたくない気持ちがあるのですね。
例えば、こぐま店長と店員さんが水族館に行く話があってこぐま店長が怖い鮫に怯えてしまう、というのがあったんですね。
他のマンガだと鮫に怯えている様子を前に俺が守ってやる、というような攻撃的な行動で愛情をしめす、というのが多いのではないでしょうか。
でもカメントツさんのマンガでは「やさしい鮫かもしれませんよ」という店員さんの言葉で「(鮫にも)おともだちがいますね」という理解をしますという展開になります。
これにはぐっときました。
カメントツさんの考え方というのはこういう形でできていてそれは優しいマンガをかいてみよう、というような付け焼刃的なものではなくデフォが優しさなんだということなのですね。
この作品を読んでこの人は本当なんだなあ、と思ったのです。
と、ここまでが前置きですw
冒頭に書いたカメントツさんの言葉で驚いた、というのは彼の動画が公開されていてその中で色々質問に答えたりしていたのですが、「こぐまの店長に彼女はできないのですか?」という問いに「もともとこぐま店長は男と女とも決めていない」と答えていたのです。「男女どちらかとか、股間についてるかついてないか、くらいでぼくは興味がないんですよ」とも。
正直言ってこれには凄く驚いてしまったのです。
というのは漫画って(ていうか小説でもなんでもそうだと思うのですが)まずは男女の物語なんですよね、基本的に。
よく言われるのは男性視点で言われるのですが「もてない男がマンガの中で可愛い女の子にもてる話を書く」とか「ヒーローになって女の子にもてる」とかそれが男の願望なのだからそれをマンガに描く、というのがまずは基本であるといつも「マンガの書き方」に書いてあります。少女マンガならさえない女の子が金持ちのイケメンに告白されるというわけですね。
しかし主人公が男でも女でもないなら何にもてるのか?
しかもカメントツさんは店員さんも男女決めてない、というのです。
?????
いやあ、年よりは驚きました。
男女平等、とはではなく男女決めてない。
単なるキャラクターなら別ですが漫画の主人公二人の性別を決めていない、気にしていない、というのは他にあるのでしょうか?
確かにそのせいか、ふたりはいつまで経ってもこぐまの店長と店員さんのままで名前がありません。名前をつけるとどうしても男女が示唆されてしまうからでしょうか。
こぐまはいつまでもじぶんを「くまは~」と言っていますし、奇妙だな、とは思っていたのですがカメントツさんはあえて決めてかったのです。
今までマンガ(やほかの創作もの)には数えきれないほどの作品があり、そのほとんどがジェンダーを気にする物語であったはずです。「男らしく」とか「女だてらに」とか「彼女が欲しい」とかそういう思考こそが作品の原動力になるのだともいわれていたはずです。
それが「男女を決めていない」「気にならない」と言われたのを私は初めて聞いたと思うのです。
カメントツさんの作品が今凄く受け入れられたのがまた一つ分かったのでした。
今まであった男女の関係や異質なものへの反感の話ではなく、ひとりの人間の店員さんと「こぐまの店長」という少し違う存在との理解と思いやりの物語であるということなのですね。
この年齢になって初めて教わったことでありました。
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