Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

2.北野天満宮

2015-10-18 00:33:51 | 京都百話

 

今出川通りに面した入り口から参道を進むと、ゆるーく右にカーブしていく。
左右には寄進されたものであろう、大きさがまちまちの灯篭が建っていて社殿へと誘う。

修学旅行生が必ずや訪れるといわれるこの神社も、朝が早いからなのか、今は誰もいない。
時々、散歩中の人とすれ違うくらいだ。

参道を進んでいるとところどころに置かれた牛の像が気になる。
ブロンズのものから石のものまであるのだが、どれもドッシリと座った姿をしている。
撫でたくなる高さにあるので思わず撫でてしまったのだが、皆同じことをするらしく、撫でられた証の光沢がある。

そして梅。
境内には梅園まであるが、残念ながらまだ蕾。
日のあたる場所から少しずつ咲き始めていた。


この神社に祀られているのは菅原道真公。牛も梅も彼由縁のものだ。
平安時代に異例の出世をとげてまで上り詰めた道真公は藤原氏の謀略で左遷させられたのち、遠く北九州の大宰府にて果てた。
彼の魂は怨霊と化し、祟ったために祀り鎮めたのがこの神社の始まりである。

現在では学業の神様として全国の学生に信仰されている。同じ人でも、神様でも見方によっては恐ろしくもなるし、尊くもなるのだ。


1.京都路

2015-10-17 23:20:31 | 京都百話






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 




闇夜を走る小田急線の車内でじっくりコトコト揺られながら、目指しているのは終点、新宿だ。
二十二時をまわった頃の車内は普段の喧騒も嘘のように空いていて、少し寂しい。

夜行での旅と言うのはいい。
一度寝て、リセットした状態から旅に挑むのではなく、日常と地続きの状態から旅は始まる。
気持ちが日常生活から非日常的な旅へとゆるやかに切り替わっていく。

毎日のように帰宅時に眺める闇夜の多摩川。
車窓から見る大きな川は一日が終わる「おかえりの風景」。

しかし今日だけは「おはようの風景」だ。
世間では相変わらずの一日が終わろうとしているというのに、何処か遠くを見ている自分がおかしい。
すれ違う疲労と安堵を詰め込んだ下り列車には、いつもの自分がいるような気がした。


夜の湘南モノレール

2015-10-17 22:07:57 | 駅と鉄路



大船駅と湘南江の島駅間、6.6kmを結ぶ湘南モノレール。
鎌倉山周辺の鉄道空白地帯の通勤通学輸送と江の島をはじめと観光客輸送を目的に敷設された路線です。
しかしながら、現状は通勤通学利用者がほとんどであり、観光客をはじめとする他地方の人にはあまり認知されていないようです。

このモノレールは懸垂式と呼ばれて軌道が車両の上部に位置している珍しいタイプ。
日本では他に千葉都市モノレールと上野動物園内のモノレールしか例がありません。

鉄道や他の交通機関は車体の下に軌道なり路線が存在するため安定感がありますが、懸垂式モノレールでは車体が吊り下げられているため空中に浮いているような感覚です。
そのため、車窓からは直下に建物や道路が広がっている光景も目にすることができます。

沿線は山が多いため、路線は急勾配の連続。
最高速度の75kmはモノレールとしては速い方で、ちょっとした遊園地のアトラクションのよう。
車窓からは天気が良ければ富士山や相模湾を望むことができるのは楽しみのひとつです。


昼間の乗車も楽しいのですが、醍醐味はやはり夜。
前世紀の人々が夢見た近未来交通のような、メタリックなフォルムの車両が一層映えて見えますし、駅や軌道もなんだか幻想的です。

深沢の夜景を横目に、どんどんと高度を上げながら闇を裂いていく光景は何処か銀河鉄道のようでもあって、しばしの異空間旅行へと誘われていきます。

全線乗り通しても14分という短時間コースなので、寂しさの深淵に落ち込むことなく終点に到着。
このちょっと物足りなさを感じるような、乗車時間もまた絶妙で、気軽何度でも出掛けたくなってしまいます。





今回は湘南江の島駅から深沢駅までを途中下車します。





湘南江の島駅ホーム。
夕方から夜間は大船発湘南江の島駅行きの列車が通勤通学客で混雑します。
途中駅でほとんどの人は降りて、終点までの乗車している人はごくわずかなようです。

逆に大船駅の列車を待っている人はほとんどいません。
江の島の最寄り駅といっても、夜は静かな終着駅です。

ホームに停車中の車両はシルバーに赤いライン。
メタリックな感じと配色は、どこか特撮のメカのようでカッコいいです。









一部の車両を除いて、座席がクロスシートになっているところも旅情を盛り上げてくれます。

湘南江の島駅を出ると、すぐにトンネルに入りますが、トンネル内は急勾配・急カーブ区間なので、車体がうねるよう上下左右に大きくうねります。
後方の車両から眺めていると、前方の車両が半分以上見えなくなったりします。
すごいカーブです。








勾配を上りきると、片瀬山駅に到着。
住宅地の末端に位置し、閑静な無人駅ですが、列車交換が行われます。

1面2線の簡素な駅ですが、車両が並ぶと無機物の作り出す冷たい近代的な雰囲気があります。
列車交換が終わると、それぞれの列車が闇に消えていきました。











西鎌倉駅は近年バリアフリー化が行われた行われた駅で、無人駅ですがホームに待合室があったり改札や券売機があります。
周囲には鎌倉山などの高級住宅街があるためか、利用者は多いようです。

駅前にはコンビニエンスストアもあります。




 

駅を降りて、湘南江の島駅方面に歩くと、上空の立派な軌道を眺めることができます。

周辺はどこにでもある住宅街の光景なのですが、上空を貫く建造物だけが異質。


 

 

歩道橋の上から、もう少し近い位置で眺めることができます。
軌道の下を車両が通るため、軌道は結構高い位置に造られていることがわかります。

駅付近までは自動車道路の上空を走っています。








大船行きの列車がやってきました。
湘南モノレールでは平均7,8分に1本の列車が走っているようです。

車両が懸垂している姿は、見慣れていないと不思議な感覚です。

 

 



西鎌倉駅を出ると、鎌倉山トンネルを抜けて、低地にある湘南深沢駅まで一気に勾配を下ります。
駅間隔も非常に長いので列車も結構なスピードを出します。

トンネルを出ると進行方向左手の視界が開けて、街並みが見えてきます。
県道32号線沿いに広がる住宅地と、遠くには藤沢の市街。昼間には山並に富士山の姿も望むことができます。
この区間の車窓は湘南モノレールの車窓のハイライトでしょう。








湘南深沢駅も住宅地に程近く、利用者の多い駅です。
深沢付近では道路の上空の比較的低い位置を走行するためか、街灯や信号機が通常より低いつくりになっています。

街の風景に溶け込んだモノレールがおもしろいです。








湘南深沢駅から鎌倉山へと上っていく列車は、結構速度を出しています。

地上の渋滞を見下ろして、すいすいと進みます。

 

  

沿線の湘南ボウルの裏手には湘南モノレールの深沢車庫があります。
数本の車両が待機していました。

人気のない人工物は少しだけ不気味ですが、美しくもあります。


車庫の下は駐車場になっており、地上と上空、合わせて乗り物の仮眠場所のようになっているのが微笑ましいです。
それにしても、このモノレールはずっと重力に逆らっていると思うと不思議です。

 


北鎌倉探索 その2(八雲神社)

2015-10-04 23:24:47 | 鎌倉日和

円覚寺踏切を渡ったあとは、北鎌倉駅の下りホームに沿った狭い道を北上します。
横須賀線の車両は15両編成と長いので、しばらくの間はホームと並走です。

左手にはオシャレな工房などもちらほらと見受けられます。
どれも新しそうなので、ここ最近できたのでしょうか。



 



ホームが途切れるころには、小さな素掘りのトンネルが現れます。

看板が多く建っており、「落石注意」や「車両通行不可」と書かれている一方で、「貴重な文化財です」と書かれています。

この小さなトンネルは、今後の駅前再開発のため壊される予定ですが、相当に歴史のあるものでもあり、保存と破壊で意見が分かれていました。
しかしながら、訪問後の2015年の4月からこのトンネルは通行止めとなり、いよいよ開削されてしまうようです。

多少不便ながらも、ここにしかない景観に愛着を感じていた方も多いのではないでしょうか。
駅前という立地ながら、21世紀まで残されてきたことがすごいです。






トンネルを過ぎれば、また線路に沿った普通の道に戻ります。
右手に急な石段があり、高台に鳥居が見えたので、誘われるように登ってみると、八雲神社と呼ばれる小さな神社でした。

南西向きの明るい神社ですが、どうやら歴史は古いらしく、この地で疫病が流行した際に京都の祇園社を勧請したことにはじまると言われています。
そのため、江戸時代までは牛頭天王を祀っていましたが、現在は素戔嗚を祭神としています。
 

 



境内には本殿のほかに、もう一段高くなった場所があって、そちらの方が歴史が濃そうな匂いがします。

左手にある大きなクスノキは、太い根を露わにして、石段を押しのけるほどの生命力。
階段を上がった場所には摂社ほか、碑文がいくつか。






鳥居の左手には「安倍清明 神君」と書かれた立札があります。
この目の前には鹿島神宮の要石を彷彿とさせる大きな石が埋められていますが、これを「清明石」として祀っているそうです。

「清明石」は知らずに踏むと足が丈夫になると信じられてきた石で、昔は近隣の道路に埋まっていたと言われています。
またこの石は、故意に踏むと祟りがあるとも言われているそうです。

清明は安倍晴明のことだと言われているそうですが、この北鎌倉の地には清明にまつわる地がいくつか残されているのです。
平安時代中期の陰陽師として知られる安倍晴明が、なぜ鎌倉で伝説化しているのか。
またなぜ晴明ではなく、清明なのか。不思議です。

 



この神社にはさらなる文化財があるということで、一度境内を出て、清明石や摂社のある場所の裏手に回ります。
境内にはよく日が当たりますが、こちらは薄暗いです。

道路から伸びる細い路を入ると、切り立った岩肌にいくつかの石碑が並んでいます。






ここにならぶ石碑は庚申塔は寛文5年造立の鎌倉最古のものとして知られているそうです。

庚申塔とは中国道教に影響を受けた民間信仰です。
この信仰では、体内にいる三尸という虫が、60日に1度、身体から出て天に昇り、その人の罪を告げて寿命を縮めるとされる「三尸説」をもとに、
三尸が体外へ出るとされる日は、虫が外へ出ることができないように、儀礼を行うなどして寝ずに過ごしていました。
庚申の日の徹夜は、人々が集まって行われ、地域や共同体の講として発展しました。

塔を建てるのは、庚申講を3年18回行った記念に建てられることが多いようです。

各地域に根差した庚申信仰は多岐にわたり、庚申塔に刻まれているものも様々です。
例えば、庚申の「申」の字が猿に繋がるとして三猿が彫られたり、本尊である青面金剛という神を彫ることがあります。

庚申塔はある程度の歴史がある地域では簡単に見ることができるのですが、江戸時代前半のものは珍しいそうです。



 

 

庚申塔から先に進むと、本殿の手前まで戻って来ることができます。
西に目を向けると、富士山の姿も。

そのまま、階段を下りて北鎌倉駅へと戻ります。



北鎌倉の名もなき路散歩。
表通りを歩くだけでは出会うことのできない、隠れた風景たち。
また、禅寺のイメージの強いこの町に住む人々が紡いできた、小さな神々たちにも出会うことができました。

観光地で感じる普段の生活。

いつでもどこでも、人々は普通に暮らしています。

観光地図に頼らない、何に出会うかわからない散策も楽しいです。


北鎌倉探索 その1(路地裏)

2015-10-04 00:40:41 | 鎌倉日和



冬の寒さも峠を越した、2月の上旬。
日差しが少し暖かい平日の午前中に、のんびり鎌倉さんぽ。

今回はJR横須賀線、北鎌倉駅周辺を歩きます。

北鎌倉の有名どころの寺院といえば円覚寺に建長寺、浄智寺。
どちらも鎌倉五山に指定された格式高いお寺です。

平日といえども、横須賀線の車内は観光客がたくさん。
その半分くらいは北鎌倉の駅で降りました。

東京方面からは鎌倉中心部より北鎌倉駅の方が手前にあるため、多くの人は午前に北鎌倉から見てから鎌倉へ向かいます。
そのため、朝から北鎌倉は賑わっています。

有名な寺院は以前に参拝したことがあるので、今回は街歩きを楽しみます。
人混みを避けるようにして、駅舎から外へ出ると、目の前の鎌倉街道を横断して路地へ入ってみます。






鎌倉には、路地がたくさんあります。
路地の魅力は、表通りからその全貌が把握できないところです。

北鎌倉駅前から続くこの路地も、車は通ることのできない小さな路で、家々の間を縫いながら進みます。
生け垣や竹垣が美しいです。

観光地は周囲にありませんから、通るのは地元の人ばかり。
その落ち着いた雰囲気も素敵です。






路地の一角に、ぽつんと佇む石塔があります。
お供えもあるので、現在も信仰されているのでしょう。

のちに調べると、この石塔は「お茶ぶきさん」あるいは「お茶ぶき様」といい風に霊験のある神様だそうです。
そんな神様は今まで聞いたことがないので、地域に根ざす民間信仰なのでしょう。

風邪を引くとこの神様に祈って、治るとお茶をお供えするのが習わしだそうです。

辻に祀られる地蔵菩薩や道祖神とは異なり、路地に祀られるというのが珍しいですね。


 



路地を抜けると、神社へと続くゆるやかな上り坂に突きあたります。

住宅地ですが、非常に緑が多いです。
神社に突き当たると、道路は迂回するように神社の右手を回って奥へと続いていますが、ここでUターン。







神社は山仲稲荷神社というらしく、比較的詳細な鎌倉情報誌にも載っていない地元密着のお稲荷さんです。
こんもりとした塚のようになっていて、中央には朱色の社が建っています。

注連縄や手作りの灯籠などは真新しく、現在でも大切に守られていることが伺えます。

立地といい、雰囲気といい、小ぢんまりとしていますが非常に落ち着く場所です。







神社の前で振り返ると、鎌倉街道まで道が続いています。
宅地の木々が生い茂っているため、道に木陰を提供しています。

鎌倉街道南下して先程の駅前を通り過ぎて、円覚寺の境内に入ります。






円覚寺の入り口は鎌倉街道に面しており、参道両側には白鷺池が残されています。

池の表面に少しだけ氷が張っていました。



境内の途中に横須賀線の線路が横断しています。
明治時代に国鉄が横須賀軍港への輸送手段として横須賀線を敷設する際に境内は分断され、白鷺池も以前より小さくなってしまったそうです。

今となっては参道を列車が横断するこの風景も鎌倉のひとつの風景として私は嫌いではないですが。

踏切を渡って階段を上がれば、円覚寺の拝観受付。
今回は左に折れて、線路沿いの道を歩きます。

反対に右へ折れて線路沿いを進むと、明月院や建長寺へ至ります。




つづく