D9の響き

Guitarを肴につらつらと・・

TheSixteenMenOfTain('99)/AllanHoldswoth

2006-09-09 11:21:42 | allan holdsworth
英国のスコットランドには‘Glenmorangie(グレンモレンジー)’という世界的に有名なスコッチウイスキーブランドの醸造メーカーがあります。


その醸造所はハイランドの‘TAIN’という古い景勝地にあり、昔から16人の職人による厳格に分業化された工程をかたくなに守り、芳醇でまろやかな世界最高級とされるテイストを現在まで伝えているそうです・・経営面では長年のオーナーが最近権利を手放しちょっとヤバイそうですが。
・・そう、その職人達を我々は‘The Sixteen Men Of Tain’と呼んでいる・・と語るのは、スコットランドのみならず全世界の飲兵衛たちですね。(爆)


そして音楽の世界では、ワンコーラスは通常16小節とされてますね・・あるいは、Jazzでは4ビートを16分音符で料理しますよね・・8分音符ではなく。(笑)


お察しのとおり、Holdsworth先生が大好きなお酒を生み出す職人達の数を、自身が生み出す音楽との共通点にまで無理やり言及し(笑)‘♪だから僕ちゃんはJazzが好きなんだよね♪・・’と、言いたかった・・ようですね。(笑)
・・なんて回りくどいタイトルなんでしょう。(笑)

まあそんな訳で、巧みに隠喩されたタイトルを冠したこの作品は、ソロ通算11作目にあたりオリジナル盤は'99年10月リリース(邦盤は同年12月)となってます。
パーソネルは、Allan Holdsworth(g,synthaxe)、Dave Carpenter(b)、Gary Novak(d)、Walt Fowler(tp.on #1,5)、Chad Wackerman(d.on #6)というメンツです。
特にコアのリズムセットは今回初めてのレコーディングとなる面々で、基本的にアコースティックのセットです。


【Dave Carpenter】


【Gary Novak】

音的には、冒頭で述べたように、まさにJazzといったテイストが濃い仕上がりですが、曲によっては先生のインプロの過程においてしばしばハードロックになっちゃう辺りがニヤリとさせる隠し味といったところでしょうか。

#1.0274:
ボリューム奏法で始まるビートレスなイントロから、モダンジャズ的な展開に移ります。
Walt Fowlerのトランペットと先生の硬質なギターのクリアトーンがピッタリマッチしてますね。
・・しかしながらNovakのドタバタドラムが、個人的にどうしても好きになれません・・残念!

#2.The Sixteen Men Of Tain:
アルバムタイトルのこの曲は、印象的なフレーズを配したやはりモダンジャズ的な逸品です。
アレンジをもっとエレクトリック寄りにしてれば‘Hard Hat Area’あたりに組み込まれてもおかしくない展開が臨めるのでは・・基本は4ビートですが、アコースティックな匂いがあまり感じられませんね。
先生のギターがまるで極上のベルベットのように柔らかです・・バックはSynthaxeかな・・。

#3.Above And Below:
叙情的なスローチューン・・テーマがあるようで無いような不思議な感じの曲です。
単純なインプロではなくコードワークで聴かせるタイプの展開で、これも‘Hard Hat Area’あたりから現れた傾向じゃないでしょうか。
エンディングの余韻が妙に深くて気持ちいいですね。

#4.The Drums Were Yellow(improvisation)For Tony:
いわずと知れたTony Williamsへのトリビュートチューン・・Novakとデュエットでインプロ。
私が一番理解できないのがこの曲でのドラムの人選です・・聴いてて怒りが込み上げて来るのは私だけでしょうか?
邦盤のライナーでは好意的に書かれてますが、Tonyをテーマにしてるといいながら、あの呼吸するような独特のタッチが全く感じられず、単にバタバタやってるだけにしか聴こえないんですが・・。
ただ、メロディの美しさとエンディングの荒涼としたSEのサウンドがTonyの追悼版となってた‘Wilderness('96)’の音にダブルのがせめてもの救いでしょうか・・言い過ぎてたらごめんなさいです。

#5.Texas:
実はこの曲、先日の来日公演でもセットリストに入ってて演ってたそうで(汗)・・全然わかりませんでした、ハハハ・・。
正直言って、この作品も今まで真剣に聴き込んだことが無かったこともあり、‘こんな曲やったっけ?’とHoldsworthianとしては恥じるべき認識の低さを露呈してしまったわけですね。(恥)
先輩諸氏のライナーなどを見てますと、2000年以降の来日公演では結構定番になってたようです・・恐れいりました!
気を取り直して(笑)サウンド面では、Waltのペットが再び登場・・‘Paris,Texas’でしたっけ・・ナスターシャ・キンスキー主演のあの映画みたいなイメージを思い浮かべてしまいます。
テーマが最後に来る構成は、前作からのアイデアを踏襲したものでしょうか・・一押し!(ToT)

#6.Downside Up:
逆説的なテーマが続くのがちょっと気になりますが・・テーマは割りとはっきりしたメロディでSynthaxeを使ってるようですね。
音色が今までに聴いたことがないようなブラス系でかつ深いのが面白いです・・この辺はWaltの影響かも。
この曲のみChad Wackermanに変ってます・・打って変わっていいドラムだわ。(笑)
途中から入れ替わるギターソロもいい感じですね。

#7.Eidolon:
Synthaxeらしい音でのスペーシーな演奏です・・本作のなかではちょっと浮いてる感じも否めませんね。
しかしながら、逆に一番先生らしい曲と感じられるのもまた事実だったりします・・妙に気持ちいい小曲であります。
それから、散々けなしてきたNovakもこの曲でのプレイに関しては脱帽です・・ゴメン、上手いじゃん!

#8.Above And Below(reprise):
おそらくSynthaxeのみでの駄目押しバージョン・・朝靄の中を彷徨うようなイメージを感じます。

オリジナルは以上なんですが、'03年に版権が移り‘Special Edition’と称して新たに2曲を加えたリイシュー盤が出てます。
ただ、顔となる#1をわざわざ変えて出してるのが意味不明です・・。
オリジナル盤の曲順どおり#2から#9まで配されており、#1と#10が新たに加えられた2曲です。

【Special Edition】

#1.San Onofre:
何とも不思議な曲です。
エンディングのタイムマシンで時空を超えるようなイメージのSEがポイントなんでしょうが、わざわざ1曲目に据える程のパワーがあるのかな?
タイトルは、カリフォルニアの州立公園があるSan Onofre State Beachから採ったものではないかと思われますが・・ますます意味不明。


#10.Material Unreal:
・・コメントできません。(笑)
‘Road Games’収録の‘Material Real’をいじったバージョンのようですが・・通常なら単なるボートラ扱いになりそうな曲じゃないでしょうかね。
・・オリジナル盤をリリースしたGnarly Geezer Recordsは、その‘Road Games’を初めてCD化することに成功したレーベルなんで・・やっぱボートラちゃいますか?

Holdsworth先生はバンド体制でのフルアルバムとしては、本作以降のリリースが無くちょっとさみしい限りです。
ただ、最近の音楽各誌でのインタビューでは3セットでのトリオによる曲作りをこの数年間続けているようで、上手くいけばそのうち1枚に集約した形でリリースが望めそうだとの発言が出てます。
・・あんまり期待しないで待つことにします。(笑)


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
around sixを聴きたくなってくる (dharma-kaaya)
2008-08-07 22:44:50
「Kenny Wheeler / Around Six」を聴きたくなってくるような
CDですね。

私は このドラム結構好きですよ。
息継ぎが 「ハイ、ここで 吸って。ハイ、ここで 吐いて。」
みたいな 明確すぎるドラミングが どうも好きじゃなくて…

そういう意味では かつてのヴィニー・カリウタのようなドラミングは大好きです。

何なら また ヴィニー・カリウタがドラムだったら良かったのに。

でも こういうフリージャズ系のドラムも良いかも。

確かに ドラム:ウルサイですね。
カリウタだったら もっと繊細に出来たかな?
返信する
dharma-kaaya様 (elmar35)
2008-08-08 23:15:51
初めまして、コメントありがとうございます。
Kenny Wheeler についてはトランペッターだという事位しか知らず、彼の音にも生憎まだ触れたことがありません。
いい機会なんで一度聴いてみようと思います。(笑)
このトリオで当時演ったライヴがドイツの放送局で放映されたことがあって、かつてその映像を観てからはノヴァクのイメージが180°変りました。
カリウタなら更にうるさいんじゃないでしょうか。
今後もよろしくお願いします。(笑)
返信する
お返事有難うございます (dharma-kaaya)
2008-08-09 16:03:40
本当ですね。
カリウタだと 余計に バシャバシャしそうだ。
Allan Holdsworth - "Secrets" の時のカリウタの演奏は
好きだなぁ~

「Kenny Wheeler / Around Six」は
薄~い 薄~い ふわふわした
いかにもECMレコード系のアルバムになってますよ。

私は 一時期マニアだったので 好きだけど…
オススメできるかどうか?

BGM
Khemir, Nabil 「 Parfum D^rient Et D^ccident」
返信する
dharma-kaaya様 (elmar35)
2008-08-09 22:52:38
Secretsはいい作品ですね・・私も好きです。
カリウタとの共演も、あとは客演モノしかないですからね。

ECMといえばジャケからアーティスティックなレーベルじゃないですか。
よさげな感じが凄くします。
ご紹介ありがとうございます。(笑)
返信する
クラシカルな物も良いよ (dharma-kaaya)
2008-08-10 08:33:27
elmar35様なら
きっと 聴いてらっしゃるだろうけど
Guitar Trio と言えば、
マクラフリン・ディメオラ・パコデルシア
を 思い出されると思います。

夏の暑い日に
汗だくになりながらドライヴ中に
聴くと気持ち良いですね。

まったく
タイプの違う 
落着いた大人びた
ある意味 癒し系?の
クラシカルなGuitar Trioのご紹介。

California Guitar Trio
「Jesu, Joy Of Man's Desiring」

は気持ち良いですよ。
まあ 曲も良いんでしょうけどね。
J.S.Bachの「主よ、人の望みの喜びよ」ですね。

BGM
Sun Caged 「Bloodline」

今は もっぱらインタネットラジオで音楽を聴きます。
上のBGMもそうです。
やっぱり CD買っていくとお金が追い着かないですものね。
返信する
dharma-kaaya様 (elmar35)
2008-08-10 08:43:31
おはようございます・・チャット状態?
ギタートリオですか。
こんな暑苦しい時期には丁度よいかもしれませんね。(笑)
California Guitar TrioってR.フリップ&弟子達ってやつでしたっけ?
出た頃ダチに勧められてから、実はまだ聴いてなかったりします。
これは是非聴かねばいけませんね。

ネットの楽しみ方って、ほんとに人それぞれですね。
インタネットラジオの存在も人づてに聞いてますが、イマイチ仕組みが理解できずにいます。
こゆのに嵌るのも楽しいのかもしれませんね。(笑)
返信する