THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「歌謡曲の時代 歌もよう人もよう」(阿久悠/新潮文庫)

2007年12月31日 | Weblog
 「勝手にしやがれ」「あの鐘を鳴らすのはあなた」「ペッパー警部」……。今も人々が口ずさむ、5000を超すヒット曲を作詞し、今年8月に世を去った巨匠・阿久悠。 
 本書は、「歌謡曲は時代を食って巨大化する妖怪である」と語った稀代の作詞家が、過去に作った自作の曲名をタイトルとして、歌手との思い出、創作秘話、移り行く時代を、鋭く、そして暖かな眼差しで描いています。歌謡曲に想いを託し、日本人へのメッセージを綴った、新聞に連載していた99編のエッセイ集です。
 


「ふと、立ち止まって」(中尾勝憲/ブイツーソリューション)

2007年12月29日 | Weblog
 「人が光を光として認識するのは、屋外で満身に浴びている光よりも暗い屋内で雨戸の節穴から射し込む一条の光ではないか。」(本文より)
 この本は、長く教員生活を送られ、退職後は老人施設の守衛などの仕事をされている著者が近年に書き溜めた身辺雑記を1冊にまとめた読みやすいエッセイ集です。今年11月に出版されました。著者と交流を持つ聖路加国際病院の日野原重明氏の推薦コピーと著書へのはがきの文章がキラリと光っています。
 著者と私の亡父は同じ学校に勤めてられており、互いに親しい関係であったことから、私は父の死後、彼とよくお会いして話す機会があり、この本もいただきました。
 定年退職後(約10年前)に受けた献身で難病に侵されていることを医師から告げられた著者は、これまでの人生が一転し、絶望の淵に追いやられます。それから、検査や手術で入院生活を幾度も経験します……。
 本書には、その時に感じた病院や医師への不信感や痛烈な怒り、現代社会への憂いと警鐘、少年時代の思い出などを、自作の短歌を挿入しながら飾りのない文体で綴られています。
 今を生きる人々が忘れていたことや気づかなかったことを教えてくれます。