ブログよりも遠い場所

サブカルとサッカーの話題っぽい

【ラノベ】学戦都市アスタリスク 01.姫焔邂逅

2012-09-25 | ライトノベル
学戦都市アスタリスク 01.姫焔邂逅 (MF文庫J) 学戦都市アスタリスク 01.姫焔邂逅 (MF文庫J)
価格:¥ 609(税込)
発売日:2012-09-22

 読了。

 ハイハイハイ、絵師が『IS』のokiuraさんってことで、学園バトルモノらしきあらすじを読んで「コレ『IS』じゃねーか!」とツッコミ入れようと思ってた君ー僕もそうですよー
 しかしまあ、蓋を開けてみれば『アスタリスク』はまったくの別物でした。当たり前ですが。
 結論から言うと、とても面白かったです。コレはノータイムで次巻の購入を決めるレベルでした。
 このへん、弓弦イズル先生への偏見が多少なり含まれているのは否定しませんけど、『IS』の1巻よりずっと完成度が高くてキャラクターに好感が持てます。あ、あと、文章レベルも明らかにこちらが上でした。

水上学園都市“六花”。通称アスタリスクと呼ばれるこの都市は、世界最大の総合バトルエンターテイメント《星武祭》の舞台として名を馳せている。六つの学園に所属する《星脈世代》の少年少女が、煌式武装を手に己が願いをかけて覇を競う――天霧綾斗もそんな学生の一人。星導館学園の生徒会長クローディアの誘いを受けて六花を訪れた綾斗は、転校早々《華焔の魔女》ユリスの怒りを買い、決闘をすることになってしまう。「大人しくしていればウェルダンくらいの焼き加減で勘弁してやるぞ?」「……それは中までしっかり火を通す気満々ってことだよね?」ところが決闘の最中、ユリスを狙う凶弾が放たれ――? 最高峰の学園バトルエンタメ、ここに開演!

 以上、公式HPから引用させて頂きましたが、あらすじはこんな感じになっております。

 ここだけの話、僕は普段、購入前に公式のあらすじを読まないんですが、1巻読了後に見ると「うわー、まさしくこんな内容だったなあ」と思えるあたり、実に正しく「あらすじ」になっているんじゃないかなと。つまり、1.学園バトルモノであり2.国際色豊かな登場人物たちが3.造語満載の世界観で、ラブったりコメったりする「要素」が詰め込まれた作品ですね。
 ぶっちゃけ、どの「要素」もラノベには欠かせないというか、必要不可欠すぎて逆にありふれているものなんですけど、だからこそ僕は「ありふれた要素をどのように味つけできるか」という部分が、他の作品との〝差〟を生み出すと思っております。そもそも要素の部分で〝差〟を生み出せる作品なんて滅多にお目にかかれませんし、奇をてらえば良いというわけでもありませんので。

 で、具体的にどういう点に好感を持ったかというと、とにかくキャラクターの造型に気を遣っているのが伝わってくるなあと
 一例として、ひとつひとつの展開に、しっかりとキャラクターの「動機」を設定している、というのがあります。それによって、不自然だったり、勢いまかせだったりといった「フィーリング展開」になっていないのですよ。コレ、最近のラノベでは珍しいです。
 例えば、主人公である綾斗は、ヒロインの一人であるユリスとの出会ったときに彼女の着替えを目撃してしまいます。まあ、ラノベやエロゲではお約束な〝出会い〟なんですが、このときのユリスの行動が実に面白い。
 テンプレ的な展開としては、着替えを見られたヒロインが怒りにまかせ、悲鳴をあげながら主人公をぶん殴ったりするシーンですが、ユリスは照れて焦りはするものの悲鳴をあげたり、いきなり威力を伴った行動には出ません。かといってなぁなぁで済ませるわけではなく、どういう理由で綾斗が着替えをしているところに乗り込んできたのかというのを、まずはキチンと問いただして聞き出します。
 その後、綾斗の説明を聞いたユリスは納得したものの、「それはそれ」ということで、綾斗の過失の責任を問うためにあらすじにある決闘へと繋がるわけですが、結果的に「着替えを見られたことによる諍い」というところに帰結するのは同じでも、過程をどのように描くかという部分で読者の受ける印象はまったく違うものになります。キャラクターのその場の感情任せで「なんとなく(フィーリングで)」テンプレ展開になだれ込むのではなくワンクッションを置いたことで、少なくとも僕は綾斗やユリスというキャラクターに好感を抱きました。
 他にも、綾斗が自分の力を使うことを決意する流れだったり、ユリスがアスタリスクに身を置くことになった経緯だったり、すべてにしっかりとした理由(=キャラの動機付け)があるのはワリとスゴイことだよなと思ったり。
 コレがホント、できそうでできないことなんです。もしくは、できたつもりになっているけどできていないっつー感じ。
 あと、つけ加えておくと、どのキャラクターも好感持てるタイプなので、ちょっとした鞘当てがあったりするとかなりニヤニヤできます。1巻の時点ではユリスとコンビを組むことになりましたし、すでに好感度MAXっぽい幼馴染みも登場していますし、セシリアっぽい生徒会長は好意的に接してくるしということで、ハーレムモノとしても楽しめそうなのが嬉しかったり。これくらいしっかりキャラクターを描き分けられるなら、2巻以降に出てくるであろう新ヒロインにも期待しちゃいます。
 また、こうしたキャラクター造型に対する気遣いは、作品の各種設定にも現れていて、学戦都市というものが世間ではどういう存在として扱われているのかとか、危険があるのに学戦都市に人が集まるのはどうしてなのかとか、学生同士のいざこざに警察機構が手を出さない理由だとか、読んでいて意外に感じるほど細かく設定されていました。
 あとがきで作者の三屋咲さん自身がおっしゃっているように、トンデモなく大風呂敷を広げた設定ですけど、1巻を読んだ限りでは大きな破綻もなく、「この調子なら、これから先も整合性を取りつつ物語を進めてくれるんじゃないかな」と期待感を持てる内容になっていたと思います。
 唯一難があるとするなら、上に挙げた要素の三つ目、造語満載ってあたりでしょうか。
 ただでさえ作品オリジナルの固有名詞の数が膨大なのに、そのほとんどが特殊な読み方をするので(落星雨=インベルティア、星武祭=フェスタなどはほんの一例)、厨二アレルギーみたいな人にとっては苦行になるかもしれません。そのへん大好きって人にはご褒美ですけど、必殺技名とかは僕もワリときつかったです。

 とそんな感じで、期待の新作が始まりましたということで一つ。