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ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

音楽・本・映画・サッカーなど興味の趣くままに書いていきます。

Awakening/佐藤博

2006-11-02 23:57:27 | 音楽
もうただただ懐かしい。1982年発表のアルバム。82年は僕にとって特別な年だった。
僕は高校一年生で赤いギンガムチェックのシャツにリーバイスの501を合わせて緑のコンバースのローカットを履いていた。
ステディな彼女が初めてできて、大滝詠一の『A Long Vacation』と山下達郎の『For You』を二人で口ずさんだ。
携帯なんかない時代に交換ノートをつけて、自転車でどこまでも走り続けた。16の夏。
あれから20年以上を経ても僕の中の核をなす部分は変わっていないような気がする。

この佐藤博のアルバムもそんな懐かしさとともにある。
いささか時代の雰囲気を感じさせるが決して古くはない。
それは佐藤博が当時の最新のテクノロジーに貪欲に挑んだ結果である。
もちろん楽曲のもつ力も大きい。そして彼の独特のタッチのピアノも。
山下達郎が『For You』に収録されている「ふたり」のピアノをどうしても佐藤博に弾いて欲しくて
ロスまで口説きに行ったという逸話も残っている。
そのお返しなのか達郎が2曲でカッティング・ギターを弾いている。

今も休みの日になると年甲斐もなくコンバースを履いている。
僕の中では「あのころ」とともにあるエヴァー・グリーンだ。


Randezvous In Rio/Michael Franks

2006-11-01 22:00:28 | 音楽
3年ぶりのMichael Franksの新作。すでに数ヶ月前からCDショップで目にしていたけどようやく手元に。

3年前の『Watching The Snow』は冬のアルバムだった。
彼そのものといった雰囲気で展開されるウィンター・ソングの数々はとてもハート・ウォームだった。
そして、今作はジャケットのような強いコントラストを持った夏のアルバムだ。
タイトルに"Rio"が出てくるように、ボサ・ノヴァを意識においた作品。
『Watching The Snow』からはコンセプトを変えた連作といってもいいと思う。

レイド・バックした彼のヴォーカルは『Sleeping Gipsy』の頃とほとんど変わらない。
独自の世界観があってその普遍性がまたいい。
この歳になってくると「変わらない」ということがひとつの重要な価値観になってくる。
そういう意味でこの新作でも変わらないMichael Franksは安心して聴ける。

彼の音楽を聴くとゆったりと人生を過ごそうじゃないかという気にさせられる。
裏ジャケの、昔と比べるとずいぶん穏やかな表情をしている彼を観ると余計にそう思う。
これから冬に向かうのでちょっと間をおいて春先になったらまたゆっくりと聴いてみたい。

in Tokyo/Joao Gilberto

2006-10-30 22:43:21 | 音楽
晴れ。

João Gilbertoが再び来日する。来週のコンサートに行くので前回の初来日公演時のライブ盤を聴いている。

初めての来日でずいぶんと日本のことが気に入ったようで、御歳75歳での再来日公演は非常に嬉しい。
特に前回の来日公演を見逃した私としてはなおさら。

ブラジルは日本から最も遠い国であり、いくらレコードでボサ・ノヴァをたくさん聴いても、その本質的なところはよく分からなかったりする。
日本ではボサ・ノヴァが雰囲気を楽しむイージーリスニングであったり、ボサ・ノヴァ風といったアレンジを施された流行歌であったりするからだろうか。
遠い国の遠い音楽をまるでファッションとして扱う日本の音楽業界のある種の貧困さを感じざるを得ない。
そしてそれにすっかり毒されている自分にも・・・。

そういうことを考えると、この2006年という時代に日本でJoão Gilbertoの生のギターと歌声を聴くことができるのは奇跡に近い体験かもしれない。
まさに本物に触れることができる数少ない機会。
ボサとは何か、その一端でも堪能できればと思う。
そしてその至福のひと時へのオーバチュアとしてこの静かな情熱で満たされた盤が語りかけてくれるものは多い。

Ray Kennedy

2006-10-15 11:27:00 | 音楽
ライナーノートを読むとRay Kennedyという人は華麗な人脈を誇った人だったらしい。
フィラデルフィア出身で若いときにはフィリー・ソウルの御大Kenny Gambleのプロジェクトに参加したり、
Jerry Lee Lewisのバックを務めたり。
Marvin Gayeとコラボレーションしたり、Jimmy pageと親交を持ったり。
KGBのメンバーに参画したり、Michael Schenker Groupで歌ったり。

なんだか経歴や人脈だけを見るとすごい人のようだけど、どうもそのあたり器用貧乏という気がしないでもない。
華麗な経歴の割にこの人自身はあまり脚光を浴びたという感じがしないからだろうか。

このアルバムは、1980年に当時気鋭のDavid Fosterをプロデューサーに迎えて
Steve Lukather、Steve Porcaro、Jeff PorcaroらいわゆるTOTO人脈をバックに制作されている。
注目すべきはBeach Boysに提供した「Sail On Sailor」のセルフ・カヴァー。
なんとこの人Beach Boysとも接点があったんですね。

アルバムの内容は、ハード&メロウなAOR路線。
この人の出自なのか、歌い方にもソウルフルな一面があって面白い。
でも僕個人としては意外性がなくてあんまり魅力的ではなかった。
なんとなく中途半端。これならTOTOを聴いている方がいいなあ、という感じ。

やっぱり器用貧乏なんだろうな、この人。





Oasis/Jimmy Messina

2006-10-09 15:00:57 | 音楽
アルバム・ジャケットを見て初めて気がついたのだが、"Jim"ではなく"Jimmy"なんですね。
ソロ名義のミュージシャン表記を変えてきたところに長らくバンドマンとして過ごしてきた彼の、ソロ作への思い入れが伝わってくるような気がする。

彼はとても器用な人ではないかという気がする。
エンジニアとしてスタジオで働いているときに乞われてBuffalo Springfieldの一員となる。
その後もPocoやLoggins & Messinaでもカントリー、フォーク、R&Bの要素を織り成したサウンドを一貫して作り続けてきた。
Jim Messinaの音楽をはじめて聴いたのがBuffaloであり、Pocoであった私には
長らく彼はそうしたダウン・トゥー・アースな音楽の作り手のひとりというイメージが強かった。
だからこのソロアルバム『Oasis』をはじめて聴いたときには驚いたし、
AORの名盤としても非常に高い評価を受けているというのも意外な気がした。

しかし彼のキャリアを改めて調べてみると若いときには
Dick Daleを愛するサーファーとしてサーフィン・バンドで演奏していたこともあるという
典型的なカリフォルニアのビーチボーイだったそうだから、風の香りのする音楽を作ることに関しては、なるほど頷ける。
ラテン・フレーバーも感じさせるのは彼がイタリア系であることとも関係があるのかもしれない。

ちょっと鼻にかかった独特の歌声を聴くのは午後がいい。できればカンパリ・ソーダなどを舐めながらゆったりと身を沈めたくなる。

What's Wrong With This Picture?/Andrew Gold

2006-09-11 21:24:49 | 音楽
曇り。

Andrew Goldは日本においてはめちゃくちゃメジャーな存在ではないが、ディープでコアなファンを持っている。
70年代のウェストコーストを代表するミドル・オブ・ザ・ロードのアーティストだと言える。
10CCのGraham Gouldmanとコンビを組んでWaxを結成したことからも分かるとおりブリティッシュ・ロックとの共通点も多い人だ。

大ヒットした「Lonely Boy」が収められているこのアルバムには、
Kenny Edwards、Russ Kankel、Leland Sklar、Danny Kortchmarら西海岸の名手たちが名を連ねている。

素直で屈託のないカラッとしたロマンティシズムはいかにもウェストコースト。
アレンジとギターテクニックの妙はスタジオミュージシャンとして、またプロデューサーとしてLinda Ronatadらを手がけてきた手腕のなせる業だろう。
本当に好事家だけが知るような渋さがある。
派手さはないけれども何度も聴いているうちに彼のよさはじわじわと分かってくる。

ちなみにこのアルバムジャケットは間違い探しになっているという凝ったつくりも当時話題になった。
ヴィジュアルも中身も遊び心が随所にある楽しいアルバムでもある。

Sometimes Late At Night/Carole Bayer Sager

2006-09-04 22:56:10 | 音楽
Carole Bayer Sagerというアーティストのイメージはやはりアルドン・スタッフライターの一人ということだろうか。
シンガーとしての彼女よりも先に作詞家としての彼女の存在を知ったからである。
そして、あのBurt Bacharachの奥さんとしてのイメージ。
シンガーとしての彼女の評価を知ったのはもっとずっと後のことだったと思う。

そしてこのアルバム。
作家としてのイメージが先行していた彼女がBacharachとの結婚を前に彼をプロデューサーに迎えて作ったのがこのアルバムである。
このアルバムは一部で高い評価を得ている。

Jeff Pocaro,Lee Sklar,Lee Ritenour,Michael Jackson,David Foster,Neil Daimond,Melissa Manchester,Jim Keltner・・・
錚々たる顔ぶれを迎えて作られた、ラブソングの数々。
私生活でも充実していたころの作品ということもあってクォリティが高い。
声の質が美しいタイプのシンガーとは決して言えないが、気持ちの張りが歌に現れている。
締まった演奏とそこはかとなく漂うバカラック節もいいアクセントとなっている。

大人しい雰囲気のアルバムだが、秋の夜長に一人ヘッドフォンで聞いているとゆっくりと心が満たされてくる。

Down In L.A./Brewer & Shipley

2006-08-08 22:10:33 | 音楽
Nick DeCaroシリーズ。
今回はシンガーソングライターのデュオ・グループ。
日本ではほとんど無名に近いが「One Toke Over the Line」というトップテン・ヒットもある。
Buffalo Springfieldにも似たテイストのフォークロック・デュオ。
コーラスの感じがRichie Furayって感じ。

A&Mではこのデビューアルバムが唯一。この後はカーマ・ストラに移籍している。
A&Mの縁でNick DeCaroが参加しているのだろう。ストリングスとホーンのアレンジで参加している。
プロデューサーにはJerry Riopelleが参画している。
バックにはJim Gordon、Hal BlaineのドラマーコンビにJoe Osbornのベースと、レッキングクルーが参加しており、
なるほどそうした雰囲気はあるが、こういう感じのグループでも彼らがバックをやっているのはちょっと意外な感じ。
Nick DeCaroにしても本職外で本来の持ち味が発揮されているという感じではないが、
貪欲にくる仕事をこなしていたのが伺える。

しかし、アメリカのポピュラーミュージック界というのは、
広いのか狭いのかよく分からないところがまた面白かったりする。
思わぬところで意外な出会いがある。

Honey/Andy Williams

2006-08-01 22:47:03 | 音楽
曇り。

Nick DeCaroがアレンジとプロデュースを担当したもう一枚のAndy Williams作品。
当時のヒットソングを彼が歌うという趣向で選曲が意外と渋い。
Jimmy Webbの「By The Time I Get To Phoenix」やClassicsⅣの「Spooky」、Associationの「Windy」など、
以前に紹介した『Love Andy』に比べるとどちらかというと地味目の佳曲が並んでいて、それがまたいい。
ただ逆に「Love Is Blue」みたいな曲も入っていて、
あの当時のアメリカでAndy Williamsに歌わせるにはまあこれもありかとも思うのだけど、
現代的な視点からするとちょっと退屈な曲も確かにある。

Nick DeCaroも自らの実験の場という感じで意欲的な仕事をしていて、曲が本来持っている美しさを十二分に引き出している。
特に「Windy」はコーラスの取り入れ方が出色。
「Spooky」など彼が普段は手がけないような曲調もしっかりとこなしている。
若き日のNick DeCaroワークスを知るにはいい一枚と言える。

Bobby Caldwell

2006-07-20 23:05:32 | 音楽
曇り。

もう15年も前になるだろうか。Bobby Caldwellの名前を聞くと
ニューヨークを旅行したときに当時日本で大ヒットしていた『Heart Of Mine』のカセットを持って行ってウォークマンで聴いていたことを思い出す。
ケネディ空港からマンハッタンへと向かうタクシーの中でBobby Caldwellのあの鼻にかかった歌声を聴いたとき、
ああニューヨークに来たな、とちょっとした感慨にふけってみたりした。

このアルバムはAORの古典的名作といってもいいだろう。デビューアルバムにして同時に彼の代表作でもある。
K.C.& The Sunshine Bandで知られるマイアミのTKレーベルから原盤がリリースされていることからも分かるとおり、
マイアミ・ソウルとして売り出そうとされたのだ。
なんとなくStevie Wonderあたりを意識した曲調やソウル・マナーを取り込もうとしたあとが伺える歌い方。
ただ、彼の場合にはブルーアイド・ソウルの範疇を超えたスマートさがある。
「Can't Say Goodbye」の流れるようなリズムとメランコリックなメロディとの調和や、
「風のシルエット(What You Won't Do For Love)」などから匂いたつ都会の陰影などはBobby Caldwellの真骨頂ともいえる。

20代の頃週末の夜になるとこんな音楽をBGMにしながら首都高速を意味もなくドライブしたことを思い出す。
バブルな懐かしい思い出・・・。