縁側でちょっと一杯 in 別府

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GMはチャプター11で再生すべき

2008-11-19 00:41:21 | 海外で今
 米国の自動車メーカー3社、いわゆるビッグスリーが、中でもとりわけGM(ゼネラル・モーターズ)が、極めて深刻な状況にある。先般政府により環境対応車生産のためとして250億ドルの低利融資が行われたが、ビッグスリーは足元の資金繰り悪化から、追加で250億ドルの支援を政府に要請している。これが実現すれば日本円で総額5兆円近い支援額となる。

 2006年2月23日に『晴れた日でもGMが見えない?』というブログを書いたが、当時の状況からGMはまったく変わっていない。UAW(全米自動車労組)に妥協した結果としての高コスト体質。高賃金に年金や退職者の医療費負担等々、この2年間、彼らはいったい何をしていたのだろう。
 いや、この30年間と言って良いかもしれない。というのも、1978年にクライスラーの社長となって同社再建を実現したアイアコッカが、その自伝の中でビッグスリー共通の問題として「高すぎる人件費」を嘆いていたからだ。又、当時と今の状況も似ている。米国の自動車メーカーは石油ショック以降の需要構造の変化に対応できず、つまり低燃費小型車の開発・生産が遅れた結果、日本車との競争に敗れ、業績不振に陥っていたのである。
 幸い当時と違うのは、日本の自動車メーカーが米国での現地生産を増やしてきたことから、ジャパン・バッシングが起きていないことであろう。

 概して日本の新聞は米国政府によるGM支援に好意的な気がする。GMが破綻した場合の実態経済への影響は計り知れない、米国経済のみならず世界経済全体に大きな打撃となる、といった論調。又、格差社会の是正、弱者救済、判官びいきといった感情的な面もあるのかもしれない。

 しかし、本当にそれで良いのだろうか。

 私は、GMはチャプター11を申請すべきと考える。日本でいう民事再生法の申請である。勿論、今の状況で即座にチャプター11を申請すべきではない。混乱が大きすぎる。今GMがチャプター11を申請すれば、アフターフォローを考え先の見えないGMの車を買う消費者はいなくなるだろうし、部品メーカーやディーラーの連鎖倒産も多数起こるだろう。地に落ちたGMブランドを支援するスポンサーは出てこないであろうし、世界の金融市場もGM破綻によりCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の清算が必要となりパニックになるかもしれない。
 こうした事態を避けるには やはり米国政府の支援が不可欠である。それは再建計画策定、再建が軌道に乗るまでの政府による支援策の作成、更には新たな経営陣やスポンサー探し、等を行うための準備期間とすべきである。政府の支援によるプレパッケージ型の再生案件とすべきと思う。

 今のGMの体制を温存した形での再建はありえないであろう。資産処分や人員削減は避けて通れないし、UAWの既得権の抜本的見直しも必要である。血も涙もないことを言うように聞こえるかもしれないが、事実を見て欲しい。2007年のGMの従業員の時給(年金や医療費負担も含む)は 70ドルだという。1日8時間、年250日働くとすれば年14万ドル、日本円で13百万円以上になる。リーマン・ブラザーズと比べれば安いかもしれないが、高いことに変わりはない。
 一方、日本の自動車メーカーは収益こそ悪化しているが依然として黒字である。米国市場が赤字で苦しんでいるとも聞いていない。GMはじめビックスリーには世界最大の自動車マーケットを有することから来る驕り、利益率の高い大型車への依存など、経営に甘えがあったのではないだろうか。