水かさを増した宇治川を渡って、近代的な建物の京阪宇治駅から京都中心部を目指す。
四両編成の可愛らしい列車に乗って終点の中書島まで行く。
渋めの京阪電車のカラーが地味で好き。京都に行くと乗りたくなってしまう。
中書島で特急に乗り換え、祇園四条で下車。
京都市街に入ると京阪は地下へと潜る。
出口は四条通にあり、一気に繁華街である。
八坂神社に向かって様々な店舗が並ぶ。
反対側は鴨川だ。
四条通から花見小路に入ると町家が軒を連ねる京都らしい景観に変わる。
石畳も丸ポストも雰囲気を盛り上げるが、この道はやたら車が通るので怖い。
路地へ入ると静かに雰囲気を楽しめる。
路地や塀を楽しみながら南下すると、やがて安井金毘羅宮に着いた。
ここは縁結び・縁切りにご利益のある神社として知られている。
祭神の一人、崇徳天皇が讃岐に流された際に欲を断ち切って籠ったことに因み、
断ち切り・縁切りの信仰に結び付いたといわれている。
境内には縁結び・縁切りに関連する不思議なものがあるというので探してみる。
あった。
不思議な形をした石である。
名前は「縁切り縁結びの碑(いし)」というらしい。
碑といってももはや石の姿は見えず、中心に穴がある大量の形代の塊のようである。
ナウシカに登場するオームのようにもぞもぞ動き出しそうな姿をしている。
ここでは
縁切り・縁結びの願い事を形代に書き、まず碑の穴を表から裏へ潜り悪縁を断ち切り
裏から表へ潜り抜け良縁を結び、最後に形代を碑に貼って祈願するという。
碑の形代には「あの人と結ばれますように」という微笑ましいものから
「あいつさえいなければ」というような身震いをするようなものまでがべったりと貼られている。
そう思うと、生きていく中で常に絶えることのない人間関係の中で、縁結びと縁切りは非常に近いものであることを知る。
はたして皆、形代に書いた願いと裏腹にもう一つの願いを秘めてはいないか。
期待と苦悩入り乱れた欲が渦まく碑に少しだけ身震いをした。