「作家を目指しているのなら、参考になれば……」と、年輩のある女性から勧められて読んだのがこの本です。
北九州市では森鴎外がかつて小倉に滞在していたことを記念して、平成3年から「北九州市自分史文学賞大賞」を創設していますが、この作品は第2回の受賞作。高齢者の応募が多い同大賞では珍しく、29歳(当時)の女性が受賞しています。
バイリンガルの秘書になることを目指し、親の反対を振り切って2年間という約束でアメリカに留学した女性が回想する、波乱の体験記。息抜きのつもりで大学の体育授業でモダンダンスを学んだことからダンサーとしての道を選び、故郷への郷愁や異国での孤独を感じながら自己を発見していくまでの過程を、飾らない文体でいきいきと描いています。
短いエッセイを連ねたもので、手紙の引用が多く、文学作品としては完成度はそれほど高くはありません。しかし、友達に語りかけるような飾らない文体が読む者の心を引き付け、「読んでいるうちに、フレーフレーと声を出して応援したくなった」と選考委員の瀬戸内寂聴さんは講評に書いています。
彼女が米国に留学していたのは、日本でようやく留学ブームが起きた今からの20年以上前のこと。アメリカ人の日本に対する知識がまだ低かった時代(文明のない野蛮人とも思われていました!)で、彼女はクラスメイトやその親、先生などから馬鹿にされることも多々ありました。しかし、彼女は負けることなく、自分らしい道を切り開こうと前向きに進んでいきます。その彼女のたくましさには胸を打つものがありました。
二十歳の時にハワイに語学留学をしたことのある私は、自分の体験にも照らし合わせながら読みました。