THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「被爆のマリア」(田口ランディ/文芸春秋)

2006年08月31日 | Weblog
 前回に続いて〈戦争〉関連の本を読んでみました。今回は、人気作家の田口ランディさんが戦後60年を機に、ヒロシマとナガサキの「傷跡」をテーマにして作った連作小説。本書には、4つの短編小説が収録されています。
 はじめの作品「永遠の火」は、結婚式のキャンドルサービスに父親から「原爆の火」を使えと言われた娘の心の葛藤を描いています。「時の川」は平和学習で学校から広島の平和記念資料館を訪れた中学生と被爆した語り部の女性との交流、「イワカガミ」は被爆女性が書いた1冊の本に魅了された女性作家の奮闘と心の成長、表題作「被爆のマリア」は、ナガサキの「被爆のマリア」を心の支えとしているフリーターの女性の内面心理などを描いています。
 戦後60年を過ぎても日本人の心を重く揺さぶる現実、無原罪のマリア像が見つめる現代の「闇」に、「戦争」を知らない世代の作家が迫った渾身の異色作です。

「爆笑問題の 戦争論」 (爆笑問題/幻冬舎)

2006年08月28日 | Weblog
 本屋の平積みコーナーでふと目にとまったのが、この本。青色のカバーに書かれた「爆笑問題の戦争論」というタイトルと「なぜ、日本は戦争をしたのだろう?…」という帯コピーに惹かれました。爆笑問題の本は先月、新潮文庫「文学のススメ」で大爆笑したので今回も……、でも、「戦争」という重くて真面目なテーマなので、ギャグは控えめだろうと思っていましたが、買って読んでみると、プロローグの部分からいきなり太田光のギャグが炸裂!(←不謹慎だろっ!?) 最初から大爆笑してしました(※この本を読まれる人は、人前では読まない方が無難です。こっそり1人で読みましょう!)。
 しかし、本来の内容はいたって真面目なもの。本書は、爆笑問題がさまざまな「歴史」を漫才にして解説してしまう「日本史原論」シリーズの最新刊。日清戦争から太平洋戦争まで日本が過去に体験した戦争について、豊富なデータや写真とともに爆笑問題の2人(主に田中が)が分かりやすく解説しています。
 ただ、帯に書かれている「なぜ、日本は戦争をしたのか?」「日本および日本人とは何なのか」という問題についてはあまり言及されておらず、いささか期待はずれでした。この問題の「答え」は、読者自身に委ねられているのでしょうか……。
 「あとがき」の中で、「戦争」を漫才にしてしまうことにはじめは抵抗を感じていたと太田が書いていますが、テロ事件が世界で相次ぎ、国内でも「平和」が揺らいでいる今、日本が体験した戦争の近代史について体系的にまとめた本書は、1人でも多くの「戦争を知らない」若者に読んでほしい1冊です。

「翳りゆく時間」(浅田次郎編 ・日本ペンクラブ選/新潮文庫)

2006年08月20日 | Weblog
江国香織、北方謙三、阿刀田高、吉田修一、浅田次郎、山田詠美、三島由紀夫の名手7人の珠玉の短編を1冊にまとめた「大人のためのアンソロジー」。テレビや映画など映像ではとても表現できない、小説ならではの世界が楽しめました。読み進めるうちに、それぞれの物語の中にどっぷり浸ってしまい、わずか半日足らずで読み終えてしまいました。
 各作品、読後に余韻が残ります。420円で楽しむ「贅沢な体験」。

「三四郎はそれから門を出た」(三浦しをん/ポプラ社)

2006年08月19日 | Weblog
 なんてセンスの良いタイトルだと思いませんか? 本書は、6月に『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を受賞した三浦しをんによる書評・生活エッセイ集です。夏目漱石の3つの小説タイトルを組み合わせたネーミングは、漱石好きの私の心をくすぐります。
 今回の受賞で私は初めて彼女の名前を知ったのですが、彼女は以前から人気作家にして筋金入りの活字中毒者として知られていたようです。
 本書は、朝日新聞(中高生のためのブックサーフィン「三四郎はそれから門を出た」)のほか、さまざまな雑誌の連載原稿を厳選して1冊にまとめたもので、本の厚さも分厚くて、読みごたえがあります。でも、生き生きとしたみずみずしい文章で書かれているので読みやすかったです。「本」についてだけでなく、自分の生活や家族のことも書いているので、彼女のいろいろな面を見ることができました。
 私も「読書家」を自負していましたが、彼女に比べたらなんのその! 彼女の「活字中毒」ぶりには脱帽です。どんなに天気が悪く、どんなに体調が悪くても、彼女は必ず1日に1度は近所の本屋に立ち寄り、気に入った本を購入。食べる時も、外を歩く時も、喫茶店に行く時も、本を手にしているといいます。「1日の中で本を読んでいない時なんてほとんどない!」という彼女の生活スタイルにはびっくりしました!(彼女はいつ自分の原稿を書いているのだろう???)
 三浦しをん、恐るべし……。いつか、彼女の受賞作も読んでみたいと思います。

「ダ・ヴィンチ・コード 上・下」(ダン・ブラウン/角川書店)

2006年08月12日 | Weblog
本も映画も世界的に大ヒットした「ダ・ヴィンチ・コード」。
本も分厚くて、映画も複雑、賛否両論の声もあり、しばらく敬遠していましたが、知人に薦められて、このたび、やっと読んでみることにしました。
 物語は、ルーヴル美術館館長ソニエールが館内で死体となって発見されるところから始まります。殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大教授のラングドンは、フランス警察から捜査協力を求めら、美術館を訪れるのですが、ソニエールの死体は、グランド・ギャラリーでダ・ヴィンチの最も有名な素描『ウィトルウィウス的人体図』を模した形で横たわっており、死体の周りには複雑怪奇なダイイングメッセージが残されていました。館長の孫娘でもあり、現場に駆けつけた暗号解読官ソフィーは祖父が自分だけに分かる暗号を残していることに気付きます……。
 上・下巻、それぞれ300ページを超える大作ですが、今月1日から50ページを目安に毎晩、少しずつ読み進めていきました。もうはじめのうちからストーリーに惹かれれて、本を読むことにハマってしまい、私もラングドンとソフィーとともに、ソニエールが殺された理由や「聖杯伝説」などの謎を解き明かしているような気分になりました。
 そして、イエス・キリストが結婚していて、今も彼の子孫がひそかに生きているという衝撃的な事実(仮説)に遭遇して、びっくり!!
 この本は、賛否両論はありますが、長く伝わるキリスト教の歴史を大きく覆し、キリスト教の研究者に大きな影響を与える1冊になったことは間違いありません!