すずなり
一瞬、構内の桜を散らして
六十年前の列車がプラットホームを
通過する、夢のへりで
男は戦後の幻影をおもいだしていた
目の前を
今にもこぼれ落ちそうな
すずなりのリュックサックをかついだ
亡霊がぼうぼうと通過していく
戦後の夢を乗せた
古い列車の煙にまみれ
はち切れそうなリュックサックを
背おわされた孤児たちもいただろう
夕日の海へと続く
線路の向こう
すずなりの悲鳴を乗せて発車した
希望は、真っ黒い煙のほかにあとかたもない
今も孤児たちの
汚れた顔のまぶしさ
男のうすれる記憶が桜になる
一瞬、構内の桜を散らして
六十年前の列車がプラットホームを
通過する、夢のへりで
男は戦後の幻影をおもいだしていた
目の前を
今にもこぼれ落ちそうな
すずなりのリュックサックをかついだ
亡霊がぼうぼうと通過していく
戦後の夢を乗せた
古い列車の煙にまみれ
はち切れそうなリュックサックを
背おわされた孤児たちもいただろう
夕日の海へと続く
線路の向こう
すずなりの悲鳴を乗せて発車した
希望は、真っ黒い煙のほかにあとかたもない
今も孤児たちの
汚れた顔のまぶしさ
男のうすれる記憶が桜になる