THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「未来創造―私の発想法」(松本零士/角川oneテーマ21新書)

2010年10月25日 | Weblog
 「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道777」など独自の世界観を持つSF漫画家の松本零士氏が9月、「未来創造~私の発想法」(角川oneテーマ21新書)というユニークな本を出しました。松本氏といえば、私が卒業した県立高校の先輩(なんと、私の自宅から三軒隣に、松本氏の親せきの家があります!)。私はこの本の広告を見て、すぐに本屋で買い求めました。 

 松本氏は本書で、今の日本人に欠けている「夢を思い描く力」と「それを形に変える技術」について、自身の体験を基にあますことなく公開。人類の未来を予見し、物語として形に変えてきた著者による宇宙レベルの「発想」と「創造」の技術は、大いに参考になりました。福岡・小倉から目指して上京し、手塚治虫氏のアシスタントをしながらプロの漫画家としてデビューするまでの時代を回顧した文章も、興味をそそる内容でした。また、松本氏は姉の影響で子どもの頃から少女漫画や少女小説を愛読しており、それが松本漫画のキャラクターに大きく影響していることも知りました。

 この本を読んで感銘を受けたことは、松本氏が筋金入りの「平和主義者」だったこと。戦艦や戦闘機がよく登場する松本漫画とのギャップに驚かせられました。
 
 「宇宙開発の目的は平和利用に限れ」「宇宙戦争はあり得ない」「他国に行けば、その国の人たちの考え方や文化を尊重せよ」「世界中に読者がいるので、政治、宗教、思想などの話題は漫画に盛り込まない」「ライバルはいない。みんな仲間だ」「社会の中で決して相手を蹴落として、自分だけが這い上がろうとしてはいけない。そうすれば、逆に自滅してしまう」……など、松本氏のメッセージの根底にはすべて「平和」的な考えが流れています。

 また、漫画家を目指す若者のために、漫画家の仕事内容や漫画家としての心得を丁寧に紹介。その中で松本氏は「創造を膨らます」ことも大事だが、何よりも「本物に触れて実感せよ」と強調しています。70歳を超えても好奇心が衰えない松本氏のいちばんの趣味は「旅」。興味あるものがあれば、世界各地、どんな秘境にも実際に足運ばずにいられないそうです。

 人間はいくつになっても好奇心を絶やしてはいけない――。

 私はこの本から多くのことを学びました。


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