風色明媚

     ふうしょくめいび : 「二木一郎 日本画 ウェブサイトギャラリー」付属ブログ

9月4日木曜日

2008年09月04日 | 仕事場
また更新が滞ってしまいました。
6月下旬に腰を痛めて、完全に回復したかなと安心した矢先、8月中旬に再び腰に痛みが…。
今月は長野県松本市で高校のOB展、来月は同じく松本市での個展と続きます。
腰なんか痛めている場合ではないのですが、軽いギックリ腰が癖になってきているようで、ほんの些細なことでも腰痛になることがあります。
いつ腰痛が起こるか予測ができないだけにビクビクしながら暮らしている今日この頃です。
最近運動不足なのが祟っているだとは自覚しているのですが…。

さて、先月からパステルを使い始めてみました。
紫陽花の絵を4号の淡彩でという依頼があり、かねてから気になっていたパステルを使ってみることにしました。
私の場合、淡彩というと今までは水彩・顔彩(日本画用の水彩みたいなもの)・色鉛筆を使ってきて、パステルは学生時代を除くと未経験でした。



これはカラーマーメイドという紙に水彩とパステルを併用しています。

パステルは顔料を軽く固めてあるだけで接着力がなく、触れれば簡単に落ちてしまいます。
油絵やアクリルは顔料が接着剤で覆われるために「濡れ色」と呼ばれる、文字通り顔料が濡れた状態で接着するのです。
パステルは顔料が剥き出しで置かれているために、顔料本来の色合いが得られやすいのが特徴です。
しかし、そのままでは落ちてしまうので、画面に定着させるためにフィクサチーフという合成樹脂の定着液を吹きかけます。
そのため、合成樹脂に軽く覆われて若干「濡れ色」に変化してしまうのですが、これは仕方のないところです。

接着剤に軽く覆われた状態というのは日本画の岩絵具とよく似ています。
日本画ではニカワという接着剤を入れますが、油絵やアクリルのように接着剤の皮膜の中に絵具が浮遊して固化するということにはならず
半ば剥き出しのような状態で固着するので、絵具本来の色合いに近い仕上がりになってくれます。

絵具と接着剤の関係をごく簡略に図解しますと、下の図のようになります。
左側が油絵やアクリルの場合で、右側が岩絵具の場合です。




パステルや水彩・鉛筆など厚塗りできない絵具は紙との相性が重要になります。
塗った時の質感や発色の具合などは、紙の影響で明確な差が出るのです。
しかも描く人の好みによっては、パステル向きと言われている紙が必ずしも良いとは限らないのです。



淡彩用に用意しておいた紙をチェックしているところです。

私は水彩用にマーメイド・キャンソン・新バフン紙を主に使ってきました。
これらの紙はザラっとした粗い表面なのでパステルの乗りも良好です。
ケント紙のような滑らかなものは乗りません。

パステルは最も原始的な形態の絵具とも言えます。
昔、原始人は焚き火の燃えカスの炭で線や形が描けることに気がつきました。
これは地面に棒で線を引くことから一段階の進歩であり、パステルの原形でもあります。
粉末の絵具に接着剤を混ぜて筆で描く…なんてことは、もっと後世になってからの技法なのです。

-------------- Ichiro Futatsugi.■


コメント
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