1.ウナギの謎 ~産卵生態の解明にむけて南の海にウナギを追う!~
ウナギは淡水魚だが、その一生は日本から2500km離れた熱帯の外洋にまで及ぶ。中央水産研究所の黒木洋明氏が、長年の調査船による海洋調査で、ウナギの回遊がグアム島付近からであると解明されつつあることを紹介した。
2.ウナギ完全養殖への道
続いて養殖研究所の田中秀樹氏が、ウナギの卵からシラス・成魚までの育成について解説した。長い間ウナギの生態が解明されていなかったため、それぞれの段階での餌に苦労し、特に今回は成魚が繁殖にいたるまでの餌やホルモンの状態が大きなカギであったと述べた。この飼育方法と餌は特許を取得している。大量生産にはまだ課題があるが、完全養殖による量産化が可能になると
1)種苗供給・価格の安定化 > 養鰻業の振興
2)天然稚魚の採捕を減らせる > 資源の保護・持続的利用
3)国際的アピール > 他国の追随を許さない技術
育種の可能性
・高生残率、早期変態 > 大量生産への近道
・耐病性
・高成長・高餌料転換効率
・高品質(栄養、味、肉質)
3.ウナギ完全養殖の技術的側面
養殖を協働した鹿児島県・志布志栽培漁業センターの今泉均氏は、温度管理や水質など環境条件と餌に注意を払い、大量生産に向けての課題を解説した。鹿児島はウナギ養殖が盛んな地で、親ウナギが確保できる。また川に上流するシラスが摂れるので、量産化にあたって地の利が活かせる。
4.ウナギ種苗の量産化への展望
最後に研究開発推進担当の井上潔理事が、近年にいたる国内生産量の減少と、輸入量も減少しつつある現状を解説した。2008年に国内で消費されたウナギの生産地は、全体5.3万トンのうち、中国産45%、台湾産15%、日本産が39%であった。土用の丑の日に合わせたシラスウナギの買い付けは、12月から1月末に需要が集中する。この時期にシラスウナギが少ないと価格も高騰し、養殖業の経営に大きく影響する。輸入ウナギも薬剤の検出による不安から、一刻も早い国内の大量生産が望まれる。
今後の課題は、良質な大量採卵技術の確立と、そのための親ウナギの餌の開発、仔稚魚の餌の改良と新しい餌の開発が必要であり、シラスウナギ以降も成魚の味を左右するのは餌と生育環境にある。将来は遺伝子分析を進め、成長が早く病気に強い、さらに味も良い高品質の養殖ウナギをつくるために、親魚の選抜など育種をしていく、と話した。
主催:独立行政法人水産総合研究センター
後援:水産庁