THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「シュガータイム」(小川洋子/中公文庫)

2008年01月26日 | Weblog
 3週間ほど前から過食症の「わたし」は、奇妙な日記をつけ始めた――。青春最後の日々を流れる透明な時間を描く人気作家初期の長篇小説。異常な食欲を見せる女子大生の姉と、小人症の弟が織り成す不思議な物語。柔らかい文体で書かれて、読みやすいです。

「生きっぱなし記 私の履歴書」(阿久悠/日経ビジネス人文庫)

2008年01月21日 | Weblog
  
 ジャンルを越えた稀代の歌謡曲のヒットメーカー・阿久悠氏が亡くなってももうすぐ半年が経とうとしています。年末から彼に関する単行本や文庫が次々と刊行されています。
 その中で、昨年12月に出たのがこの本。癌の手術と米国のツインタワーがテロによって炎上された2001年の「9・11」事件が偶然にも重なった時に書き始められたエッセイ集。「死」を強く意識し始めた彼が、後世の日本人へ遺す「遺言」として、自らの生い立ちから歌謡曲のヒットメーカーとしての地位を確立するまでの半生を、抑制された筆致でつづっている貴重な本です。
 常に「時代」に真正面から向き合ってきた彼は、言葉がどんどん力を失っていく日本と日本人に向けて、何を語り継ごうとしたのか……。 この本を読んで、古き良き時代だった「昭和」をもう一度見直しませんか? 平成生まれの人にも、将来の希望の指針となることは請け合いです。

「温泉文学論」(川村湊/新潮新書)

2008年01月19日 | Weblog
 夏目漱石、宮澤賢治、志賀直哉……名作には、なぜか温泉地が欠かせません。立ちのぼる湯煙の中に、情愛と別離、偏執と宿意、土俗と自然、生命と無常がにじむ。本を持ち、汽車を乗り継ぎ、名湯に首までつかりながら、文豪たちの創作の源泉をさぐる異色の紀行評論。鉄道や温泉ガイドとしても楽しめます。

「いつまでもデブと思うなよ」(岡田斗司夫/新潮新書)

2008年01月06日 | Weblog
 昨年のベストセラーだったこの本。半年間で50キロの減量に成功した男性(オビの写真)がまとめたダイエット本という認識しかなかったが、「食べたものをノートに記録し続けるだけで楽しくやせられる」という彼の主張に引き付けられ、私も昨年末から食事日記を付け始めることにしました。2年前に58キロから2カ月で約9㌔の減量に成功した私も最近、リバウンドで腹部の脂肪が膨らんできているからです。
 そして、この本を読み進めると、ただのダイエットの指南書ではなく、れっきとした「新書」らしい、教養書であることが分かりました。著者の岡田氏が作家・評論家であることを初めて知りました。岡田氏は、なぜデブが社会的に不利であるかということを社会の歴史の観点から紐解きます。第1章では、現代の「見た目至上主義社会」の実情を様々な例をもとに解説し、いかにルックスが大事で、デブが不利であるかを読者に知らしめます。
 第2章からいよいよ具体論。ダイエットは決して我慢と苦痛を強いるものではなく、楽しく知的な行為であり、ロー・リスク、ハイ・リターンの最高の投資であるという考えのもとで、岡田氏の実践過程が公開されます。
 やせるのに必要なのはメモ帳1冊。それだけで運動不要、持続可能なダイエットは始められると岡田氏は言います。そして、重力から解放された後は経済的、社会的成功が待っていると……。
 過去のすべてのダイエット本を無力化する、究極の技術と思想が詰まった驚異の1冊です。太った人だけでなく、やせた人でも十分楽しめて、ためになる本です!