縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

無断キャンセルの行きつく先

2019-09-15 13:12:50 | おいしいもの食べ隊
 「ごひいき予約」という某カード会社のサービスがある。キャンセルの出た人気飲食店を優先的に予約できるサービスである。お店に直前キャンセルが出たとき、登録者にメールが入り、後は早い者勝ち。対象の飲食店は、ミシュラン星付きのお店など人気の飲食店であり、予約の取りづらい店が多い。何か月も前から予約するといった殊勝な心掛けのない僕にとっては、大変有り難いサービスである。

 先日、このサービスを使ってミシュラン一つ星の割烹に行って来た。妻の友人大絶賛の店である。が、この店、実は週に3、4回キャンセル情報が出ており、キャンセル頻度が群を抜いて高い。僕は、単に集客のために「ごひいき予約」を使っているのではと訝しみ、ずっと行くのを避けていた。
 しかし、いざ実際に行ってみると、これがなかなか良い店だった。旬の食材にこだわり、丁寧で、どれも手の込んだ料理である。特に刺身がうまい。素材自体良いのだろうが、ひと手間かけ、さらにおいしく食べさせてくれる。醤油やわさびを使うことはなかった。

 慣れてきたところで、僕は今までの謎に迫るべく、女将さんに恐る恐る聞いてみた。「僕たちにしてみると、今日は本当にラッキーで良かったのですが、キャンセルって結構多いんですか?」
 女将さん曰く、「ええ、残念ですがよくあります。皆さま事情がおありだと思いますので、日にちを替えるようお願いしていますが、皆さまというわけにはいきませんし。結局来られない方には、キャンセル料の送金をお願いすることもありますが、これも難しいですし・・・。その点、ポケットコンシュルジュさんは事前の決済なので助かります。」キャンセルには相当頭を悩ませているのか、女将さんは長々と答えてくれた。
 因みに、「ポケットコンシュルジュ」という会社は、元料理人の方が、飲食店の方の予約や支払いのトラブルを無くしたい、ドタキャンによる食材のムダを無くしたいとの思いから立ち上げた、レストラン予約・決済サービスの会社である。ホテルの予約のように、カード番号を登録し事前に決済する、きちんとキャンセル料の取れるシステムを作っている。「ごひいき予約」は先月までポケットコンシュルジュと提携していたので(なんと、この1月に同社はアメリカン・エクスプレスに買収されてしまった!)、女将さんは付け加えたのであろう。

 今、飲食店のキャンセル問題は深刻である。昨年、経済産業省が発表した『No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート』によると、無断キャンセルは予約全体の1%弱発生し、その飲食業界の被害額は年間約2千億円だという。さらに予約2日前までのキャンセルを含めると、発生率は6%強、被害額は約1.6兆円に及ぶとのこと。ちょっと想像できない金額だ。最近では無断キャンセルの損害分を補償するサービスや弁護士による回収代行サービスが出て来ているらしいが、それも納得できる。
 一方、キャンセルする側の理由としては、取り敢えず場所を確保しただけ(=行くかどうかはまた別の話)、複数の店を予約した(=その日の気分や相手の希望で店を決める)、人気店だから予約してみた(=予約が取れたけど行けるかどうか分からない)等々、真に身勝手な理由が多いようである。やれやれ、我が日本人の常識、モラルはどこへ行ったのだろう。

 このままでは、近い将来、飲食店を手軽に予約できなくなる日が来るに違いない。電話1本で簡単に予約できたのは遠い昔の話。ホテルの予約のようにカード番号の登録を求められたり、予約金が必要になったりするのである。まずは人気店から始まるだろう。
 ところで、先日僕が行ったお店だが、今月からコースの金額を税込みで3,000円程度値上げしていた。元が1万円強とミシュラン一つ星にしては安かったのだが、それが一気に3割近い値上げ。ちょっと敷居が高くなってしまった。キャンセルの多いことが値上げの一つの理由だと僕は思う。
 だから僕はドタキャンする人に声を大にして言いたい、「みんな、天に向って唾を吐くような行為は止めよう!」と。