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ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

音楽・本・映画・サッカーなど興味の趣くままに書いていきます。

フィギアスケート女子フリープログラムを見る

2006-02-25 00:59:09 | スポーツ
曇り。

日の丸が初めてしかも真ん中に上がった。
オリンピックの表彰でかつて何度も耳にした君が代がこんなに誇らしげに聞こえてきたことはない。
このオリンピックで勝ちきれない日本にようやくメダルが、それも金メダルがもたらされたことで、
私の中のナショナリズムが刺激されたということはあるのだろうがそれだけではなく、荒川静香の金メダルは本当に私たちを元気付けてくれたと思う。
なにか誇らしげな気持ちになったというか、同朋にこんなすばらしいアスリートがいたのかという尊敬の思い。

ショートプログラムで僅差の3位。上にいるイリーナ・スルツカヤもサーシャ・コーエンも実力をそのまま発揮すればこの順位は動かないのではないか。
ショートプログラムが終わった段階で私は漠然とそう思っていた。

フィギア・スケートというのはあらゆる競技の中でもとりわけ集中力とか精神力といったメンタルが占める割合の大きな競技だと思う。
例えば、野球やサッカーだったらチーム・スポーツということがある。
個人が失敗しても誰かがカヴァーできればいいし、或いは9回とか90分の間で挽回のチャンスもある。
それから対戦相手という常に向き合う対象がある。
長い試合の中では研ぎ澄まされた緊張というのが常に持続しているというわけでもないだろう。

でも、フィギアはたった数分間という凝縮された時間に注目を一身に浴びて
一度でも失敗したらもう終わりという緊張感の中で演技をしなければいけない。
たった一人で。誰かと面と向かって競うわけでもない。
しかも採点競技であるから、審判や会場の観客をも味方につける必要がある。
見えない相手にたった一人で向き合うという過酷さがある。

あの大舞台で最高の力を出せるには技術やその日のコンディションもさることながら雰囲気に動じない精神力も必要で、
それらすべてをぴたっと一箇所に持ってくるというその難しさにおいては
フィギア・スケートというのは最も厳しい競技かもしれない。

とりわけオリンピックというのは4年に一度しかないわけで、
4年に一度のたった数分間に自分のもてる最高の力を出し切ってなおかつそれが相手を上回らなくては頂点に立つことが出来ない。

スポットライトを浴びた華やかな演技の裏には、そのわずか数分を最高の状態で迎えるためのこの4年間の
(荒川の場合は長野以来だから8年間)並大抵ではない努力や挫折、苦悩があったであろうと思うし、
そのことに思いを致せばやはり自然に「ああ良かったな」と思う。そしてその努力に素直に敬意を表したいと思うのだ。
それは、スルツカヤやコーエンやメダルを取れなかった村主や安藤にも等しく感じるものである。

スポーツの持つ本質的な美しさに酔いしれたひと時であった。

こころからおめでとう、そしてありがとう。

スノーボードクロス女子を見る

2006-02-18 08:26:43 | スポーツ
晴れ。

スノーボードクロスの女子を見る。
この競技は今後オリンピックの花形競技になる可能性を秘めているのではないか。
スポーツの醍醐味のさまざまな要素があるからだ。

女子も男子と違わぬスリリングな展開となった。
日本から唯一出場している藤森由香は予選のタイムトライアルを辛くも通過。
決勝ラウンドに進出した。ベスト16である。

決勝ラウンド、藤森はスタートで出遅れ最後尾で追走する。
このまま決勝通過は難しいかなと思われたレース終盤、前を滑る2位と3位の選手が接触転倒。
大逆転で藤森は2着。ベスト8に進出する。これがあるからこの種目は怖いし面白い。

藤森は結局世界の壁にはじき返されて7位に終わったが、世界の強豪に臆せず立ち向かい、果敢に攻めての7位は立派な成績だ。

そして、男子と同様劇的なドラマは女子の決勝にもあった。
決勝はアメリカのリンゼイ・ジャコベリスが大差をつけて余裕の勝利かと思われた。
最後のストレートのジャンプで、彼女は金メダルを確信して
ファンサービスと思われる、ボードを握るパフォーマンスを見せた。
ところがなんとそのせいでバランスを崩し着地に失敗したのである。
起き上がろうとする彼女の脇を、追走していたスイスのターニャ・フリーデンが通り過ぎていく。
誰も失敗しなかった最後のジャンプでまさかの転倒。
見ている観客もテレビの前の私たちも、そしてジャコベリスさえもが予期しなかった出来事が起きたのである。

スポーツを見るとき私たちは劇的な何かを期待する。そしてその何かが劇的な悲劇であることも心のどこかでかすかに期待していたりする。
それは劇的な勝者よりも劇的な敗者のほうによりドラマを見るからではないか。
勝者と敗者が存在する以上、その両極の選手の姿を必ず見ることになるのがスポーツである。
そして、その振幅が大きければ大きいほど私たちもまた大きく心を揺さぶられることになる。

スノーボードクロスは私たちの心を大きく揺さぶる要素をはらんだ種目なのではないか。

スノーボードクロス男子を見る

2006-02-16 23:40:47 | スポーツ
今大会の新種目には面白いものが多い。
このスノーボードクロスというのも大いに楽しめた。

バンクやジャンプを繰り返しながらコースを滑るもので、スノボ版の大回転といったところか。
ただ、この競技は予選と決勝ラウンドでは競技のレギュレーションがまったく異なるのだ。

予選は一人で滑り、純粋にそのタイムだけで順位を争う。そして上位32人が決勝に進む。
決勝ラウンドでは4人一組で滑り、今度は順位を争うのだ。
したがって予選では技術とスピード、決勝ラウンドではコースどりのテクニックと駆け引きが必要になってくる。
同じコースを滑りながら、戦い方がまったく異なってくるのだ。
これはまったく違う種目を見るに等しい。

速い選手は当然勝ち残れるが、決勝ラウンドでは必ずしも速い選手が勝てるわけではないのだ。
狭いコースを一斉にスタートするので、有利なコース取りを求めて煩瑣に接触が起きる。
展開もめまぐるしく入れ替わり、トップの選手が一瞬にして転倒最下位ということもありうるのだ。
前を行く選手は進路をブロックして容易にラインを譲るまいとするが、それが選手同士の接触を招く。
非常にスリリングな競技なのである。

この種目に日本からはただ一人、千村格が出場し予選を27位で通過してベスト32人に残った。
千村は4人で滑る決勝ラウンドのほうが得意だそうで、決勝ラウンド最初のレースも勝ち残りベスト16に残る。
残念ながら16位どまりに終わったが大健闘だった。

そしてファイナルのデッドヒートは見ものだった。
スロヴァキアのジーデックが先行したが、終盤アメリカのウェスコットが追い上げて逆転。
それでもジーデックが必死に追いすがり、わずか数十センチの差でウェスコットが振り切って初代オリンピックチャンピオンの座についた。
さすがにスノーボード発祥のアメリカ。どの種目でも磐石の強さを見せている。

こうなると女子も楽しみである。

スピードスケート女子チームパシュートを見る

2006-02-16 23:02:32 | スポーツ
今大会からの新種目、女子のスピードスケートの団体追い抜きという競技を見る。
3人一組で二つの国がそれぞれホームストレートとバックストレートをスタートして男子は3200メートル、女子は2400メートルを滑って争う競技である。
そして最後にゴールした選手のタイムを競うという競技である。
3人は誰がどういう順序で滑ってもよく、それぞれがどこで入れ替わってもよい。
先頭の選手が風をまともに受けるので体力の消耗が激しいが、逆に後ろの選手は風を避けられる。
スタートでは速い選手が引っ張り、途中で入れ替わる。
入れ替わりのタイミングも難しく、なるべく3人が離れないように均等にペース配分をしていかなくてはいけない。
なぜなら3番手の選手のタイムで決まるからである。

それだけではなく、対戦する各国の駆け引きも大切になってくる。
というのも1回目は単に出場チームのタイムを計り、そのタイム順によって対戦チームを決めるのだ。
たとえば10チーム出場したとして、タイム順に1位と10位、2位と9位という具合に対戦カードが決まっていく。
そして勝った方が次のラウンドに進めるという、オリンピックでは珍しいトーナメント方式なのである。
そのため1回目では対戦する国がどこになるかの駆け引きが生じてしまうのだ。

これはなかなか面白い。
めまぐるしく選手が入れ替わり、その追い抜きのタイミングや技術が結果を大きく左右するからである。

そして女子の日本チームは準々決勝でノルウェーと対戦した。
力の差は歴然としていたが、ノルウェーチームがまさかの転倒。なんと日本が準決勝に勝ち残ってしまった。
準決勝はカナダとの対戦。厳しい戦いだががんばってほしい。

スピードスケート女子500メートルを見る

2006-02-15 22:16:37 | スポーツ
女子もメダルには届かなかった。岡崎が4位に終わった過程はそのまま前日の及川の結果を見ているような既視感があった。

岡崎にとって不運だったのは二本目がイン・スタートだったことではないか。
一般に短距離ではバックストレートでインコースの選手を追う形になるアウトスタートのほうが有利だと言われる。
しかも体が出来ている二本目のほうが一本目よりタイムも良くなる傾向があるので、2本目をアウト・コースからスタートできると有利である。

岡崎は日本選手団の主将として風邪を押して開会式に参加した。それがたたったのか発熱を押してのレースとなったようだ。
だから2本目も結局1本目と同じタイムに終わった。
岡崎にしてみれば決して納得のいく滑りではなかったはずである。

しかし岡崎は決してそのことを後悔してはいないような気がする。それによって自らが積み上げてきたものが壊れるものではないことを知っているから。
自らの立ち位置を知ることができる強さを彼女は備えている。
そして岡崎という選手は所与の要件の中で力を発揮することを考える選手ではないか。
ベテランというものはそういうものであろう。

清水がどこか燃えきれないまま終えてしまったのとは対照的に岡崎は与えられた条件の中で精一杯の力を発揮していたように見えた。
どのような環境の中にあってもその中でベストを尽くすことのできる力。
その強さを見たからメダルを取れなかったこと自体は大したことではない、と思えるのだ。

どのような境遇の中でも折れないということに、我々は胸を熱くするのだ。

クロスカントリー団体スプリントを見る

2006-02-15 21:41:32 | スポーツ
クロスカントリー団体スプリントはこの大会から採用された新しい種目である。
二人一組で1キロあまりの短いコースを交互に滑る。走法はクラシカル。
この種目が意外と面白かった。やはりレース種目は採点種目に比べて分かりやすいだけに単純に楽しめる。
やはり優劣一緒に競うというのがスポーツの醍醐味の大きな要素だ。
しかもこのスプリント競技は抜きつ抜かれつのデッドヒート。
めまぐるしく入れ替わる順位に息もつかせぬ面白さがあった。

夏見円と福田修子のコンビが出場した女子の予選はかなり面白かった。
先行するフィンランドとカナダに続き一時は3位につける。
イタリアやカザフスタン、フランスなどと激しく競り合い、結果4位で決勝進出。
それにしてもスウェーデンやノルウェー、フィンランドといった北欧勢はさすがに強い。
スキーはお家芸といった感じ。
決勝でもこうした国々が上位を占めたが、日本も大健闘で8位入賞。
地味で注目度は低いが、日本はこのスプリント競技の強化に取り組んでいたそうで、一定の成果を出せたと思う。

男子はいいところにつけていたがコース変更の際に接触してしまい残念ながら決勝進出を逃してしまった。

派手なジャンプや華麗なフィギアもいいが、こういう競技にももう少し注目していいと思う。
マスコミはメダル、メダルと騒ぐのであれば、もっと地味な競技にも光を当ててその競技に人々の興味が集まるようにしないと、
競技人口も増えていかないし強化もおぼつかないのにな、と思う。

スピードスケート男子500メートルを見る

2006-02-14 21:48:08 | スポーツ
晴れ。

オリンピックが始まって早くも寝不足気味。
スピードスケート男子500メートルは1回目をライブで見たが2回目はとても起きていられないと思い、
とりあえず録画し、朝5時に起きて見た。それでも睡眠時間は4時間弱。

今回の日本勢でもっともメダルが期待され、注目されていた種目がこの男子500メートルだろう。
昨年の秋に世界記録を塗り替えた加藤条治は最もメダルに近いと言われていた。
「34秒台と金メダル」を報道陣に公言してはばからない加藤。
それに対して清水宏保はここのところずっと調子を落としていて
Numberのインタビューでは、「簡単にいくようでは面白くない。苦しんで勝ち取るから意味がある。予定通り」と、
このスランプをむしろ楽しむかのような発言で自らを鼓舞していた。
対照的な二人だが、きっと何かをやってくれるのではないかという期待があった。深夜のテレビにかじりついたのもそのせいだ。

一本目。日本勢はまず及川佑がレーンに立つ。
フライングで緊張が走るが、すばらしいスタートで最初の100メートルが9秒59という好タイム。35秒35で好位置につける。
清水はスタートでもたつき得意のスタートダッシュが見られない。
体もどこか重そうで何となく切れを欠いたままゴール。35秒66と平凡なタイム。
続いて滑った長島圭一郎は清水より1/100秒遅いタイム。

さあ次が加藤だと思った瞬間、前走の韓国人が転倒してしまう。氷が大きく削れて補修のため中断してしまう。
ここが勝負のあやだった。10分近く中断してしまったおかげで加藤の集中力が途切れてしまったのだ。
こればかりは本人も予想できなかったに違いない。勝負は本人のコントロールできないところにあったが、それもひっくるめて勝負だった。
結局、35秒59と出遅れてしまう。
そしてジェレミー・ウォザースプーンと同じ組で滑ったジョーイ・チークが唯一の34秒台をマークしてメダルへ一歩近づいた。

二本目。清水は結局二本目も精彩を欠き36秒78。長島が35秒47で清水をリード。続いて加藤の二本目。チークの記録を考えると34秒台がほしい。
残念ながら35秒を切ることはできなかったが35秒19と意地を見せた。
しかしメダルには及ばなかった。何か本人にとってももやもやとしたものが残る結果だったのではないか。

そして日本選手の最後に出てきたのが伏兵の及川だった。
コーナーをうまくまとめて35秒21という好タイムをたたき出す。この時点で2位。
最終組の韓国の李とチークの結果次第ではメダルを手にすることができる。
しかし、加藤とは対照的に一本目で波に乗ったチークとそれにうまく引っ張られた李が及川の結果を上回り、すんでのところで及川はメダルを逃した。

聞けば及川は大学卒業後実業団から声がかからず、一般入社で入った会社の社長に直談判して競技を続けてきた苦労人だそう。
惜しくもメダルはならなかったものの、最高の舞台で実力を出し切った。
レース後の涙は久しぶりに見るすがすがしい涙だった。

清水がひとつの時代の移ろいを感じさせ、若い加藤がその若さゆえに本来の力を発揮できない中で、
及川のような選手が活躍してくれたことで、少なくとも私は大いに満足できた。
これがオリンピックなのだと。

女子ハーフパイプ予選を見る

2006-02-13 21:03:51 | スポーツ
晴れ。

女子ハーフパイプの予選を見る。
男子のときにも書いたが、このスノーボードのハーフパイプという競技はとにかく失敗が多い。
完全に演じきることができればまだいいほうなのだ。女子も次々に失敗する。
そして女子を見て思ったのは、男子との技術の大幅な違いである。
男子のダイナミックなエアの演技を見ると女子の演技は大きく見劣りする。
その違いは例えば体操やフィギア・スケートなどほかの採点競技の比ではない。
したがって男子と女子では基本的に競技の見るべきポイントが違っているのだ。
女子の場合にはエアの独創性よりもむしろ、安定性や美しさに重きが置かれているようなのである。
ほとんど違う競技と言ってもいいほどである。

さらにこれは男子のときにも書いたのだが採点のばらつきがすごく大きい。
ジャッジによって2点近く開くこともざらである。
そのせいかジャッジの予想がつかない。
素人目にこれはエアも高いしいい滑りをしたなと思っていても得点はたいしたことなかったり、
かと思えば高さもたいしたことないしちょっと無難に過ぎるなと思っていると思いのほか得点が高かったりする。

ハーフパイプというのは競技そのものもジャッジも未熟な感が否めない。

それでも予選は日本選手が決勝進出できるかどうかで非常にエキサイティングだった。
中島志保が安定感のある演技で早々と決勝進出を決めたほか、山岡聡子と伏見知加子もスリリングな争いを経てファイナルに滑り込んだ。
一方で今井メロは転倒して立ち上がることができず、無念の敗退となった。
今井はまだ18歳。兄の成田童夢とともにこの悔しさを糧に4年後を目指してほしい。

スノーボードと滑降を見る

2006-02-12 22:19:46 | スポーツ
スノーボード男子ハーフパイプの予選と男子の滑降を見る。
それにしてもテレビを通して見るアルプスの空の藍に近い青がとても眩しい。
このまま天気に恵まれて競技が続くことを望みます。

ハーフパイプでは結局日本選手4人は決勝に進めず。それにしても、ハーフパイプという競技はまだまだ発展途上の印象を受けた。
とにかく失敗する選手が続出したのである。
この競技についてはとにかくまったくの門外漢であるが、そもそも採点の基準がどこにあるのかがよく分からない。
採点を見ても審判によってかなり点に開きが出ることも多く、
点を伸ばすために無理に難度の高い技を繰り出す選手が多いのではないかと思った。
それによって失敗する選手を多く出しているのではないかと。
そういう意味でこの競技はまだ発展途上のような印象を受けたのである。

ダウンヒルはオーストリアのバルセホーファーがいいすべりを見せてトップに立ったが、
最後から2番目に出てきたフランスのデネリアがすばらしく美しい滑りによって0.72秒の差をつけて劇的な逆転優勝を飾った。

ダウンヒルは120キロを超えるようなスピードで滑っていくので、一瞬の判断の迷いやミスが致命的となる。
とにかく単純に速ければいいというのではなくて、いかにコース取りを的確にできるか、
ジャンプをコンパクトにまとめるかによってタイムロスを少なくし、さらに緩斜面でスピードに乗ることでタイムを稼ぐ。
そしてそのコンビネーションをうまく処理できた選手のみが上位に残っていけるのだ。

新しい競技と伝統的な競技を見たが、競技としての成熟度の違いによって私にとってはダウンヒルの方が興奮できた。
そこには競技を決する基準の明確さがあるのではないかという気がする。

女子モーグル決勝を見る

2006-02-12 15:35:02 | スポーツ
スキー女子モーグルの決勝を見る。
予選から見ていたが、決勝は真夜中ということでさすがに見れなかったので、朝の中継録画を見る。
結果を知らずに見たのでライブで見るのと同じ興奮が味わえた。

漆黒の闇に照らされる真っ白な一本の道。スタートラインの向こうには丸い月がぽっかりと浮かんでいる。なんと美しい光景だろう。
テレビでさえ美しいと思ったのだから現地で見られた人は本当に幸運でしょうね。

冬の競技は曲芸のようなものが多い。このモーグルもそうだし、スノーボードやフィギア・スケートなどもとりあえずは誰でもがすぐにできるといった類の競技ではない。
それゆえにウィンター・スポーツの多くはやることはもちろん見ることも難しい。

モーグルは3つのパートの総合的な技とスピードを審査する競技である。
まず滑降のタイム、次にこぶを滑降するときの姿勢やスピードなどの技術を競う「ターン」、
そして2箇所に設けられた踏み切り台からジャンプして空中での演技を競う「エア」である。

ターンを着実にきれいにこなそうとするとスピードが遅くなる。
そしてエアであるが、これも最近縦回転を伴った難易度の高い技ができるようにルールが改正されたが、回転系の大技は当然失敗のリスクが高くなる。
しかし大技は成功すればその分採点も高くなる。
スピードと演技の質を破綻しないように維持し続けるということがこの競技の本質的な面白さであろう。

上村愛子は早くから3Dといわれるひねりを入れた縦回転の大技に取り組み、3Dに関して言えば世界の第一人者といわれていた。
そしてその上でターンの美しさを保ちながらスピードを上げていければ、メダルにも手が届いていたに違いない。
実際、決勝での見事なエアが評価され、彼女は一時メダル圏内につけていた。
しかし、彼女の後から演技した選手たちの多くがタイムで彼女を上回った。
そして的確なターンとスピード、確実なエアを演じた選手たちが結局はメダルを手にしたのだ。
モーグルの採点基準はターンのウエイトが高い。
つまり基本的なターンの技術とスピードを確立することは大きなアドバンテージになるのである。

モーグルのことをよくは知らない私でも、
おそらく上村にはなにがあっても破綻しないターンをもうひとつの武器としてブラッシュアップすることが課題として残ったということが分かった。
世界と伍していけるだけの滑降のスピードとターンの技術。

5位入賞は立派な記録だが、彼女が表彰台に立つために今一歩足りなかったものが4年後に彼女を向かわせるのではないか。
なぜかきっと彼女はまだ納得していないような気がするのである。