THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「懐かしい日々の想い」(多田富雄/朝日新聞社)

2006年06月30日 | Weblog
  医療と科学と文学。全人的な教養と愛に裏打ちされた知性が鳴らす現代文明への警鐘。脳梗塞に倒れた著者が死の淵から生還。生への激しい想いがほとばしる感動のエッセイ集。
私が多田氏のことを知ったきっかけは、昨年末に放送されたNHKスペシャル。脳神経学者で文学者でもある多田氏は数年前に脳梗塞で倒れ、生死をさまよった後、手足と言語に障害が残り、車椅子生活になりました……。
 本書は、多田氏が病に倒れてから、書き溜めていた原稿や雑文を最後の著書として1冊にまとめたもの。元気だった頃の海外訪問記や世の中やクローン技術など現代科学について意見をつづったエッセイなどで構成されています。

「バースディ・ラブレター」(エドワード・ホフマン編/講談社)

2006年06月22日 | Weblog
 感情の吐露。結婚の承諾。賢明な忠告。温かい励まし。ユーモア。賛美。感謝。そして決意。誕生日という特別な日をきっかけに表明された人生の真実。本書は、マーク・トウェーン、アインシュタイン、ルイス・キャロル、アガサ・クリスティ、ジョン・スタインベック、トルーマンなど世界の著名人60人が書き残したバースディ・ラブレターや日記などを収録した面白いアンソロジー本です。
 妻へ、夫へ、変わらぬ愛を誓う。恋人へ、燃え立つ思いを伝える。母へ、優しい心を感謝する。息子へ、その成長を祈る。娘へ、幸せな日々の訪れを。大切な人へ、胸いっぱいの愛を。友へ、喜びを分かち合う――。
本書を読んでいると、各人の人を愛する気持ちが痛いほどに伝わってきて、胸が熱くなります。
 誕生日は、それまでの自分の生き方を振り返って反省することができる、人生でも最も有意義な日であると編者は言っています。
 本書は、人への誕生日プレゼントしてはもちろん、自分の誕生日にも読みたい生涯の宝物となるでしょう!

「空を飛ぶ恋 ―ケータイがつなぐ28の物語―」(新潮社篇/新潮文庫)

2006年06月17日 | Weblog
彼女から彼へ、娘から父へ、夫から妻へ、男から女へ、ケータイがつなぐ心と心。終わってしまった恋、忘れられない過去、……ひとりぼっちの部屋から、街の片隅から、遠い国から、もどかしい想いを乗せて飛ぶ言葉たちが1冊に凝縮された画期的なアンソロジー本が先月、新潮文庫から刊行されました!
 現代の世の中に欠かすことができなくなった「携帯電話」(ケータイ)から生まれる物語を当世一代の作家たちが書き下ろした28編の恋愛小説アンソロジー。
 各編5ページほどの短編で読みやすく、一気に読み終えました。物語のひとつひとつに胸を動かされました……。各編に付いているモノクロの写真もきれいで、感傷的な気持ちになります。

「シネマと書店とスタジアム」(沢木耕太郎/新潮文庫)

2006年06月13日 | Weblog
私は「深夜特急」などがかつてベストセラーになったノンフィクション・ルポライターの沢木氏の作品が好きで、いくつも読んでいますが、昨年刊行された「シネマと書店とスタジアム」は、彼が大好きな趣味をテーマに書かれた、面白くて読みやすい本です。

 「蝶の舌」「ピンポン」などのヒット映画から、ピート・ハミルや古井由吉の本まで、欠点を挙げながらも、なぜ自分はその作品が楽しめたのかを率直にやわらかく語っいてます。また、長野五輪と日韓W杯に関するコラムでは、選手の内面に視線を向けて、プレー中の一瞬の決断や逡巡に推理をめぐらしており、ルポライターらしい彼の着眼点に驚かされました。
 現在、ドイツではサッカーのワールドカップが開催中で、日本中が熱く盛り上がっています。そんな中、この本を読んでいると、4年前のW杯のことが思い出され、懐かしく思いました。

「わが食いしん坊」(獅子文六/角川グルメ文庫)

2006年06月07日 | Weblog
 鋭い風刺と軽妙な筆致でユーモア小説や「父と娘」などのベストセラー作家としてかつて人気を博した著者は、同時に“グウルマン”としても一級の人でした。本書では、著者が幼少時代から親しんできた懐かしい味の思い出、渡仏時代に名店めぐりでつちかった食への執念、酒飲みの作法から四季折々の食材までを独特の視点から語り尽くしています。
 角川グルメ文庫の1周年企画。今ではあまり読めなくなった昭和の文豪の作品が新刊書で読めるとは嬉しいことです。
 今の人たちが忘れつつある古き良き時代の日本の料理から、ヨーロッパの料理まで・・・・・・。また、昔からの伝統料理、旬の魚を生かした季節料理をたくさん紹介。グルメ通の心をくすぐる1冊。
 血糖値がこのごろ高くなった私は現在、ダイエットをかねて食事制限(療法)を行っており、おいしいものや高価な料理などを口にすることができませんが、この本を読んでいると、お腹いっぱいになってきました!

「出世ミミズ」(アーサー・ビナード/集英社文庫)

2006年06月02日 | Weblog
 ある雑誌の書評欄に載っていて、おもしろそうだったので買って読んでみると、やはりおもしろくて、2日間で読みきりました!
 ランドセルとは、もしや動物の学名か? アメリカにも天狗はいるの? 出世魚の英語版は、ひょっとしてミミズ?・・・・・・本書はアメリカ人で日本在住の詩人が、みずみずしい視点と驚きから書きつづった初の文庫エッセイ集です。
 俳句や短歌を習ったり、落語を寄席で楽しんだりと、日本をこよなく愛する彼は、日本人よりも「日本通」。今の若者が知らないと思われる難しい日本語(美しい日本語)も文中に多く登場します。
 また、父・母・祖父母らと過ごした少年時代のエピソードもふんだんに紹介しています。
 本書は4章に編集されていますが、各編は短くまとめられており、読みやすかったです。