「暑さ寒さも彼岸まで」
むかしから言い慣わされたたくさんの言葉の中でも
群を抜く納得感がある
彼岸花の開花の正確さ精密さも手伝って
彼岸に暑さがスーッと引くと
毎年のことながら変に感動してしまうほど腑に落ちてくる
現にこれを書いている彼岸明けの今日は
日差しこそ少し強いが
湿度が低く丁度良い気温の過ごしやすさだし
夜になれば寝室の空気もひんやりとして
布団をしっかりとかぶって寝られる幸せな日々が戻った
夏の終わりに
富山県の有峰湖へ行ってみようと考えていたが
行き場を失って西日本を彷徨う「来る来る詐欺」台風にタイミングを失くし
まあ、まだまだ暑さも真夏並みの日々が続いていたので
もう少し涼しくなったら行えばいいだけのことかと
何となくこの彼岸すぎくらいかな、と感じていた
けれどその後の秋雨前線の南下と崩れた台風の残骸が重なり
信じがたい災害が能登の震災被災地を中心に発生した
ニュースを見るのも苦しいような現場の様子に
とても呑気に有峰湖に出掛けていく気にもならないのが今の気持ちだ
そうしたところへ追い打ちをかけるように
自分の身体にも異常が生じた
ここ数年なかなか治らない中耳炎
先週風呂で耳の裏側を指先で洗っている時左耳に激痛が走った
思わず声が出てそのあと悶絶するほどの痛みで
同時に耳の中で泡が弾けるときのような音が続いた
しばらくして痛みは少し落ち着いたけど
なんだか耳の中の炎症がまた出たのかなと少し不安を感じた
そうしたらこの週末の夜からひどい耳垂れがあって
耳が詰まったような閉塞感とすごい音量の耳鳴りが始まった
「また再発したなー」
週末で医者は休診だったので都合様子を見ることにしたが
耳垂れはひどくなる一方だし
夜になると(アホだからこんな状態でも晩酌するせいだと思うが)熱が出て
顔の左側全体がぼんやりとしていた
今回はまだあまりひどくないのだろうけど
完治するまでに早くても2週間はかかるだろう
ということで「有峰湖」行はまた来年ということになりそうだ
来年生きている保証もない年齢なのにね
丁度いいので夏の間に疎かになっていた
オートバイたちのメンテナンスに精を出すことにした
クロ介のオイルとフィルターを交換してやり
洗剤を使って下回りを丁寧に洗ってやった
レバーやペダルに注油してやったり
スロットルの作動部のグリスを塗り替えてやったり
エアクリーナーのフィルターを交換したり
まあクロ介はそんなところだ
おかめ(エンジンフロントカバー)の下側のオイル漏れは相変わらず
まだしばらく問題なさそうだ
(オイル漏れてるのに問題なくはないのだけれどね)
SR400のほうはメッキが多くてすべてが剥き出しなので
濡れた路面を走るととても汚くなったように感じるが
メッキも塗装もしっかりとしていて
案外サビには強いなと感じている
とはいえ泥まみれの埃だらけはこの娘には似合わない
出来るだけいつもきれいな姿にしておいてやりたいと
自然にそう思わせるオートバイで
いつも掃除に力が入るおっさんなのだ
それと丁寧に各部を掃除すると
何となくおかしな箇所や怪しい箇所が見つかる
特に中古車はオリジナルの姿を知らないから
何が正しいのかが正直わからなかったりする
そんな中古車のSR
右のコーナリング中にどこかを接地させてしまうことが多々あって
ステップのセンサーよりも先に
車体が起き上がるくらいガツッどこかが当たっている
そうしたら今回の掃除中にマフラーのジョイントの取り付け金具に違和感を感じた
締めこみ部が外に向いているのだ
よく見ると角が削られている
「な訳ねーじゃん」ということで
クルッと内側へ回しておいた
多分正解、デフォルト状態
だから入念な掃除はメンテナンスの基本と云われるのだ
SRは古い設計のオートバイなので
レバーの接合部にはしっかりとゴムのカバーが付いていて
こいつのおかげでワイヤーの痛みがかなり抑えられている
スーパーカブのチェーンカバーもカッコ悪くて外したりしちゃうけど
あれを付けておくと本当にチェーンがいつまでもキレイなままだ
雨を走ってもオイルが切れることもなく
砂や泥もつかなくて摩耗もしにくい
いい材料の質のいい部品が使われ
車体のメッキや塗装もしっかりしていて
さらにこういった機能パーツが備わっているのは以前では普通のことだった気がする
クロ介の塗装もしっかりしていて
古いBMWって本当に錆びない
タンクやボディ外装の塗装もレベルが違うと感じる
同じ時代のプラ外装を持つ国産車はどれも色褪せや塗装剥がれが当たり前だが
クロ介は雨が降ると(湿度が上がると)表面のクリア塗装が曇る程度で
乾けばそれもキレイに戻ってしまう
製造者も自分たちのプロダクトが
何十年も長く使われていくことを願ってはいるのだろうが
実際自分が作ったオートバイが50年後に走っているとは
あまり想像してはいないんじゃあないだろうか
けれどコストをかけてもしっかりとした材料を使い
確かな信念に基づいてモノづくりをすれば
おのずと出来上がった製品には魂が宿るのだ
洗車の時ウエスでタンクのラインをなぞったり
エンジンフィンのひとつひとつを磨いたりしていると
なぜだかうっとりとしてしまうような幸福感に包まれる
良いモノとはそういうモノなんだろう
前回の記事で
次世代にオートバイが正しく伝わっていない等々書いてみたが
変速操作の仕方すらわかっていない(伝えられていない)ように改めて感じた
「インプレッションを」とか云いながらシフトアップもきちんとできないモトブロガー
大袈裟に云うと
「バーーーーッ、ガッ、クーーーーーーン」
クラッチを切っちゃってることと
変速タイミングがデタラメ
タイミングがデタラメだからギクシャクするのを誤魔化しているのか
いやクラッチを切ってタイミング合わせようとしているのか
クランクが回って、それが加速して行く時
トランスミッションがどんな力を受けているか感じていれば
シフトアップするタイミングは自ずと決まってくる
クランクが回転を上げていく勢いを少し抜くだけ
(スロットルをわずかに戻す、本当に僅かでいい)でギアは容易に動く
クラッチはそれを少し補助するだけで足りるので
指の第1関節がクイッと瞬間的に動くだけ
動くというか、「ピクッ」みたいな一瞬の腱の収縮
ライテク記事では常に語られることなのにこれが伝わっていない
それはエンジンを感じていないからなのか
エンジンの回転をコントロールする意識に欠けているのか
いずれにしろゲームのコントローラーでスイッチを押すような感覚にみえる
クイックシフターもいいだろう
ホンダのE-CLUTCH、ヤマハのY-AMTもどうぞどうぞ
でも人間にもできるよ、シフト操作くらい
仕組みを理解してオートバイから伝わる挙動を感覚で受け止め
指と爪先を精密に動かすのだ
オートバイとはそういう乗り物なのだ
何度も云うけど便利なモビリティなんかじゃない
乗ることを操縦することを楽しみ味わう趣味の対象だ
ちなみにこのクラッチ操作シフト操作を身に付けるには
クラッチレバーの角度とあそび、そしてシフトペダルの高さを
自分の身体と操作方法にマッチングさせる必要がある
特にレバーの角度は重要で乗りながら少しずつ微調整する必要がある
レバーの調整、してますか?
してない?
そいつぁ信用できねぇな―