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エルトンとトリュフォー ~ 『ピアニストを撃て』

2013-03-25 22:00:36 | 芸術をひとかけら
 エルトン・ジョンに『ピアニストを撃つな!』というアルバムがある。1973年1月のリリース。彼が初めて全米と全英両方のチャートで1位を獲得したアルバムであり、まさに彼の黄金時代の幕開けとなったアルバムである。初めて全米シングル・チャートで1位となった『クロコダイル・ロック』や『ダニエル』などが入っている。
 このアルバムのタイトルが、フランソワ・トリュフォーの映画『ピアニストを撃て』にインスパイアされたものだと聞き、一度その映画を見てみたいと思っていた。もう30年以上前の話である。すっかり忘れていたが、先日、ふとそのタイトルを新聞で見つけ、漸く見ることが出来た。

 で、正直、「エルトン・ジョンは、この映画のどこが良かったのだろう。」というのが、僕の感想。

 『ピアニストを撃て』は1960年のフランス映画、トリュフォーの『大人は判ってくれない』に次ぐ2作目の長編映画(といっても80分程度)である。ギャング映画というか、ハードボイルドには成りきれない主人公の悲劇というか、ドタバタのB級映画というか、そんな感じの映画である。ヌーヴェルヴァーグっぽく、即興的で、ロケ中心で、低予算の映画だな、といった感じがした。
 ストーリーはいたって単純。ある事故をきっかけに輝きを失ったピアニストが、兄弟のいざこざに巻き込まれギャングに追われる羽目になり、掴みかけた愛を、そして生きる希望を失ってしまう、というものである。間に本筋とは関係ない話が入っていたり、突然過去の話になったりと、若干展開のわかりにくい所もあるが、全体にシンプルな作りである。何か伏線が敷かれていたり、推理が必要だったりということはない。見て、純粋に楽しむことは出来る。が、だからどうした、と思ってしまう。エルトンは何がそんなに良かったのだろう。

 強いて言えば、それは「愛」だろうか。映画の中で、男は女のことばかり話し、皆、女を追いかけている。一方、女は女で男のことばかり話し、男のために生きようとしている。映画のラストシーンはちょっと暗示的だった。愛する女性を亡くし、また元の単調な生活に戻った主人公に、新しい恋の芽生える可能性が・・・という終わり方。でも、エルトンは男女の愛に関心があったのかな。