液体ゼオライトの情報をいただきました。体内の有害物質を取り除き、とても健康に良いものだと言う事です。このテの話は、日々ゴロゴロとあります。もちろんそうした有用なことは否定しません。しかし重大な落とし穴に気づいててない人があまりにも多すぎます。
差別化しようと、物珍しい商品が次々と出てきます。健康に良いのはわかりますが、その前に何よりも安全性の確保が必要です。これについて2008年に厚生労働省から、「健康食品」の安全性確保に関する検討会報告書がまとめられています。
(1)原材料の安全性の確保
(2)製造工程管理による安全性の確保
(3)実効性の確保
こうした大前提を無視して「いいよ、いいよ」と言われても、安心できません。原料から製造工程と出荷にいたる管理がなされている上で、はじめて有効性を言うべきです。
問題のある事例を挙げてみましょう。
原材料で言えば、「新発見の○○」「アマゾンの○○」など、食経験に基づいて安全性が担保できない場合には、原材料等を用いた毒性試験の実施がされているか。あるいは、文献検索による安全性・毒性情報等の収集が可能かどうかです。さらにそのスゴイ原料がどの程度含まれているのか。プール一杯に一滴たらしただけでも「配合」と言えるのです。
また「FDAが認可した○○」も問題です。それなりの根拠があってFDAは審査をしたのでしょうが、ここは日本であって日本の法令に従わなければなりません。FDAがなんと言おうが日本の法令に違反したら違法行為であり、処罰・処分の対象となります。
それと、安全性と有効性が実証されていても、日本で医薬品とみなされるものは健康食品に使えません。どんなに良いものであっても法律上、守るところは守らなければなりません。
製造工程では、製造機械の精度や衛生管理がされているかどうかが問題です。たとえば製造過程で、加工機やパイプが磨り減ることがあります。これが微細な金属片として製品に混じっていたらどうでしょうか。それが有害な金属であったら、危険でさえあります。先の検討会では、原材料等の受入れから最終製品の包装・出荷に至るまでの全工程における製造管理・品質管理の体制の整備(GMP:適正製造管理)が重要としています。そしてそれが、正しく管理されていることを第三者機関が確認する仕組みで、実効性を確保しようと言っています。「ウチは品質管理はキチンとしてる」と自称しているだけではダメです。
ゼオライトは製造用剤として用いられる食品添加物であって、食品中の残存率は0.5%を超えてはならない規定があります。製造用に使う加工機などには使ってもいいけれど、それ以外の用途は不可であると、食品衛生法に基づく『食品・添加物等の規格基準』で定めています。ゼオライトに限らず、食品として認められていないものは、日本で製造・加工・保管・販売は認められていません。実際に日本の事業者が6月、ゼオライトを含む健康食品に行政から指導がなされています。
それを健康食品にして販売しようとは言語道断。液体であろうが固体であろうが、こうしたチェックも行わないとは、まったくデタラメな話です。そうしたもので商売が続けられるはずがありません。まずは日本の法律を遵守し、その上で健康に良いものであるべきです。
調べて見ますと液体ゼオライトは、アメリカのW社がこれから日本でネットワークビジネスを展開しようとしているようです。ネットワークビジネスそのものを否定はしません。ただこうした日本では違法なものを他人へ勧め、組織を拡大するビジネスが成り立つはずがありません。ある程度のところまで行って、処分を下されたら一瞬にして終わりです。ネットワークビジネスは、「ひと山あてよう」ではなく、継続した収入を目的にしているはずです。「アメリカで良い物なら日本でも良いだろう」では、選択を誤っています。
もうひとつは、製品の管理状態です。物流センターを持っていない小規模な倉庫や個人輸入の場合、温度と湿度の管理が適切とは言えません。熱い夏に蒸し風呂のような倉庫に山積みにしてあったら、変質している可能性があります。製造時には良い製品であっても、手元に届いたときには、ただの粉か効果が失われた液体になりかねません。
有効性についても問題があります。活性酸素と抗酸化の関係がようやく認識され、農林水産省でも食品の抗酸化レベル(ORAC値)を採用し始めました。しかし、単に抗酸化レベルが高ければよいのではなく、最近の研究では、活性酸素の中には人体に必要なものもあるのであって、それらを消去しては具合が悪いケースもわかっています。こうしたことを知らずに、「抗酸化レベルの高いサプリメント」だけを追い求めるのもいかがなものでしょうか。
特にネットワークビジネスでは、こうした製品の安全性と品質確保が無視されて、都合の良い健康情報で「早い者勝ち」的な素人の集まりが、イメージを悪くしています。製品の品質が低下していたり、法令に違反しているようでは、ビジネスとは呼べません。またアメリカと日本で正式販売する場合では、同じ名前でも中身が異なる場合があります。当然、試験データがあっても別物を同一視させるような説明は、消費者を誤解させる不当な表示です。
消費者にとって安心できるものが、ビジネスの条件です。安心とは製品・サービスの提供者が決めるのではなく、消費者が決めるもので、安全と安心は意味が異なります。