蛭に血を吸わせている猿の画
忘れるためだけに振りかえる過去もある
それは名もない画家で生涯ひとり身の叔父の生涯である
学生時代にきたえた強靱な肉体と繊細な感覚の
蒼い髭にすり寄ったひとはことごとく、
深い傷を負ってひっそりこの地を立ちさっていったという
人間的な明晰さあるいは隠微さも、不可知論そのものだったか
若いころは会うたびに少年のような鎖骨から
柑橘類の香りがしたと聞かされた
姉である他界した母には、もうなにも聞けないし
写真といえば学生服の青ざめた青年の横顔が一枚あるのみ
彼は学生闘争が嫌いだったというひとがいる
またある人は醜女しか愛せないやつだったと笑う
『蛭に血を吸わせている恍惚の猿』という題名の画をまえに
儚く短い男の人生に思いをめぐらすほど書くことの不安に躓く
実際、短詩型はきどってばかりで、散文はつめたい
ぼくはいまもこうして宙づりのままである
*今朝は今にも雨が振り出しそうな曇り空です。
今日の詩はカなり前に書いたモノを推敲したものです。
ご感想が是非知りたいと思っています。お願いします。
忘れるためだけに振りかえる過去もある
それは名もない画家で生涯ひとり身の叔父の生涯である
学生時代にきたえた強靱な肉体と繊細な感覚の
蒼い髭にすり寄ったひとはことごとく、
深い傷を負ってひっそりこの地を立ちさっていったという
人間的な明晰さあるいは隠微さも、不可知論そのものだったか
若いころは会うたびに少年のような鎖骨から
柑橘類の香りがしたと聞かされた
姉である他界した母には、もうなにも聞けないし
写真といえば学生服の青ざめた青年の横顔が一枚あるのみ
彼は学生闘争が嫌いだったというひとがいる
またある人は醜女しか愛せないやつだったと笑う
『蛭に血を吸わせている恍惚の猿』という題名の画をまえに
儚く短い男の人生に思いをめぐらすほど書くことの不安に躓く
実際、短詩型はきどってばかりで、散文はつめたい
ぼくはいまもこうして宙づりのままである
*今朝は今にも雨が振り出しそうな曇り空です。
今日の詩はカなり前に書いたモノを推敲したものです。
ご感想が是非知りたいと思っています。お願いします。