THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

(特別編)「海峡の風」の著者・轟良子さんの講演会を聴いて・・・

2010年03月17日 | Weblog
 朝日カルチャーセンター北九州教室で15日(午後1時から北州市立図書館主任・九州女子大学非常勤講師の轟良子さんによる講座「知られざる横顔~北九州を彩った先人たち」が開かれました。轟さんが昨秋「海峡の風 北九州を彩った先人たち」を出版したことを記念しての特別講座で、私も聴講しました。
 1974年(昭和49年)に北九州市の職員になった轟さんは、同年に建てられた市立中央図書館に働き始めた。この年は、私が生まれた年です。
 「私をご存じの方はいませんか?」「中央図書館を利用した人はいますか?」
講座のはじめに轟さんは、自身が務める図書館について話しました。図書館には国内外から北九州市にゆかりのある著名人の問い合わせがあるため、轟さんは2002年から地元の月刊情報誌「ひろば北九州」に彼らの生い立ちや業績を紹介する人物録を連載。今回出版した本は、2002年1月から昨年2月までに掲載した84人分の記事をまとめたものです。この講座で轟さんは、紹介人物の1割に当たる女性を中心に取り上げ、本の中で書ききれなかったエピソードなどを交えながらユーモラスに話していきました。また、スライドショーやCDを使って、視覚や聴覚でも楽しめるように工夫されていました。
 細川ガラシャ、柳原白蓮、杉田久女……。私はガラシャの名は知らなかったものの、白蓮や久女など文学関係の人についてはそれなりの知識があったので、轟さんの話は興味深く、引き込まれました。白蓮の美貌は有名ですが、かつて彼女が毎日新聞によって楊貴妃と並ぶ 「1000年の三大美女」に選ばれたことを知ってびっくり! 轟さんは白蓮が79歳の時の肉声レコードを聞かせ、「イメージしていた異なる声でした」。
 後半は、山口出身の童謡詩人・金子みすゞと北九州市戸畑出身の作家・林芙美子について。轟さんは、「2人が同じ1903年(明治36年)に年に生まれたことに何かの縁を感じられずにはいられません」と話していました。
 
 轟さんが連載を始めたきっかけは、国内外から図書館に北九州市ゆかりの著名人についての問い合わせが増えたから。「記事を読まれた方に『良い面だけを美しく描いている』と言われることがありますが、私は悪い点は書かないようにしています。本というのは長く残るものですから。人は誰しも良い面と悪い面があります。でも、どうしても悪い噂が多い人は、申し訳ないですが、書くのを避けています」。轟さんは、戦前の受刑者の遺族から、図書館に保管している新聞から関連記事を削除するように言われたことも明かしました。
 講座終了後は轟さんのサイン会が開かれ、本を買った人が列を作った。事前に購入して読んでいた私もサインを依頼。轟さんは丁寧にペンを走らせ、「今から出発。よろしくお願いいたします。」という言葉を添えてくれました。
 轟さんの本に掲載されている写真は全て夫・次雄さんが撮ったもの。次雄さんは私が習う毎日文化センターのパソコン教室で写真の編集技術を教えています。「掲載写真のネガは全部白黒で、主人がパソコンで着色してくれました」と轟さん。
 轟さんにとって「ふくおか歴史散歩」「北九州歴史散歩」(ともに西日本新聞社)に続く3冊目の本も、夫婦の愛の結晶になりました。


(特別編)火野葦平記念展が開催中

2010年03月13日 | Weblog
 今年1月24日に没後50年を迎えた北九州市出身の作家・火野葦平(1907~60)=本名・玉井勝則=の遺稿や書簡、遺書などを展示する2010年所蔵品展「火野葦平没後50年」が、市立文学館(小倉北区)で4月4日まで開かれています。私も会場を訪れました。
 同館の葦平に関する約2200点の収蔵品の中から個人蔵を含む重要なもの約50点を展示。目玉は、福岡市の西部軍管区報道部にいた面々と折り本に記した寄せ書き。同人誌「九州文学」をともに支え、葦平と交流があった小倉生まれの作家・劉寒吉(故人)の長男が所有しており、今回初公開されました。
 寄せ書きの中で、葦平は「命十五首」と題した一連の短歌を見開き2ページにわたって記しており、最後には「大みいくさをはるの日に 臣火野葦平」と書かれています。
 葦平は日中戦争で出征中の1938年に芥川賞を受賞。「麦と兵隊」などの「兵隊三部作」で国民的人気を博しましたが、戦後は一転して「戦争協力者」との批判を浴びました。
 この寄せ書きは葦平の終戦の日の心中がうかがえる貴重な資料。葦平の字はうまくはいものの、温かさが感じらます。また、作品の直筆原稿のほか、「この道は 美しき道 花咲いて 香よき道 銃もちて 兵隊ゆかば 花の道 いさましき道」(昭和16年1月20日)と書かれた色紙や、親しみを込めて友人へつづった手紙やハガキも。葦平が好きなカッパのイラストを描いた半紙や短冊(川端康成、星野順一ら親交が深かった作家との寄せ書きが多い)もあり、葦平のユーモラスな一面にふれることができました。

 火野葦平は、福岡県遠賀郡若松町(現・北九州市若松区)で沖仲仕「玉井組」を営んだ玉井金五郎の長男として生まれました。小倉中学校(現・福岡県立小倉高等学校)時代から文学に関心をよせ活発に活動。第一高等学院入学後、童話集を自費出版します。1926年、早稲田大学英文科に入学し、寺崎浩や田畑修一郎らと同人誌「街」を創刊、小説や詩を発表していましたが、28年、兵役で福岡第24連隊に入営。37年、日中戦争に応召。出征前に書いた『糞尿譚』の芥川賞受賞を機に報道部へ転属となり、軍部との連携を深めていきました。
 戦闘渦中の兵隊の生々しい人間性を描き、戦地から送った従軍記『麦と兵隊』が評判を得て人気作家に。太平洋戦争中も各戦線に赴き、従軍作家として活躍。攻略直後の南京に入り、それに至る進撃路において捕虜が全員殺害される様子を手紙に書いています。
 戦後は、「戦犯作家」として戦争責任を厳しく追及され、48年から50年まで公職追放を受けますが、追放解除後も活動し、九州男児の苛烈な生き方を描いた自伝的長編『花と竜』や自らの戦争責任に言及した『革命前後』など多くの作品を発表し、再び流行作家となりました。
 1960年1月24日、自宅の書斎で死去(享年53)。最初は心臓発作によるものだと言われたが、のちに友人が葦平の家で『ヘルスノート』を発見し、睡眠薬自殺と判明しました。高血圧症だった葦平は、前年12月から自らの健康状態をこのノートに記しており、。死ぬ前夜の日記は「死にます。芥川龍之介とは違うかもしれないが、或る漠然とした不安のために。すみません。おゆるしください。さやうなら。……脳いっ血でたおれたものとあきらめて、みんな力を合わせ仲よく元気を出して生きぬいて下さい」と結ばれていました。
 時代の潮流の中で自らの戦争責任と向き合い、「戦争作家」と呼ばれることに苦悩し続け、自ら命を絶った葦平。このことは13回忌に遺族によって公表され、社会に衝撃を与えました。
 私はこの企画展を通して、「火野葦平」の人間像を知ることができました。

「子どもを育てる聖書のことば」(日野原重明/いのちのことば社)

2010年03月12日 | Weblog
98歳になる今も現役医師として勢力的に働き続けるスーパードクターが少年時代の思い出をふりかえり、幼少から親しみ影響を受けた聖書のことばを子どもにもわかりやすい文章で綴ったエッセイ集。雑誌『百万人の福音』に1年半にわたって連載した「幼い日に覚えた聖書のことば」をもとに加筆をしたものです。
メソジスト教会の牧師の父とクリスチャンの母のもとに生まれた日野原少年は幼少の頃から家庭礼拝や日曜学校(いまの教会学校)で聖書を読んでいました。教師や親から教わった聖書の個所はその後の人生に大きな影響を与えました。本書では、その時に覚えた聖書の個所をどのように読んだのかが味わい深く語られています。
日野原氏は「他のために尽くせ」というキリスト教の精神で70年以上にわたって医療の現場で活躍されていますが、65歳の時に聖路加病院を定年退職。85歳の時に病院に新設された医療センターの院長として現場に復帰しました。独自の健康維持法で90歳を超えても、患者の診療、講演会、海外旅行、ミュージカルや音楽CDの制作、執筆業……と寝る間のないくらいに多岐にわたる分野で活躍しているのは皆さんもご存じでしょう。
全国の小学校で「いのちの授業」も続けている日野原氏は、子どもは感受性の高い故に、子ども時代の学びや環境がいかに重要であるかを力説しています。

「彼女のいる背表紙」(堀江敏幸/マガジンハウス)

2010年03月11日 | Weblog
 みなさんは、過去に読んだ書物の中で出会った印象深い「女性」たちをふとした時に思い出すことはありませんか? 私はめったにそんなことはないのですが、作者の堀江氏はよくあるそうです。このタイトルにある「彼女」とは、フランス文学者の堀江氏がかつて読んだ本の中にいるヒロインであり、その作者のこと。雑誌「クロワッサン」で好評を博した上質な連載エッセイをまとめたもので、なにげなく新聞広告を見ていた私はそのオシャレで意味深なタイトルを目が留まり、中身を分からず買ってしまいました。
本書は48編からなっていますが、大学で英米文学を専攻していた私には紹介されている作品・作者をほとんど知りませんでした。でも、読み進めているうちにフランス文学への興味がでてきて、「堀江ワールド」の魅力にひきこまれていきました。
 本があれば、家の中にいても世界を旅することができるといわれましたが、まさしくその通り。この本を通して、私はフランス文学の「世界」にふれることができました。
 各編は短いので、疲れて気分転換したい時や寝る前に読むのに最適ですよ!

「天使になったペットたち(犬編)」(大和書房編/だいわ文庫)

2010年03月11日 | Weblog
表紙カバーの愛くるしい犬の写真にひかれて、軽い気持ちで買った本です。
思い出だけを残して逝ってしまったけれど、出会えたこと、楽しかった日々は忘れない……。無垢の愛に包まれる涙と感動の物語。
 小学生の頃、一時期犬を飼っていた私は、それぞれのストーリーに心を打たれました。

「アダムのパンツ」(大岡従道/いのちのことば社)

2010年03月11日 | Weblog
毎週1500もの人たちが集まる教会の「非まじめ牧師」が語った最新説教11篇。「難しいことをおもしろく、おもしろいことを深く!」語られた聖書に根ざした福音の解きあかしは、明るく前向きな信仰へと導いてくれる。
クリスチャンの知人からいただいた本ですが、読みやすくておもしろかったですよ。

「私のイエス 日本人のための聖書入門」(遠藤周作/伝祥社黄金文庫)

2010年03月11日 | Weblog
 カトリック作家の遠藤周作が、クリスチャンではない日本人のために書いたキリスト教の入門書。日本人が誤解しがちなキリスト教にまつわる知識を、ユーモアたっぷりの文章で解説しています。

1章 キリスト教と私―こうして、私はイエスに近づいた;2章 聖書の中の真実のイエス―“愛の証明”だけを説きつづけた人間の生涯。3章 聖書の謎―なぜあなたは、キリスト教に親しめないのか(奇跡とは何だろう?;厳しい制約がイヤだという人のために;バース・コントロールの是非;“離婚”と“自殺”について;原罪とは何か?)

「こどもたちは知っている 永遠の少年少女たちの文学案内」(野崎歓/春秋社)

2010年03月10日 | Weblog
 「レ・ミゼラブル」から「カラマーゾフの兄弟」「銀の匙」まで物語の少年少女が教えてくれる、文学にとって、おとなにとって一番大切なものとは? 
 無垢な魂を取り戻すための古典読本。書店で偶然見つけた本です。名前を知っていたり、実際に読んだことのある作品が多かったのですが、この本を通して改めて解説を読むと、けっこう知らないことや誤読していたところもあり、とても勉強になりました。

「あの人はどこで死んだか 死に場所から人生が見える」(矢島祐紀彦/青春文庫)

2010年03月10日 | Weblog
 山田かまち、夏目漱石、本田宗一郎、司馬遼太郎など、各分野の有名人80名の死に場所から、自分自身の人生終着地点を学ぼうとする1冊。本のタイトルに惹かれて学生時代に買っていたのですが、読む機会がなくて積読状態になっていました(現在は絶版になっています)。
 はじめに、「死」というタイトルから暗い内容を想像していたのですが、読む始めると全くそうではなく、最後まで読み入ってしまいました。
 無数の人間には皆、それぞれの「ドラマ」がある――。本書に紹介された人たちのエピソードを読みながら、私は改めて思いました。

「新約聖書 イエスのたとえ話をよむ」〈上・下)(船本弘毅/NHK出版)

2010年03月10日 | Weblog
 四福音書にとりあげられた、イエスが教えに用いた「たとえ話」。本書は、その背景などを鑑み、「たとえ話」が伝えたかったことの真意を探るとともに、現代社会への視点を提起するNHKラジオ「宗教の時間」テキストです。
 講義では、イエスの教えと生涯を記したマタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの福音書に取り上げられた「たとえ話」をピックアップ。キリスト教の本質や信仰とはとういうことなのかについて、深遠な神学的な解釈ではなく、新約聖書を読み解きながら、現代社会にも通じるイエスの言葉の真意に迫っています。
 初心者向けにわかりやすく書かれていますが、クリスチャンが読んでも勉強になります。