THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「超訳 ニーチェの言葉」(白鳥春彦訳者/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

2011年01月13日 | Weblog
 みなさんはこの本をご存知ですか? 昨年1月に発売されて以来、若者を中心に人気を集め、75万部を越えるベストセラーになっています。

 ニヒリズムや反宗教的思想といった独自の思想により20世紀の哲学思想に多大なる影響を与えた19世紀ドイツの大哲学者ニーチェ(1884~1900)。彼は「神は死んだ」という主張やナチズムとの関わりを噂される一方で、ほとばしる生気、不屈の魂、高みを目指す意志に基づいた明るく力強い言葉を多数残しているのです。本書には、「一日の終わりに反省しない」「喜ぼう。この人生、もっと喜ぼう。喜び、嬉しがって生きよう」など、ニーチェが残した明るく前向きな言葉をテーマ別に232編が収録されています。

 私は昨秋に行きつけの本屋に平積みされているこの本を見つけましたが、その時はベストセラーになっているとは知らず、分厚い本だったので、手に取らずにスルー。年末に新聞広告を見て、年明けに買い求めました。そして読み始めると、目からウロコの「名言」が目白押して、たちまちハマってしまいました。

「自分を常に切り開いていく姿勢を持つことが、この人生を最高に旅することになるのだ」
「今のこの人生を、もう一度そっくりそのままくり返してもかまわないという生き方をしてみよ」
「死ぬのは決まっているのだから、ほがらかにやっていこう。いつかは終わるのだから、全力で向かっていこう」
「喜ぼう。この人生、もっと喜ぼう。喜び、嬉しがって生きよう」
「一日の終わりに反省しない」「愛する人は成長する」
どの言葉ももっともな内容で、すんなりと心の中に入り込みました。

 編訳者の白取春彦氏は、ベルリン自由大学で哲学・宗教・文学を学び、哲学と宗教に関する解説書の明快さには定評があります。主な著書は『ビジネスマンのための「聖書」入門』『勉学術』『頭がよくなる思考術』『考えすぎない思考術 成功体質になる24の習慣』など。白鳥氏は某地方紙のインタビューで、この本を翻訳するまで、ニーチェについてあまり知らなかったと話していました。

 新年の始まりにこの本に出合えた幸せ。1つ1つの含蓄あるニーチェの言葉を肝に銘じて、明るいポジティブライフを送ろうと思います!

「ドイツ・クリスマスの旅」(谷中央・長橋由理/東京書籍)

2010年12月18日 | Weblog
 もうすぐ待ちに待ったクリスマス。クリスマスを祝う行事は、ドイツによって始まったことをみなさんは御存じですか? 私も最近まで知らず、クリスマスに関する本を読んで知りました。

 今では世界的にどこも似ているものの、ドイツでは11月最後の日曜日からクリスマスの準備が始まり、アドヴェンツクランツの4本のロウソクの1本に火を灯します。街の広場にはクリスマスマーケットと呼ばれる出店が立ち、人々が集まってきます。この本の筆者は約20年前(東西ドイツ統一直後)にドイツを初めて訪れた時に偶然、このクリスマスマーケットに出合い、その華やかさや歴史に見せられ、それ以後、毎年この時期になるとドイツ各地のクリスマスマーケットを見て回るようになりました。本書は、そんな筆者がこれまで現地で見聞きしたクリスマス・マーケットの魅力やクリスマスの祝い方について、豊富なカラー写真と文章で紹介した、見るだけでもワクワクして楽しい1冊です。

 ページをめくるたびに、本の中からクリスマス・シーズンを楽しむ子どもたちやクリスマスの準備をしている大人たちの声や市場で交わされる人々の掛け声が聞こえてきそうな感じがしました!

 「本当のクリスマス」を味わいたい人にオススメです。

「クリスマス・バス マートルばあさんとおんぼろバスの二人」(メロディーメカルーソン/バベルブレス)

2010年12月09日 | Weblog
 物語の舞台は≪クリスマス谷≫という米国北西部の町。この町でたった1つの宿を経営するイーディスは、今年のクリスマス休暇に子供たちが誰も帰ってこないことに落胆しますが、教会員に老いぼれ扱いされるようになった牧師である夫チャールズによる“人を招くこと”を勧める聖句を引用した説教を聞き、ある考えを思い立ちます。それはクリスマス休暇中に見知らぬ人たちを宿に泊らせ、夫婦と一緒にクリスマスを楽しく祝うことでした。

 「クリスマス」という特別な時間を心豊かに過ごすとはどういうことなのか? 牧師夫人イーディスの葛藤と奮闘を通して、ときにコミカルに、ときにしんみりと伝わってくる珠玉のクリスマス・ストーリー。「マートル」という変わり者の年老いた女性客が現れ、いたるところで人々とトラブルを起こし、作者は、イーディスは心をひっかけ回され、身も心もヘトヘトになるのですが、最後にマートルがみんなに大きな「プレゼント」を与える結果になるのです!

 全米ロマンス作家協会が優れたロマンス作品に贈るRita賞などを受賞した現代のクリスマス・ストーリーの名作。「本当のクリスマス」を味わいたい人にオススメです。この作品は「大人向けの童話」に分類されていますが、子ども(小学高学年~)でも理解できますので、クリスマス・プレゼントしても最適かも?


「マンガdeキリスト教入門」(春名泰範/日本基督教団出版局)

2010年11月09日 | Weblog
 本書は、日本基督教団の月刊誌「信徒の友」に作者(同教団・新潟教会牧師)が連載した四こまマンガとエッセイの中から38編をまとめたのもの。「宗教はあぶないか」「なぜ聖書を読むのか」「キリスト教とユダヤ教の違いは」などのキリスト教入門から、「祈れないときでも」「月約献金は減らせるのか」「礼拝を休んでもいいのか」といった信仰生活、「死んだらどこに行くの」など死に関することまで、大切なテーマについて取り上げられています。

 私は近くの書店で偶然見つけた本ですが、思ったよりも充実した内容で、キリスト教に関する問題のエッセンスが凝縮されており、読み応えが120%ありました! キリスト教について知らない求道者の理解を助けるだけでなく、信徒の信仰生活の中で生まれる「疑問」などにも回答しており、クリスチャンにとっても勉強になる点が多々ありました。
 
 作者の榛名康則牧師は、子どものころから絵を描くことが好きで、授業中にもマンガつくりに没頭し、教師から「マンガばかり描いているとろくなやつにしかならんぞ!」と叱られていました。中学時代に円形脱毛症に悩み、周りの友達にも去られ、学校では落第生として孤立。そんな中、1人の親友に誘われて訪れた教会の牧師に「君はマンガがかけるんだ。すごいね」と才能を褒めてくれたことに勇気をもらい、教会に毎週通うことに。そして洗礼を受け、周囲の反対を押し切って「マンガ牧師」になってしまいました。

 春名牧師が描くマンガにはどれもユーモアと温かみにあふれています。

「クリスマスの文化史」(岩林ひとみ/白水社)

2010年11月09日 | Weblog
 サンタクロースとは誰? ツリーの発祥は? 初めて作られたクリスマスカードの歴史は? クリスマス料理の定番は?……。「クリスマスの文化史」は、私たちが知っているようで意外と知らないクリスマスの歴史を、クリスマス研究で知られる作者が「正統派」クリスマスの国ドイツを中心に簡明に紹介した本。作者が現地で撮影した写真や貴重な図版も多数掲載されており、ビジュアル的にもクリスマスを存分に楽しめます。

 作者の岩林氏はクリスチャンではありませんが、子どものころに教会の日曜学校に通っていたこともあり、キリスト教に対する興味を持っています。若い時にドイツに留学し、本場のクリスマスを味わって以来、仕事の傍ら、クリスマス研究家になりました。1985年からはほぼ毎年ヨーロッパにでかけ、各国のクリスマスゆかりの地を取材、アンティークのクリスマスグッズの収集も行っています。

 本書では、カトリックとプロテスタントでクリスマスの祝い方が異なっていたこと(のちに融合された)なども具体例を挙げながら詳細に解説されているので、プロテスタント信者(バプテスト)の私にとってはカトリックの考え方も知ることができ、大いに勉強になりました。

 クリスマスをテーマにした興味本位の本はたくさんありますが、このようにキリスト教徒が祝う真のクリスマスの意味や歴史について論じた本は少ない(専門書を除く)ので、本書は貴重な1冊です。

「プラリネク あるクリスマスの物語」(アクセル・ハッケ/三修社)

2010年11月09日 | Weblog
 「どうぞ 歯にやさしく食べやすい  ぼくにプログラミングしてください!ぼくは 強力洗浄力 小さなロボットですが、プログラミングが必要です。」(本文より)
 
 仕事で家を空けることの多い父親がようやく時間の余裕ができ、寝室のベッドに横になっている「ぼく」に語るようにして架空の話が進められていきます。その話の主人公は、チョコレート(プラリネク)の空き箱と洗剤のパッケージ、2本のトイレットペーパーの芯、コルク、針金で作ったロボット。ロボットは、命を吹き込まれて動き出し、奇妙なことばをしゃべり始めます……。

 ドイツの作家 アクセル・ハッケが現代の子どもたちに広く読まれるクリスマス物語として書き下ろした作品。ハッケは「南ドイツ新聞マガジン」の元記者で、未だに戦争を引きずって内なる恐怖を抱えている市井のドイツ人をはじめ、ユダヤ人問題、東西分断といった歴史についての写真入りエッセイなどを書いていました。のちに子ども向けの記事も書くようになり、それがきっかけで生まれたのがこの本です。

 最初はよくありげなストーリーだと感じていましたが、読み進めていくうちに作品に込められた作者のメッセージが伝わってきました。哲学的要素を含んだ作品です。

「グロースターの仕たて屋」(ビクトリアス・ポター/福音館書店)

2010年11月09日 | Weblog
 クリスマスの季節が近づいてきました。。。
 当ブログでは好評に応えて、今年も私が厳選して集めたクリスマスをテーマにした本をいくつか紹介していきます。

 さて、1冊目はクリスマス物語として定番の名作。「グロースターの仕たて屋」(1903年刊)は、ピーター・ラビットの作者であるビクトリアス・ポターが一番気に入っていた絵本です。

 この物語は、仕たて屋が縫いかけの上着を店に置いて帰ったところ、驚いたことに朝にはそれが仕上げられていたという実話にもとづいて書かれたもの。後になって仕たて屋の弟子たちのしわざとわかるのですが、ポターはそれを小さい茶色のねずみたちがクリスマス・イブにしたことという設定に作り替えました。

 50ページほどの短編ですが、心がジ~ンとくる珠玉の作品です。

「わたしが正義について語るなら」(やなせたかし/ポプラ社)

2010年10月25日 | Weblog
 アンパンマンの生みの親・やなせたかしさんが、思春期を迎える未来のおとなたちに伝える「正義」の話。ストレートなテーマを、真摯に、実体験を交えて語りかけます。

 やなせさんは序章で「人生には、後から考えると分かることがたくさんあります。中学生くらいの時には、正義についてなんて何も考えていませんでした。(略)でも、アンパンマンを書くようになって、ぼくがはっきりと伝えたいと思ったのは本当の正義だったのです」と書いています。

 やなせさんはこの世の中に必要悪もあるとした上で、自らが考える「正義」について詳しく説明。「自分の仕事」を得るための心構えなども伝授しています。

 各界の著名人が「未来の子ども」に生きるための指南を語るポプラ社のシリーズは昨年9月に創刊されました。私は偶然見つけて、面白そうだったので買ってみましたが、大人が読んでも十分楽しめます。

「モネの庭へ ジョヴェルニー・花の桃源郷」(南川三治郎/世界文化社)

2010年10月25日 | Weblog
 日本で数多くのファンをもつクロード・モネ。ほとんどのモネの作品を生み出したジヴェルニーにあるモネの家、モネの庭だけに初めて焦点をあてたモネファンならずとも必見の1冊。美しい庭&絵画の写真と文章でモネの生涯を綴っています。

 パリに生まれたモネは、1870年の普仏戦争勃発以降、ロンドン→パリ→アルジャントゥイユと住まいを点々としますが、ヴェトゥイユからポワシーへ移る間、彼の家庭生活には大きな変化がありました。モネのパトロンだった男性が破産し、債権者から逃れるため、5人の子どもと身ごもった妻とを残してフランス国外へ逃亡したのです。1878年、モネは彼の妻と6人の子どもを引き取って共に暮らすことに。モネの妻カミーユには1878年3月に2人目の子であるミシェルが生まれたばかりで、モネは合計10人の家族を養っていくことになりました。モネは大家族を引き連れて、終の住処として「芸術村」のジヴェルニーに移り住み、ここでたくさんの名画を生み出しました。

 私は「モネ」というと、繊細で淡いタッチの画風、自身の庭にある池に浮かぶ睡蓮を描いた連作がある……などのイメージを持っていましたが、荒くて力強いタッチで描かれた作品も見られ、彼の技量の幅広さを感じました。

 また、モネが風景画に徹し、村人の姿を決して描かなかったことや、モネが広い土地を購入して「睡蓮の池」を造ったこと、村の原風景やモネの庭が今も守られていること、日本への関心が強く、浮世絵のコレクターだったことなどを知ることができました。

★北九州市立美術館・本館(戸畑区)では10月9日から11月28日まで「モネとジヴェルニーの画家たち」展が好評開催中! (本書は会場の売店で購入しました)

「ピーターラビットのおはなし」 (ビクトリアス・ポター/福音館書店)

2010年10月25日 | Weblog
 子どもから大人まで、世界中の人々から愛され続けている「ピーターラビット」の物語。2006年には、生みの親であるビアトリクス・ポター(1866~1943)の半生が「ミス・ポター」として映画化され、私も見たことがあります。でも、私はこれまで彼女の作品を読んだことがなく、下関市立美術館できのうまで開催されていた「ビアトリクス・ポター展 ~イギリスの自然を愛し、ピーターラビットを生んだ画家~」展へ足を運んで、今回初めて「ピーターラビット」の世界に触れました。

 イギリス・ロンドンの裕福で厳格な家庭に生まれたポターは、幼少の頃から絵を描くことが大好きで、飼っていた様々な小動物や、 避暑地として訪れた自然豊かな湖水地方の風景、そこで目にした動植物や昆虫をスケッチし、水彩で描いていました。それらの絵画はいずれも対象を正確に写実するという博物学的な探究心に裏打ちされていたのです。ピーターラビットをはじめとする愛らしいキャラクターや魅力あふれる絵本は、こうした丹念な自然観察と自然への深い愛によって生まれました。
 
 1893年9月4日にビアトリクス・ポターが元家庭教師の息子に宛てた絵手紙が原型の「ピーターラビット」の物語は、1902年の「ピーターラビットのおはなし」から全23作。シリーズの累計発行部数は、全世界で1億5千万部を超えています。

 本書は、ポターがかつての家庭教師の幼い息子、ノエル・ムーアに出した絵手紙を、本にして出版するために書き直したものです。