THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「7月24日通り」(吉田修一/新潮文庫)

2007年07月27日 | Weblog
 地味で目立たぬOLの「本田小百合」は、港が見える自分の町をリスボンに見立てるのがひそかな愉しみ。異国気分で「7月24日通り」をバス通勤し、退屈な毎日をやり過ごしている。そんな折に聞いた同窓会の知らせ、高校時代一番人気だった「聡史」も東京から帰ってくる。そして2人は再会し、高校時代の「恋」がふたたび……。
 「パーク・ライフ」で芥川賞をとった人気作家の傑作恋愛長編。「7月24日通りのクリスマス」として映画化にもなった作品です。
 私は久しぶりに甘酸っぱい恋愛小説を読み、心地よい気分になりました。吉田修一という作家は、驚くほどリアルに女性の心理描写がうまいです。
 各章のタイトルの由来は、最終章で分かります。

「作家24人の名作鑑賞 私を変えたこの一冊」(集英社文庫編集部編)

2007年07月13日 | Weblog
 大手各社の文庫本の夏のキャンペーンが今年も始まりました。
 集英社文庫では、女優の蒼井優をキャンペーンガールに起用し、「ナツイチ」フェアを展開。今年は、1冊買うと、「ナツイチ」キャラクターをあしらったカワイイ携帯ストラップがもらえるようです。
 本書は、そんな集英社文庫の新刊。「ナツイチ」のラインナップにも入っている。人気作家やタレントが「人生を変えた1冊」を紹介し、その作品を独自の視点で分かりやすく解読したエッセイ集で、若者向けに名作を編纂している集英社文庫「ヤングスタンダード」シリーズのためのPRを兼ねたガイドブックといった感じ(なので、紹介されている作品はすべて集英社文庫に収録されたもの)。
 作家の人って、どんな本を読んで作家になったのだろう。芥川龍之介は、宮沢賢治は、あの人の人生をどのように変えたのだろう。作家になった今、『ふしぎの国のアリス』を、『車輪の下』を、あの人はどんなふうに読むのだろう……。
 この本を読んでいると、いろいろな発見や驚きがありました! タイトルは知っている作品も、読んだことがないものも多く、面白さが倍増しました。

「雨はコーラが飲めない」(江国香織/新潮文庫)

2007年07月12日 | Weblog
 梅雨のこの時期、「雨」というタイトルに惹かれて買ってみましたが、意外や意外、実は「雨」というのは作者が飼っている犬の名前でした!
 濃い栗色の巻き毛をした雨は、オスのアメリカン・コッカスパニエル。作者は雨に人間同士のように接し、一緒に音楽を聴いて、2人だけのみちたりた時間を過ごします。
 愛犬と過ごす日常や過去の記憶を静かに綴る32編のエッセイ。1編をのぞいて、作者が好きな国内外の音楽、アーティストの話が含まれており、音楽評論エッセイとしても十分楽しめます!
 ゆったりとした気持ちになれる江国さんの本は、疲れた身体を心地よく癒してくれます。

「神田川デイズ」(豊島ミホ/角川書店)

2007年07月04日 | Weblog
 根拠のない自信に、過剰な自意識と鬱陶しいまでのナイーブさを抱え、惑い、傷つき、夢を見つけようと上を見ては途方に暮れる…。大学生たちの息遣いと切実な思いをリアルに描く連作青春小説。
 私は先日、NHKの番組「プロフェッショナル」で、4000冊以上の本を担当した人気装丁家・鈴木成一さんがこの本も担当していることを知り、買ってみたくなりました。この本で彼は、若手女性イラストレーターが描いた若者たちのイラストを採用。グロテスクで奇抜な表紙に、私は魅力を感じたのです。
 そんな動機で買ったこの本ですが、読み始めると面白くて、物語の世界にハマってしまいました。最近のトピックや流行がふんだんに盛り込まれており、今の学生たちの「生態」が生き生き描かれています。ユーモア満載で笑ってしまう場面が多々ありますが、文体もストーリー構成もしっかりとした、れっきとした純文学小説です。
 作者の年齢にもビックリ。弱冠25歳にして、かなりの実力派です!

「人は見た目が9割」(竹内一郎/新潮新書)

2007年07月03日 | Weblog
 2005年10月に発刊以来、ベストセラーとして長く売れ続けている新書。そのタイトルに興味をそそられていた私は、ようやく買って読んでみることにしました。
 喋りはうまいのに信用できない人と、無口でも説得力にあふれた人の差はどこにあるのか。女性の嘘を見破りにくい理由とは何か。劇作家・演出家や漫画家としても活躍している作者は、すべてを左右しているのは「見た目」と言い切っています。
 本書は、心理学、社会学からマンガ、演劇まであらゆるジャンルの知識を駆使した日本人のための初めての「非言語コミュニケーション」入門で、顔つき、仕草、目つき、匂い、色、温度、距離など私たちを取り巻く言葉以外の膨大な情報が持つ意味をさまざまなデータを紹介しながら考えており、読み始めるとやめられなくなるほど面白かったです。
 ただ、タイトルから想像していた内容とかなりかけ離れており、少し残念でした。