九州大学の生命機能科学部では、16年以上研究をしてきた健康に良い水・還元水に関する研究成果と内外の研究動向をまとめた総説論文「Advanced research on the health benefit of reduced water」を食品科学工学分野では高いインパクトファクターを持つTrends in Food Science & Technology誌に発表した。
2012年4月26日
九州大学大学院 農学研究院 生命機能科学部門 システム生物学講座 細胞制御工学分野
英語論文:
“Advanced research on the health benefit of reduced water”
和文論文:「健康に良い還元水研究の進歩」
日本では機能水、なかでも還元水に関する研究が急速なペースで進展している。電解還元水や天然還元水などの還元水は培養細胞中の活性酸素種を消去することができる。還元水は酸化ストレス疾患、例えば糖尿病、ガン、動脈硬化症、神経変性疾患や血液透析の副作用に対して予防および改善効果が期待されている。還元水中の活性物質は水素(原子及び分子)、ミネラルナノ粒子及びミネラル水素化物であることが示唆されている。
総括及び展望
蓄積した証拠から、還元水は健康に有益な水であり、糖尿病、ガン、動脈硬化症、神経変性疾患、アレルギー症および血液透析の副作用などの酸化ストレス関連疾患を抑制するということが示唆されている。活性酸素を除去する還元水の作用機序は複雑であると考えられる。電解還元水は水素分子及びミネラルナノ粒子を含んでいる。水素分子は抗酸化酵素の遺伝子発現を誘発できる新しいレドックス制御因子であることが明らかになりつつある。水素分子は金属ナノ粒子の触媒作用によってより強力な還元性を示す活性水素に変換されて生体内で作用する可能性がある。ミネラルナノ粒子自体も新しいタイプの多機能抗酸化剤である。ミネラル水素化物ナノ粒子はアスコルビン酸(ビタミンC)のような有機抗酸化物質などと同様な還元物質であり、還元水中の活性物質の候補でもある。天然還元水は上記の活性物質の1 つまたは幾つかを含み還元作用を示す可能性がある。電気、磁場あるいは光による水の活性化方法に関する更なる研究は、我々の健康により有益な高エネルギー水の開発に貢献すると考えられる。還元水は羊水と血液を浄化することによって、妊娠女性の健康状態を改善し、胎児の環境汚染に起因する障害を抑制できる可能性がある。
ガン、糖尿病、動脈硬化症、神経変性疾患、アレルギー症などの酸化ストレス関連疾患は多数の病因が絡み合っているために、従来の分子標的医薬では有効に対処できない疾患である。著者らが還元水に関する研究を始めたきっかけは、水道水の代わりに、還元水を日常的に飲用するだけで、上記の難治性疾患が改善されるという報告にあった。その後、酸化ストレス関連疾患の原因の一つである活性酸素を、電解水中の水素分子が何らかの機構で活性化されて生成する活性水素が消去することにより生体の恒常性を回復させるという活性水素還元水説を提唱し、さらにミネラルナノ粒子の関与を明らかにして活性水素ミネラルナノ粒子還元水説へと発展させた。還元水は生体内に速やかに取り込まれ、生体のあらゆる細胞を活性化して生体の恒常性の維持・回復に寄与する可能性がある。還元水に関する研究は、現在スウェーデンのカロリンスカ研究所をはじめ、世界各国で真剣な研究が開始されている。従来の抗酸化物質は活性水素を放出して活性酸素を消去した後に、プロオキシダントとして作用し、逆に酸化ストレスを増大させるという両刃の剣の性質を有している。還元水は主として還元力のみを示す温和な抗酸化物質として今後世界的に普及する可能性が考えられる。
還元水は食品の味、レオロジー、保存性を改善することによって、食品業界にも貢献しうる。産業においては半導体の錆を抑制するための洗浄水としての電解還元水の利用が期待される。環境の分野では、還元水によって還元的雰囲気を醸成することにより、腐敗菌や有害菌の増殖を抑制し、川と湖の水の水質改善に効果が期待される。地球創成の頃は水素ガスが豊富に含まれている還元的雰囲気にあり、地球で最初に生まれた原始細胞は水素分子を豊富に含んだ還元水中で生まれたと推測されている。
Trends in Food Science & Technology
Volume 23, Issue 2, February 2012, Pages 124-131
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0924224411002408/