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サブカルとサッカーの話題っぽい

【ラノベ】ミスマルカ興国物語 エックス

2012-12-29 | ライトノベル
ミスマルカ興国物語 エックス (角川スニーカー文庫) ミスマルカ興国物語 エックス (角川スニーカー文庫)
価格:¥ 630(税込)
発売日:2012-11-30

 読了。

 実に満足! 非常に面白かったです!

 今回はナンバリング通りに進めば11巻のハズだったんですけど、ひとつ間を置くようなエピソードということで『エックス』とつけた……のかな? あとがきなどでは、そのへんに言及されていなかったので推測するしかありませんが。
 ただまあ、読み終えてみるとタイトルに納得というか、「番外編ではないけど本編に組み込むのは少し不適」みたいなボーダーライン上にあるエピソードだったので、これでよかったんじゃないかなという感じで。
 んで、結論から先に述べますが、今回はマヒロをリセットするための話だったと僕は思います。
 誤解を恐れずに言うと、1巻、2巻のころの(それこそルナスが見初めたころの)マヒロはすでに存在せず、今の「マヒロというキャラクター」には、10巻までの展開でブレにブレまくってボヤけてしまっている部分がありました。
 ぶっちゃけどんどん小者化してんじゃねーの、みたいな。しかも、マヒロの得体の知れないキャラというのは、『ミスマルカ興国物語』という作品においては肝になる要素のひとつなので、それがツマラナイ小者になっちゃー台無しなわけですよ。
 おそらく林トモアキさん自身も落としどころを決めかねていて、だからこそ今回こういう形でマヒロをリセットしたんじゃないかなと。そして1巻のころのマヒロを再び物語の中心に据えることで、ここから先の展開を面白くしやすくする舞台を整えたんじゃないかと思いました。
 以下雑感。

・三皇女がヒロインすぎて困る。久しぶりにジェスの名前が出てこなければ、ついうっかりユリカもハーレム要員だと思ってしまうところだったぜ。←

・今回もルナスが可愛すぎて困る。ちゅうか、周囲は「全裸=マヒロだと知られたらルナスはブチ切れる」と予想しているところ、「それがどうした」とばかりに受け容れてみせたのを見て彼女がメインヒロインであると確信しました。しかし、マヒロの第一の理解者としての立ち位置はシャルロッテが断固として譲りませんね。なんか今人気投票したらルナスとシャルロッテがワンツーきそうな気が。

・帝国編が進むにつれ、どんどん帝国が好きになってしまうのは僕だけではないハズ。最初は敵国だったのに、中に入るとこんなに印象が変わるのかと。一筋縄ではいかないところは共通していますが、ぶっちゃけ中原よりずっとマトモで過ごしやすそうだよなあ。

・全裸絡みのアレコレについては、「勢いまかせだなー」と思うところは多いですが、納得できる範疇だったので無問題。それより帝国が滅びるかどうかの瀬戸際に追いつめられていたというのが驚き。今回こういう話を書いたからには、そろそろ西の魔王が動きはじめてもいいんじゃないかなと思ったりも。いくら面白い作品とはいえ、遅々としてメインストーリーが進まないようでは困るので。

 つーわけで、続きも楽しみですということで一つ。
 年二冊ペースなのがつれー。待つのがつれー。


【ラノベ】僕は友達が少ない CONNECT

2012-12-28 | ライトノベル
僕は友達が少ない CONNECT (MF文庫J) 僕は友達が少ない CONNECT (MF文庫J)
価格:¥ 609(税込)
発売日:2012-12-21

 読了。

 今回は番外編というか、『CONNECT』というタイトルが示す通り、これまでとこれからを繋ぐ物語でした。既存エピソードの舞台裏だったり、様々な裏設定が明かされたりする、早い話が尺稼ぎのワリとどうでもいい話ということです
 まあ、こんなふうに書くくらいなので皆さんお分かりだと思いますが、僕は今回の『CONNECT』はまっっったく楽しめませんでした(´д`)
 や、8巻の「ラノベじゃ子供先生とか珍しくなくてもリアルであるわけねーだろwwww」みたいなノリもかなり冷めましたけどね。今回、理科に「小鷹先輩をヘタれと言うやつらはいるだろうけど僕ら以外でそんなことを言うやつは許せない」って言わせて(思わせて)しまうノリは、正直メタすぎてついていけませんて。
 どこまで意図してやっているのか僕には知りようもありませんが、考えられ得る批判を先回りして言い訳するような台詞をキャラに吐かせるのは個人的には好きではありませんし、それがギャグではなくシリアスなものとして扱われてしまうと寒気すら感じます。
 ちゅうか、何冊か前から『はがない』ってそんなネタばっかになってるんですけど大丈夫ですか? かなーり作品クオリティが下がってると思うんだけどなあ。
 ぶっちゃけですね、8巻で平坂さんは「これまでの『はがない』」というものを否定し、ちゃぶ台をひっくり返したに等しいわけで、その続きである『CONNECT』では、「これまでの『はがない』」とは異なった方向性の面白さというものを読者に提示しなきゃいけなかったと思うんですよね。
 ですけど、果たして今回それを成し遂げたかというとすごく微妙なところで、たしかに(メインキャラではないとはいえ)こういう雰囲気のラノベの作中で性行為に及んだことを仄めかすような描写があるのは「これまで」とは違いますけど、総じて「で?」って言いたくなるようなエピソードばかりだったので困ってしまいますよ。
 もーホント、全部否定したくなっちゃうんですが、理科や幸村がどういう家庭環境で育ってきたのかとかマジでどーでもいいッスわwwwwwいかにもラノベ的なキャラクターは、ラノベ的なキャラクターっていうだけで構わないです。いかにしてそうした人格が形作られたか、なんて部分に説得力を持たせようとするのは無意味だとすら思います。
 まー、これで唯一〝メインヒロイン〟であるところの夜空の過去だけが未だに明かされていないあたり、それが9巻以降の肝になるんだろうな、とは推測できますが。これでまた恵まれない家庭環境のせいで捻くれたみたいな話だったら、『はがない』をまとめて破り捨てたくなりそうで怖いです。ハイ。

 そんな感じで、次は内容如何によっちゃ買わないでそのまま切りますっつーことで一つ。


【ラノベ】問題児たちが異世界から来るそうですよ? ウロボロスの連盟旗

2012-12-20 | ライトノベル
問題児たちが異世界から来るそうですよ?    ウロボロスの連盟旗 (角川スニーカー文庫) 問題児たちが異世界から来るそうですよ?    ウロボロスの連盟旗 (角川スニーカー文庫)
価格:¥ 630(税込)
発売日:2012-11-30

 読了。

 うーん、今回はあれですね。いわゆる「土台作り」に丸々一冊費やしたような、そんな印象を受けました。
 白夜叉がフロアマスターの任を外れてから二ヶ月、という時間経過が示され、魔王連合に対しての対抗策を練るための会合が執り行う、というのが6巻のメインストーリーになっているわけですが、なんだか5巻から地続きになっている感じがあまりしないというか、やや唐突かつ、あまりにもアッサリとラスボスとの対面が終わってしまったなあ、というのが正直な感想。
 このへんはあとがきに書かれていた「大人の事情」というやつが絡んでいるのかもしれませんが、個人的にはワンクッション入れて欲しかった気がします。まあ、おそらくこの〝空白の二ヶ月〟は短編などで補完されるんでしょうけど、急に物語が駆け足になってしまったせいで、これまで僕が気に入っていた「作品の密度」がすごく薄くなっていて、誤解を恐れずに言うと今回はそれほど楽しめませんでしたね。
 もちろん、つまらないというわけではないんですが、『問題児』シリーズに対する期待値が高いだけにちょっとガッカリかなと。
 次巻以降のリカバリを期待します。
 以下雑感。

・カラー口絵のトップを飾ったウィラがツボ! 見た目的には白夜叉(大人ver)に次ぐヒットですわー。文章でしつこいくらい「あどけない顔にわがままボディ(意訳)」みたいに書かれてるのもYESだね! わりと重要な立ち位置を担うキャラになりそうなので、これから先の登場に期待。

・つーわけで、ペストが表紙を飾ったのにふさわしく彼女がメインの話だったわけですが、ジン坊っちゃんとペストの関係が更に良好になったようで何よりでしたねと。ペストの真の目的も明かされて、本人はその目的が周囲の人間に受け容れられないだろうと思っていたけど、さらっと受け容れてみせるジン坊っちゃんはエロゲラノベ主人公の素養があると思います。それはともかく、こういう「言って欲しいときに言って欲しい台詞を吐く」キャラを書けるのは大きな魅力。十六夜なども同様の特性を持っているので、作者さんにはこれからもブレずに頑張って頂きたいところ。

・で、最初に書いたように「土台作り」に多くのページが割かれていたため、正直途中まではあまり面白くありませんでした。飛鳥の強化フラグだったり、殿下やリンの顔見せだったり、今後に向けて重要な描写があるのは理解できるんですけど、それだけに「次から次へと事件が起きて物語が動いていく」という躍動感に欠けた展開だったのもたしかだと思います。そういう部分が作品の魅力の一つだったので、少し期待外れだったというのは間違いないです。ハイ。

・それだけに、ジン坊っちゃんが〝突きつける〟コマンドを選んでからの展開が熱い熱い。ボッコボコにされる黒ウサギ。キレるけどあしらわれる耀と飛鳥。そして怒りにまかせ、ついに本気の欠片を垣間見せる十六夜。ここは掛け値なしに面白かったです。最後の30ページほどになり、ようやく本来の『問題児』を読めた感じがしました。

・余談ですが、十六夜の俺TUEEが一つの売りになっている作品だけに、強大な敵に出くわしたときにどういうふうに「苦戦」を描くかというのは大きな関門だと思うんですけど、今回みたいに「十六夜も殿下もまだまだ底が見えない」というところを落としどころに据えるのは上手いですね。最初のジャブの打ち合いとしては最高でした。

 そんなわけで、6巻はそこそこでしたっつーことで一つ。
 アニメには期待したいけどスタッフ、キャストを見るとまったく期待できないのが本当に辛い……。
 頼むから僕の不安をあざ笑うように名作が生まれてくれ!


【ラノベ】オーバーロード2 漆黒の戦士

2012-12-14 | ライトノベル
オーバーロード2 漆黒の戦士 オーバーロード2 漆黒の戦士
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2012-11-30

 読了。

 web小説として人気を博していた作品の書籍化第二弾。うおー、超面白かった!

 実は僕、1巻を読んだあとでweb版の『オーバーロード』を読んでみたんですよ。
 で、その感想というのが、序盤に関しては「つまらなくはないけど、書籍版のほうが面白い」という感じで、しかも物語が進んでいくにつれ、どんどん自分の好みと違う方向に向かっていってしまったため、かなり先行き不安になっていたんですよね。
 ただまあ、1巻に限って言えば、大まかな流れはweb版を踏襲しつつも、書籍化にあたって色々と変更が加えられていたので、2巻はどの程度の加筆修正が加えられているのかなと、期待半分不安半分でした。

 そしたらもう大当たりでしたね、これがな

 今回の2巻分にあたるエピソードをざっくりまとめると、「世界の仕組みを知るために、主人公が冒険者として社会に潜り込む」&「冒険者としての名声を高め、足がかりを作る」の二点が重要なポイントになっています。で、web版では主人公が自ら冒険者になりすますのではなく、下僕に命令を下すだけでした。
 コレ、実はweb版を読んだときに僕が不満を感じていたポイントだったりします
 ぶっちゃけ『オーバーロード』って、(web版では)主人公視点のエピソードというのが想像以上に少なくて、下僕だったり、やられ役の冒険者だったりといった第三者の視点で描かれることが多いんですよね。
 たしかにそれもつまらないわけではありませんでしたし、第三者が主人公の圧倒的な力を目の当たりにしてビビったりチビったりする姿と、実際には大して大物ではない主人公の内心のギャップが面白さに繋がっているというのは間違いないんですが、やっぱりラノベとしては主人公視点のエピソードを増やしたほうがいいんじゃないかなーとも思っていたわけです。
 なので、これは本当に嬉しい良改変でした。
 以下雑感。

・モモンとナーベが二人で冒険者になるというのはマジでワクワクする展開だった。ちゅうか友人と「これって主人公も冒険者として動けば面白いのにね」と話してたので、まさに希望が叶った形。

・余談ですが、元のエピソードのほうが好きという人も大勢いるだろうし、web小説を書籍化するというのは、お手軽にweb上のファンを取り込むという側面もあるだろうから、一概にどうこう言うことはできないですけど、個人的にはこれくらい改変(改善)してくれないとわざわざ本として出す意味がないと思ってます。『SAO』や『劣等生』なんかは舐めた商売してんなーとしか思えないので。信者さんごめーん^^

・で、モモン自身が冒険者になりすましたことで様々な変化が起こるだろうなと思っていただけに、漆黒の剣の連中がweb版同様全滅したのは驚いた。コレはまさしく良い意味で予想を裏切られたってやつで、モモンは決して勇者ライクな性質の持ち主ではなく、どちらかというとむしろ人間の命なんて何とも思ってないダークさによって〝他作品との差違〟を演出するタイプの主人公だったので、書籍化による改稿を経てその持ち味がなくなってしまうという危惧があった。それだけに、漆黒の剣を物語から退場させつつ、モモンの残虐性を薄めすぎることもなく、かといってあまりに邪悪寄りにすることもない、非常に冴えた落としどころに着地させたなーと素直に感心。

・身も蓋もない話、web版は〝やりすぎ〟な部分が目についたからなー。モモンが仲間絡みの話で恐慌に陥るところや、下僕たちの「人間=ゴミ」という思考がいきすぎてストッパー役がいないところなどは良い例だったわけですが、そういうのが全体的に薄まっているのは個人的には大いにウェルカムといった感じ。いやー、マジで楽しい。

 こうなってくると、シャルティアが離反したという衝撃の引きもあいまって、続きが楽しみで仕方なくなりますねということで一つ。
 『まおゆう』の大ヒットといい、エンターブレインやるじゃん。


【ラノベ】盟約のリヴァイアサン

2012-12-12 | ライトノベル
盟約のリヴァイアサン (MF文庫J) 盟約のリヴァイアサン (MF文庫J)
価格:¥ 609(税込)
発売日:2012-11-21

 読了。

 先クールにアニメが放映されていた『カンピオーネ!』の作者、丈月城さんの新作。
 最近はクオリティの高い作品を量産しているMF文庫Jの新シリーズということで、色々と期待して手に取ってみました。

 ……が、結論から言うと少し期待外れ。や、僕は元々『カンピオーネ!』を楽しんでいたクチなんですが、10巻あたりになって「護堂以外のカンピオーネたちにスポットを当てる」という群像劇のような展開が増えたことに萎えてしまって読まなくなったんですよ。
 実は、こういう「物語の進行と共に主人公以外の視点が増える」というのは、世間では「作品が軌道に乗った作家がかかる〝はしか〟のようなもの」と言われていたりもします。どうやら、単一の視点で物語を掘り下げるより、複数の視点を描写したほうが、作品の「格」が上がるような勘違いが存在するようなんですよね。わりと根深く。
 で、僕にとって『カンピオーネ!』って、ドストライクでこの罠にハマっちゃった作品だったんですが、MF文庫Jは『学戦都市アスタリスク』などで、編集さんが作家さんをうまくフォローしているレーベルという印象を抱いていたので、今回はかなりワクワクしながら読んだんですよねー。ちゃんと丈月さんの手綱を握るなら、仁村さんの絵との相乗効果でスゴイことになるんじゃないのか? みたいな。
 でもダメでしたねっと(ノ∀`)

 なんつーか、『盟約のリヴァイアサン』は、良いところと悪いところがハッキリしている作品です。
 ざっくり書き出すと、

良いところ
・ヒロインのキャラクター
・世界観などの設定

悪いところ
・描写力不足

 こんな感じ。
 正直、ヒロインに関してはかなりレベル高いです。絵師の仁村さんの仕事が素晴らしいというのはもはや言うまでもないですが(ラノベ絵のハードルを仁村さんのところに設定したら七割くらいの絵師さんは仕事失いそう)、アーシャと織姫という二人のメインヒロインをはじめ、出てくる女キャラがどいつもこいつも魅力的で、たとえどんなにつまらない話であってもハーレム展開見たさに買い続けてしまおうかと心揺らぐ程度にはクオリティが高いキャラクター造型になっていました。これは大きなウリです。
 また、世界観などの設定に関しても、現代とファンタジー世界がうまく融合していて、手垢がついているようでありながらも、しっかりとオリジナリティを発揮しているのはさすが『カンピオーネ!』の作者さんという感じでした。

天空より飛来するドラゴンの襲撃に、人類が脅威にさらされている現代。
人は魔術によって創造された蛇霊体《リヴァイアサン》を駆り、抗戦の日々を送っていた。
“蛇”の契約者にして、竜を討ち滅ぼす救世の戦乙女――《魔女》。
彼女たちの契約をプロデュースすることを生業とする少年、ハルこと春賀晴臣は、幼なじみで欧州屈指の魔女、アーシャの(強引な)要請で3年ぶりに「東京新都」に帰還する。
妖精のような容姿の少女に連れ添って、高校転入に拠点確保と奔走するハルだったが、突如、上位種のドラゴン“ソス”の襲撃に遭い――!? 
いま、竜と竜殺しの新たな神話が息吹きを上げる! 至高の《新生》エンタメ、堂々開幕!


 以上は、公式HPから引用したあらすじですが、ラノベでお約束の固有名詞連発に拒否反応さえ出なければ、実に良質な中二設定が心を潤してくれます。

 ……ところが、まあ、それら作品における長所が、描写力不足のせいでぜーーーーーんぶ台無しになってるのが大問題なんですなー。
 せっかくヒロインたちが魅力的なのに、主人公がベタな鈍感系をベースにしているせいで不快感を抱いたり。
 かつて『カンピオーネ!』でも散見された、「主人公に嫉妬する男子生徒」の存在がウザかったり(丈月さんはこのへんの描写センスがマジでないと思う)。
 仁村さんの書くドラゴンはマジでカッコイイのに、戦闘描写が下手すぎてちっとも盛り上がらなかったり。
 で、僕が何より致命的だと思ったのは、描写力のせいで「リアルな現代とは異なる現代」という世界の説明が拙すぎて、ちっとも内情が伝わってこないことです。ドラゴンの襲撃を受けているワリには緊迫感がないというか、すぐ傍に廃墟になった都市が存在するくせに〝普通の学園生活〟を営んでいる学生たちがいたりして、そのへんの描写がどうにもこうにも噛み合っていません。主人公たちが特別な存在というのは分かるのに、どの程度の特殊性なのかというのもピンとこないです。
 こうした部分は、いわゆるSFの描写に通ずるところがあって、きっちり表現しようとすると非常に難しいです。某『イリヤの空』などは実に見事に「リアルな現代とは異なる現代」を描ききっていましたけど、そのためには「イメージ力」と「頭の中のイメージを適切にわかりやすくアウトプットする」という二つの能力が高いレベルで求められます。
 と、そんなふうに考えると、ちょっと丈月さんの手に余る題材だったのかな、という感じでした。
 誤解を恐れずに言うと、300ページ超の一冊のうちの半分が世界観の説明で面白くなかったですし(しかも分かりにくい)、残り半分のうちの更に半分の戦闘描写はスリルがなくて目が滑りっぱなし。
 おそらく多くの人が目をつけるであろう、『カンピオーネ!』でもお馴染みの疑似セックス描写も、二度ネタになってしまうと新鮮味が薄れて大してエロく感じませんし、全体的にインパクトの薄い作品という印象を受けました。
 あと、これは完全に蛇足ですけど、織姫はまんま『カンピオーネ!』の祐理ですね。性格は似てませんが、読者が「こういうヒロインなんだな」とイメージを深める前に、作者のほうから「この子はこういう子なんですよ!」「こんなに良い子なんですよ!」ってゴリ押しプッシュされる感じがそっくり。僕はちょっと、こういうのは萎えちゃいますね。

 つーわけで、素材はすごくいいので、できれば続きも買いたいんですけど……うーん。
 描写力が急成長するとも思えないので次は様子見ってことで一つ。