THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「マンガdeキリスト教入門」(春名泰範/日本基督教団出版局)

2010年11月09日 | Weblog
 本書は、日本基督教団の月刊誌「信徒の友」に作者(同教団・新潟教会牧師)が連載した四こまマンガとエッセイの中から38編をまとめたのもの。「宗教はあぶないか」「なぜ聖書を読むのか」「キリスト教とユダヤ教の違いは」などのキリスト教入門から、「祈れないときでも」「月約献金は減らせるのか」「礼拝を休んでもいいのか」といった信仰生活、「死んだらどこに行くの」など死に関することまで、大切なテーマについて取り上げられています。

 私は近くの書店で偶然見つけた本ですが、思ったよりも充実した内容で、キリスト教に関する問題のエッセンスが凝縮されており、読み応えが120%ありました! キリスト教について知らない求道者の理解を助けるだけでなく、信徒の信仰生活の中で生まれる「疑問」などにも回答しており、クリスチャンにとっても勉強になる点が多々ありました。
 
 作者の榛名康則牧師は、子どものころから絵を描くことが好きで、授業中にもマンガつくりに没頭し、教師から「マンガばかり描いているとろくなやつにしかならんぞ!」と叱られていました。中学時代に円形脱毛症に悩み、周りの友達にも去られ、学校では落第生として孤立。そんな中、1人の親友に誘われて訪れた教会の牧師に「君はマンガがかけるんだ。すごいね」と才能を褒めてくれたことに勇気をもらい、教会に毎週通うことに。そして洗礼を受け、周囲の反対を押し切って「マンガ牧師」になってしまいました。

 春名牧師が描くマンガにはどれもユーモアと温かみにあふれています。

「クリスマスの文化史」(岩林ひとみ/白水社)

2010年11月09日 | Weblog
 サンタクロースとは誰? ツリーの発祥は? 初めて作られたクリスマスカードの歴史は? クリスマス料理の定番は?……。「クリスマスの文化史」は、私たちが知っているようで意外と知らないクリスマスの歴史を、クリスマス研究で知られる作者が「正統派」クリスマスの国ドイツを中心に簡明に紹介した本。作者が現地で撮影した写真や貴重な図版も多数掲載されており、ビジュアル的にもクリスマスを存分に楽しめます。

 作者の岩林氏はクリスチャンではありませんが、子どものころに教会の日曜学校に通っていたこともあり、キリスト教に対する興味を持っています。若い時にドイツに留学し、本場のクリスマスを味わって以来、仕事の傍ら、クリスマス研究家になりました。1985年からはほぼ毎年ヨーロッパにでかけ、各国のクリスマスゆかりの地を取材、アンティークのクリスマスグッズの収集も行っています。

 本書では、カトリックとプロテスタントでクリスマスの祝い方が異なっていたこと(のちに融合された)なども具体例を挙げながら詳細に解説されているので、プロテスタント信者(バプテスト)の私にとってはカトリックの考え方も知ることができ、大いに勉強になりました。

 クリスマスをテーマにした興味本位の本はたくさんありますが、このようにキリスト教徒が祝う真のクリスマスの意味や歴史について論じた本は少ない(専門書を除く)ので、本書は貴重な1冊です。

「プラリネク あるクリスマスの物語」(アクセル・ハッケ/三修社)

2010年11月09日 | Weblog
 「どうぞ 歯にやさしく食べやすい  ぼくにプログラミングしてください!ぼくは 強力洗浄力 小さなロボットですが、プログラミングが必要です。」(本文より)
 
 仕事で家を空けることの多い父親がようやく時間の余裕ができ、寝室のベッドに横になっている「ぼく」に語るようにして架空の話が進められていきます。その話の主人公は、チョコレート(プラリネク)の空き箱と洗剤のパッケージ、2本のトイレットペーパーの芯、コルク、針金で作ったロボット。ロボットは、命を吹き込まれて動き出し、奇妙なことばをしゃべり始めます……。

 ドイツの作家 アクセル・ハッケが現代の子どもたちに広く読まれるクリスマス物語として書き下ろした作品。ハッケは「南ドイツ新聞マガジン」の元記者で、未だに戦争を引きずって内なる恐怖を抱えている市井のドイツ人をはじめ、ユダヤ人問題、東西分断といった歴史についての写真入りエッセイなどを書いていました。のちに子ども向けの記事も書くようになり、それがきっかけで生まれたのがこの本です。

 最初はよくありげなストーリーだと感じていましたが、読み進めていくうちに作品に込められた作者のメッセージが伝わってきました。哲学的要素を含んだ作品です。

「グロースターの仕たて屋」(ビクトリアス・ポター/福音館書店)

2010年11月09日 | Weblog
 クリスマスの季節が近づいてきました。。。
 当ブログでは好評に応えて、今年も私が厳選して集めたクリスマスをテーマにした本をいくつか紹介していきます。

 さて、1冊目はクリスマス物語として定番の名作。「グロースターの仕たて屋」(1903年刊)は、ピーター・ラビットの作者であるビクトリアス・ポターが一番気に入っていた絵本です。

 この物語は、仕たて屋が縫いかけの上着を店に置いて帰ったところ、驚いたことに朝にはそれが仕上げられていたという実話にもとづいて書かれたもの。後になって仕たて屋の弟子たちのしわざとわかるのですが、ポターはそれを小さい茶色のねずみたちがクリスマス・イブにしたことという設定に作り替えました。

 50ページほどの短編ですが、心がジ~ンとくる珠玉の作品です。