◆ フロイデンベルグの街並み 日本画 20号 第9回
コロンバージュ(木骨造り)の家並みが整然と並ぶ、ドイツのフロイデンベルグをモデルに描いています。
しばらく中断していましたが、3週間ほど前から再開しています。
前回の状態
ずっと「どこか何かがおかしい」という想いが続いていました。
描いても描いてもピンと来ず、仕上がりの予兆のようなものが見えて来ないのです。
そこで少しでも気分を変えて再開できるように、真っ先に水洗いをしました。
その後、木組みを色鉛筆で描き起こしたり、白壁を描き起こしたり、全体に絵の具をかけたり
いろいろやってみたものの、相変わらず堂々巡りが続いているという想いが払拭できず
思い余って徹底的に洗ってみることにしました。
再開直後は水で洗いましたが、下地のニカワがほぼ固化していてほとんど落ちなくなっており
今度は風呂場で40℃くらいの温水シャワーをかけながらジャブジャブ洗ってみました。
それでも予想に反して絵の具は半分も落ちず、もう洗うのは諦めるしかありません。
洗い終わって彩色を再開してみると、絵の具の水分がスーッと浸み込んで行くのに気づきました。
強く洗ったのでドーサが抜けたかな?と思いましたが、乾くと絵の具はちゃんと着いているのです。
その内に、絵の具が乾いても紙が波打つようになり、調べてみると紙がパネルから外れかかっていました。
今回は水貼りテープで貼っていたのですが、洗った際にテープの接着力が落ちてしまったようです。
こうなると描きづらくなりますので、紙を貼り直すことにしました。
パネルから紙を剥がした状態
案の定、ドーサが抜けて水分がパネルまで達していました。
パネルのベニヤ板からシミが出て紙の裏に移ってしまっています。
しかし、画面にはシミの影響らしき痕跡は出てきていません。
新たに彩色した絵の具はちゃんと着いていますし
シミになった部分を濡らしてみても、ニカワ特有のベタつきは全く感じませんので
このシミは洗う前からあったものではなく、やはり風呂場で洗った際にできたもののようです。
シミの分布を見ると、コロンバージュの家並みのところに重なります。
家の輪郭も木組みも、下描きでは鉛筆でガリガリ描いていますが
鉛筆のように硬く尖ったものを押しつけるように描くとドーサが抜けやすいものなのです。
その上、豚毛の刷毛でゴシゴシ洗いましたので、ドーサの抜けに拍車がかかったと思われます。
ただ、このドーサ抜けは全体にすっぽり抜けたわけではなく
鉛筆の線に沿って細い線状に連なって抜けているという状態だと推測でき、今後の制作には支障がないと思います。
画面を擦っても、絵の具が落ちるところは一箇所もないからです。
ドーサを追加する必要はなさそうです。
分かりづらいかもしれませんが、シミのできた部分にティッシュペーパーを水打ち(水で貼りつける)しています。
このまま自然に乾くまで放置し、それを2回ほど繰り返し、シミがティッシュにどの程度移るか様子をみます。
もし、大量に移るようであれば画面に影響を与える可能性がありますので、何らかの手立てを考える必要があります。
半日かけて様子を見ましたが、ティッシュはごく僅かに黄ばんだ程度でしたので
今後、画面へは特に影響を与えないだろうと思います。
パネルの方は、よく拭いてシミを落とせるだけ落とした後、白いペンキを塗ってシミ止めとしました。
これは洗った直後ではなく、その後しばらく彩色を続けた状態です。
これまで散々紆余曲折を余儀なくされた上、洗ってリセットすることもできませんでしたが
このくらいで悄気るほど柔い神経は持っておりませ〜ん!
最初の計画がダメなら次の手があるさ!と、少し方針転換をしようと思います。
木組みが見えなくなる寸前まで全体に色をかけ、家並みの形を描き起こし始めたところです。
明るいところも暗いところも区別せずに、塗り潰す覚悟で色をかけましたので
コントラストが低くなり暗い印象になりましたが、これは想定内です。
描き起こしは線描を主体にしています。
できれば線描の集積で調子を作って行けたらと思っています。
問題は白壁の明るさです。
どのような光にするか、どこまで明るくするか、今は明確な方針はできていませんが
描き起こしが進めば徐々に見えてくるだろうと思っています。
◆ 「獅子奮迅」 日本画 20号 続編
イタリア・ウンブリア州スポレートにあるサン・ピエトロ聖堂の正面壁に彫られたレリーフ群の一つです。
すでに仕上がったと判断していたのですが、仕事場に置いて眺めている間に気になるところが出てきて
時折、思い出したように手を入れ続けていたのでした。
前回の状態(一旦仕上がりとした状態)
今この画像だけを見ると、これで仕上がりにして良かったのではないかとも思えてくるのですが
実物を眺め続けて気になるところが出てくれば手を入れないわけにはいきません。
たとえ、それが良い結果を生まなかったとしても。
やらずに後悔するより、やって後悔した方が、次の一歩に繋がってくると思います。
現在の状態
手を入れ続けても良くなるという保証はどこにもありません。
仕上がりの判断というものは、とても難しいものです。
最後は自分の直感を信じるしかありません。
まだ僅かに気になるところがありますので、あと少しだけ手を入れるつもりですが
とりあえず、この制作過程の連載は今回で終了です。
------------- Ichiro Futatsugi.■
コロンバージュ(木骨造り)の家並みが整然と並ぶ、ドイツのフロイデンベルグをモデルに描いています。
しばらく中断していましたが、3週間ほど前から再開しています。
前回の状態
ずっと「どこか何かがおかしい」という想いが続いていました。
描いても描いてもピンと来ず、仕上がりの予兆のようなものが見えて来ないのです。
そこで少しでも気分を変えて再開できるように、真っ先に水洗いをしました。
その後、木組みを色鉛筆で描き起こしたり、白壁を描き起こしたり、全体に絵の具をかけたり
いろいろやってみたものの、相変わらず堂々巡りが続いているという想いが払拭できず
思い余って徹底的に洗ってみることにしました。
再開直後は水で洗いましたが、下地のニカワがほぼ固化していてほとんど落ちなくなっており
今度は風呂場で40℃くらいの温水シャワーをかけながらジャブジャブ洗ってみました。
それでも予想に反して絵の具は半分も落ちず、もう洗うのは諦めるしかありません。
洗い終わって彩色を再開してみると、絵の具の水分がスーッと浸み込んで行くのに気づきました。
強く洗ったのでドーサが抜けたかな?と思いましたが、乾くと絵の具はちゃんと着いているのです。
その内に、絵の具が乾いても紙が波打つようになり、調べてみると紙がパネルから外れかかっていました。
今回は水貼りテープで貼っていたのですが、洗った際にテープの接着力が落ちてしまったようです。
こうなると描きづらくなりますので、紙を貼り直すことにしました。
パネルから紙を剥がした状態
案の定、ドーサが抜けて水分がパネルまで達していました。
パネルのベニヤ板からシミが出て紙の裏に移ってしまっています。
しかし、画面にはシミの影響らしき痕跡は出てきていません。
新たに彩色した絵の具はちゃんと着いていますし
シミになった部分を濡らしてみても、ニカワ特有のベタつきは全く感じませんので
このシミは洗う前からあったものではなく、やはり風呂場で洗った際にできたもののようです。
シミの分布を見ると、コロンバージュの家並みのところに重なります。
家の輪郭も木組みも、下描きでは鉛筆でガリガリ描いていますが
鉛筆のように硬く尖ったものを押しつけるように描くとドーサが抜けやすいものなのです。
その上、豚毛の刷毛でゴシゴシ洗いましたので、ドーサの抜けに拍車がかかったと思われます。
ただ、このドーサ抜けは全体にすっぽり抜けたわけではなく
鉛筆の線に沿って細い線状に連なって抜けているという状態だと推測でき、今後の制作には支障がないと思います。
画面を擦っても、絵の具が落ちるところは一箇所もないからです。
ドーサを追加する必要はなさそうです。
分かりづらいかもしれませんが、シミのできた部分にティッシュペーパーを水打ち(水で貼りつける)しています。
このまま自然に乾くまで放置し、それを2回ほど繰り返し、シミがティッシュにどの程度移るか様子をみます。
もし、大量に移るようであれば画面に影響を与える可能性がありますので、何らかの手立てを考える必要があります。
半日かけて様子を見ましたが、ティッシュはごく僅かに黄ばんだ程度でしたので
今後、画面へは特に影響を与えないだろうと思います。
パネルの方は、よく拭いてシミを落とせるだけ落とした後、白いペンキを塗ってシミ止めとしました。
これは洗った直後ではなく、その後しばらく彩色を続けた状態です。
これまで散々紆余曲折を余儀なくされた上、洗ってリセットすることもできませんでしたが
このくらいで悄気るほど柔い神経は持っておりませ〜ん!
最初の計画がダメなら次の手があるさ!と、少し方針転換をしようと思います。
木組みが見えなくなる寸前まで全体に色をかけ、家並みの形を描き起こし始めたところです。
明るいところも暗いところも区別せずに、塗り潰す覚悟で色をかけましたので
コントラストが低くなり暗い印象になりましたが、これは想定内です。
描き起こしは線描を主体にしています。
できれば線描の集積で調子を作って行けたらと思っています。
問題は白壁の明るさです。
どのような光にするか、どこまで明るくするか、今は明確な方針はできていませんが
描き起こしが進めば徐々に見えてくるだろうと思っています。
◆ 「獅子奮迅」 日本画 20号 続編
イタリア・ウンブリア州スポレートにあるサン・ピエトロ聖堂の正面壁に彫られたレリーフ群の一つです。
すでに仕上がったと判断していたのですが、仕事場に置いて眺めている間に気になるところが出てきて
時折、思い出したように手を入れ続けていたのでした。
前回の状態(一旦仕上がりとした状態)
今この画像だけを見ると、これで仕上がりにして良かったのではないかとも思えてくるのですが
実物を眺め続けて気になるところが出てくれば手を入れないわけにはいきません。
たとえ、それが良い結果を生まなかったとしても。
やらずに後悔するより、やって後悔した方が、次の一歩に繋がってくると思います。
現在の状態
手を入れ続けても良くなるという保証はどこにもありません。
仕上がりの判断というものは、とても難しいものです。
最後は自分の直感を信じるしかありません。
まだ僅かに気になるところがありますので、あと少しだけ手を入れるつもりですが
とりあえず、この制作過程の連載は今回で終了です。
------------- Ichiro Futatsugi.■
長い間更新がないので、何か問題が起こっているのかな、と思っていましたが、
大変でしたね!!
水洗い、というよりは温水洗いまでして、それでパネルからいったん外し、膠の落ちぐわいまで検討する、というのは、仕事の量のみでなく、質の問題も加わり、神経も疲れた事でしょう。
それでもご自分の絵に、どこか違う、という想いが
つきまとう、という感じは私にも良く分かりますが、
なかなか最初の仕事段階にまで戻って、というのはやはり大変な決断な事も良く分かります。
何とか新しく仕事が始まった様子ですので、次回の段階の拝見できるのを楽しみにしています!
ご健闘を!!
「獅子奮迅」の方は、何度も写真を往復して見ましたが、これはどこに手を入れられているのかが、分かりませんです!
写真内での明暗の差の違い位で、となると、明るい部分の明度を少し落とされたのかな、とも思いますが・・。
いやぁ、「見える」程度の差を感じますです!!
作品を冷静に観察して、明らかに具体的な欠点がある訳ではなさそうなのに
どこか何かがおかしい!という印象しか受けないことがあるのは、shinkaiさんも経験がおありだと思います。
絵描きなら誰もが苦しむ問題なのでしょうね。
「フロイデンベルグの家並み」は、まさにその典型例と言えます。
いつまでたっても、仕上げに入って行ける兆しが見えてこなかったのです。
それでも、洗う直前の仕事からヒントのようなものが見つかりました。
と言うより、ずっと私が勘違いしていたことに気づきました。
それはまた次回、形の描き起こしが一段落しましたら記事にします。
「獅子奮迅」は、レリーフに差し込む光の状態が気に入らなかったのです。
加筆前の光も特に悪い訳ではないと思いますが、やや月並みな印象がありました。
レリーフの周囲はだいぶ暗くしましたが、そうするとレリーフが明るく浮き上がり過ぎるので
レリーフ自体のハイライトも適宜落としてあります。
後は石の質感にも手を入れています。
いえいえ、「見える」程度は私もshinkaiさんも同じです。