幽霊教室(近世編)
夢の儚さ
近世の文芸作品などに登場する
幽霊はいろんな習癖がある
中国から流れてきた
雲は、流れる霊気という
不可思議な力を表現するものであったという
近世の
雲は、他界と現世を結ぶ通路のようなもの
教室には金斗雲が漂い始めて
睡魔に襲われながら、…
一人の生徒は、、
足がないだけではなく腰から下もなかったという(太平百物語)
つぎの生徒は、
出現する時に下駄の音をさせる霊もいるという(怪談牡丹灯籠)
そのつぎの生徒は、
人間の魂に形を与えられた故、斬られて赤い血を流す(加婢子)
…先生は、
ほほえみながら肯いている
*
一人の生徒は、
生臭い物ことに魚の臭いをきらうもの、と思います(雨月物語)
つぎの生徒は、
亡霊も喉がわかいて水をもとめるもの、と思います(諸国百物語)
そのつぎの生徒は、
そのうえ一日に千里を行くことができる、ものです (雨月物語)
…先生は、
すこし憮然としている
一人の生徒は、
しかも遠くへ行く為に馬に乗ることもあるそうです(雨月物語)
つぎの生徒は、
死んだ時のまま成長もなければ老いもないそうです(雨月物語)
そのつぎの生徒は、
そのため長生きした妻と不釣り合いとなり、のちに死んだ妻と一
緒にこの世に出現したときに夫は二十四、五歳、妻は六十歳余り
という事態もありました(保古の裏書)
…先生は、
不機嫌の様子で、青ざめている。
まるで雲の霊気が乗りうつったかのように。
一人の生徒は、
解任したままに死んだ女が、自分の力で体内の子を産み落とせず、
通りかかった見知らぬ男に自分の腹をつき破ってくれるように頼
みこんだといいます(太平百物語)
つぎの生徒は、
母親の亡霊はこの世に残した幼い自分の子に乳をのませることが
できるものです(加婢子)
その次の生徒は、
幽霊となった女が現世の男につれそって、その男の子を生むこと
もあるということです(諸国百物語)
…先生は、
しきりに女生徒を気にしている
*
一人の女生徒は、
幽霊がまだ生きていると信じている人の目には、生前の姿を見せ
るが、すでに死んでいることを知っている者の眼には、骸骨だけ
がうつる、そうです(三十石よふね始)
つぎの女生徒は、
女の亡霊は、契りをかわした恋人の前だけには、そのかたちを見
せるが、およそかかわりなどのないひとにはまったく見えないこ
ともある、そうです(加婢子)
最後の女生徒は、
恨みある主人にだけ血しぶきの怪異を見せる召使いの女の幽霊も
いる、そうです(太平百物語)
…先生は、
しばらくこたえず、
流れる霊気がなぜ女性のみを取り込んでしまうのか
近世人の虚空に浮かぶ浮遊華、
だからとは、云わずに
先生は、超越的な存在の幽霊草をにぎり
金斗雲にのって消えたという
夢の儚さ
*参考(「日本の幽霊」諏訪春男著(岩波新書)
夢の儚さ
近世の文芸作品などに登場する
幽霊はいろんな習癖がある
中国から流れてきた
雲は、流れる霊気という
不可思議な力を表現するものであったという
近世の
雲は、他界と現世を結ぶ通路のようなもの
教室には金斗雲が漂い始めて
睡魔に襲われながら、…
一人の生徒は、、
足がないだけではなく腰から下もなかったという(太平百物語)
つぎの生徒は、
出現する時に下駄の音をさせる霊もいるという(怪談牡丹灯籠)
そのつぎの生徒は、
人間の魂に形を与えられた故、斬られて赤い血を流す(加婢子)
…先生は、
ほほえみながら肯いている
*
一人の生徒は、
生臭い物ことに魚の臭いをきらうもの、と思います(雨月物語)
つぎの生徒は、
亡霊も喉がわかいて水をもとめるもの、と思います(諸国百物語)
そのつぎの生徒は、
そのうえ一日に千里を行くことができる、ものです (雨月物語)
…先生は、
すこし憮然としている
一人の生徒は、
しかも遠くへ行く為に馬に乗ることもあるそうです(雨月物語)
つぎの生徒は、
死んだ時のまま成長もなければ老いもないそうです(雨月物語)
そのつぎの生徒は、
そのため長生きした妻と不釣り合いとなり、のちに死んだ妻と一
緒にこの世に出現したときに夫は二十四、五歳、妻は六十歳余り
という事態もありました(保古の裏書)
…先生は、
不機嫌の様子で、青ざめている。
まるで雲の霊気が乗りうつったかのように。
一人の生徒は、
解任したままに死んだ女が、自分の力で体内の子を産み落とせず、
通りかかった見知らぬ男に自分の腹をつき破ってくれるように頼
みこんだといいます(太平百物語)
つぎの生徒は、
母親の亡霊はこの世に残した幼い自分の子に乳をのませることが
できるものです(加婢子)
その次の生徒は、
幽霊となった女が現世の男につれそって、その男の子を生むこと
もあるということです(諸国百物語)
…先生は、
しきりに女生徒を気にしている
*
一人の女生徒は、
幽霊がまだ生きていると信じている人の目には、生前の姿を見せ
るが、すでに死んでいることを知っている者の眼には、骸骨だけ
がうつる、そうです(三十石よふね始)
つぎの女生徒は、
女の亡霊は、契りをかわした恋人の前だけには、そのかたちを見
せるが、およそかかわりなどのないひとにはまったく見えないこ
ともある、そうです(加婢子)
最後の女生徒は、
恨みある主人にだけ血しぶきの怪異を見せる召使いの女の幽霊も
いる、そうです(太平百物語)
…先生は、
しばらくこたえず、
流れる霊気がなぜ女性のみを取り込んでしまうのか
近世人の虚空に浮かぶ浮遊華、
だからとは、云わずに
先生は、超越的な存在の幽霊草をにぎり
金斗雲にのって消えたという
夢の儚さ
*参考(「日本の幽霊」諏訪春男著(岩波新書)