THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「四百字小説」(創英社出版事業部編)

2007年02月20日 | Weblog
文学の世界には「ショートショート」といわれる短編ジャンルがありますが、それよりも短いのが「超短編」。近年、国内外でもそのジャンルへの人気が高まり、素人を対象にした作品の募集も盛んに行われるようになりました。
 2年ほど前に「三百字小説」(川又千秋/嶋中書店)という本を読みましたが、今回は400文字で構築された究極の短編45作品を収録した本(新書判)が発売された(2006年10月)ということを知り、さっそく読んでみました。
 月刊誌に掲載された優秀者の作品を集めたもので、どの作品も味があり、独特の世界が構築されています。読後感が爽快なものから背筋が思わず凍るような恐怖ものまで、いろいろな物語がつまった「お得な1冊」でした。

「寝ても覚めても本の虫」(児玉清/新潮文庫)

2007年02月20日 | Weblog
 ベテラン俳優で、長寿クイズ番組「パネルクイズ アタック25」の司会者として人気が衰えない児玉清氏が大の読書好きだということは知っていましたが、まさかこれほどの量の本を読破しているとは知りませんでした……。
 同書はそんな児玉氏が初めて出版した書評エッセイ集の文庫版で、私は新聞の広告で彼の名と心をそそる本のタイトルに惹かれて、さっそく買って読むことにしました。
 幼い頃から講談本の虜となり、次第に文学の世界に傾倒し、有り金を果たして「文庫本」をむさぼるように読み進めていった児玉氏。俳優になってからは、海外のエンターテインメント小説の楽しさを知り、ツヴァイク、フランシス、グリシャム、デミル、クランシー、コーンウェルなど次々と海外の作家にハマっていきます。スパイ小説、犯罪小説、テロ小説、政治小説、ドラッグ小説など、児玉氏は私が読まないジャンルの小説を好んで読んでいることを知って意外でした。
 同書に収録された書評の各編には、児玉氏の好きな作家たちへの愛情がぎっしりと詰め込まれています(雑誌掲載のコラムを編纂したものなので読みやすい)。また、読みたい作家の翻訳本を全部読みつくした児玉氏(学習院大学独文科卒)が、新刊をいちはやく読むために原書を読み始めたことにはビックリ! 英語、ドイツ語、フランス語などを読解する「語学の堪能さ」に感服しました。
 また、「あとがきにかえて」という最後のエッセイでは、「文庫本」が児玉氏の青春そのものだったこと、結婚当初に妻に内緒で27万円もする原書の全集ものを月賦で購入し、不満顔の妻に「女房を質屋に入れてでも買いたい」と暴言を吐いて夫婦間がぎくしゃくしていたこと、学生時代に読んだボロボロの文庫本を妻の強い勧めでまとめて処分したが、そのショックからしばらく立ち直れなかったこと、それ以来、どんな本でも絶対に捨てないと心に誓い、現在、家の中を1万冊以上の本が占拠し、妻に対策を迫られていることなど、「本の虫」ならではのエピソードが綴られています。
 書庫にぎっしりと並べられた読了した本の背表紙を、椅子に座ってゆっくり眺めるのが至福のひとときだという児玉氏。まさに私も同感です!

「小説版 のだめカンタービレ」(高見椎奈/講談社)

2007年02月09日 | Weblog
 フジテレビの「月9」で昨年ドラマ化された「のだめカンタービレ」は、モーツァルト生誕250周年に伴う空前のクラシックブームの波に乗り、高視聴率を記録したようですが、私は見ていませんでした。2004年第28回講談社漫画賞を受賞した二ノ宮知子さん原作の漫画を読んだことがなかったので、「のだめ」といってもいまいちピンとこなかったからです。
 でも、そのドラマの脚本を人気作家・高里椎奈さんが完全ノベライズ化したことを広告で知り、読んでみることにしました。
 音楽大学を舞台にしたコメディ。世界的な指揮者を目指す「千秋真一」と彼にぞっこんの奇妙な下級生「のだめ」こと野田恵の心の成長(+恋の行方)がいきいきと描かれていて、夢中で一気に読みました。
 コミックのノベライズ化とあり、その文体・表現にやや稚拙さを感じますが、十分に楽しめました。