早いもので休暇が始まって折り返し地点を過ぎた。自然・アウトドアがテーマの旅なので、お天気が優れないと楽しむことが難しい。4日目のロトルアに移動してからというものの、毎日が梅雨空のような
模様で
も低く、景勝地に行っても景観が全く望めないことばかり。
いい加減に晴れて
ほしい、と思っていたのだが、今朝は
で降雨の気配なし。これは良かったと、
トンガリロ国立公園方面に向かうことにした。トンガリロ国立公園は1894年にニュージーランドで初の国立公園に指定され、世界的に見てもアメリカのイエローストーン国立公園に次いで2番目に古い。北島で人気のトレッキングコース
「トンガリロ・アルパイン・クロッシング」があるところとしても知られている。
朝食を済ませて出発し
まずは買い物。今日の昼食と夕食、明日の朝食と昼食分を買う。冷蔵庫が小さいので、冷蔵が必要なものの買いすぎないように注意しながら献立を決める。全国チェーンのスーパー「ニューワールド」で品定めをしていたら、北島北部名物の
マケトゥ・パイ(Maketu Pie)を見つけた。
ニュージーランド(と英国圏の国々)でパイは手軽な食事で、日本で言うとかけそばのような感覚だろうか。売っている店やメーカーによって味は当たり外れがかなり大きい。普通、市販のパイといえば、挽肉や牛肉の煮たのが中に入っているものが多いが、海に近い町マケトゥで作られているパイは、なんとマッスル(ムール貝)入りのものがあった
「珍しいから食べてみたい! でも外しちゃったらどうしよう……」
という複雑な思いから、「マッスル入り(Mussel)」と無難な「牛ひき肉とチーズ入り(Beef Mince and Cheese)」を一つづつ買うことに。味がどんなものかはお昼の楽しみに。
トンガリロ国立公園、ファカパパ村にある、DoC(Department of Conservation, 環境保全省)のファカパパ・ビジターセンターへ。夏の忙しい時期には、一日の訪問者が6000人に達することもあるという、利用者数が断トツ最多のDoCビジターセンターだ。ここで天気予報や登山道の状況を調べる。今日の天気はこれから晴天に向かい、明日の天気は曇りのち晴れ。よぉしきた、これは決行するっきゃない!! 今日は足慣らしに周囲の日帰りウォークを2つばかり、明日は
トンガリロ・アルパイン・クロッシングを歩こうかな。
活火山のトンガリロ(Tongariro, 1967m)、ナウルホエ(Ngauruhoe, 2291m)、ルアペフ(Ruapehu, 2797m)の三山がある国立公園なので、火山に関する展示や、マオリに関する展示が充実していてとっても興味深い。
マオリ語の地名は、ハワイの地名に似ているが、それもそのはず、ハワイのチャモロもマオリも、同じポリネシア文化圏に属するので言葉が似通っているのだ。数年前、日本のテレビ番組で、KONISHIKIがニュージーランドを訪れてマオリの人々と話した時、言葉がとてもよく似ているのに驚いていた。晴れ間が出るのを待ちながら、ビジターセンターを隅から隅まで見て・読んで時間を過ごす。
DoCのビジターセンターはどこも、展示が素晴らしく充実していて見ごたえがあり、環境保全へのアツいメッセージを感じる。
キャンピングカーに戻り、少し早目の昼食。さっき買ったパイ二個を、キッチンのグリルで温めなおして、猫かぶりがマッスルパイを、ねむりねこ
は牛ひき肉パイをそれぞれ食べる。一口食べるなり、二人とも「おいしい
」と目を輝かす。パイ皮が薄くサクッとしてて中の具はたっぷり。マッスルパイは、マッスルのチャウダーをパイにしたような感じで、大振りのマッスルが2~3個も入ってて、ホワイトソースやタマネギとよくからんでいる。牛ひき肉パイは、挽肉がたっぷりで、チーズがとろ~りと溶けている。これで1個3ドル程度なのだから、もう言うことなし
クイーンズタウンでも手に入んないかなぁ(←無理です)
思いのほかおいしかったパイで腹ごしらえをした後は、往復2時間の
タラナキ・フォールズ・トラック(Taranaki Falls Track)を歩く。スタート地点が既に標高1000m以上なので周囲に背の高い木々はなく(ニュージーランドは緯度が高いので標高1000mぐらいが森林限界)、タソックなどが生える低い茂みを縫うようにトラックは続く。ところどころ、火山の跡地特有のゴツゴツした岩が転がっている。
上空は徐々に雲が切れ、遠くにナウルホエ山が美しいコニーデ型を青空に晒した。南島で見られる、地殻の隆起で造られその表面を氷河が削った複雑な起伏のある山々と異なり、あくまでなだらかで左右対称の稜線。頂上付近に残雪のあるナウルホエは溜め息が出るほど美しい
トラックのハイライト、タラナキ滝に到着。落差がけっこうあり、水量も豊富、流れ落ちる姿も美しい滝だ。岩伝いに滝の裏側に行けそうだったが、メニエール病の後遺症で平衡感覚が衰えているねむりねこは止めておくことにした。それにしても、整備の行き届いた登山道を1時間程度歩いただけで、こんなに美しい風景に出合えるなんて。高度な登山技術や並外れた体力がなくても、手軽に本格的な自然の造形美を楽しめる環境が整っているのが、ニュージーランドの実に素晴らしいところ。もちろん、技術や体力の優れた人達は、頑張った「ご褒美」とでもいうべき体験だってできちゃう。
次に歩いたところは、
シリカ・ラピッズ・ウォーク(Silica Rapids Walk)というトラック(コース)で、往復2時間の清々しいネイチャー・ウォーク。
ハイライトは、象牙色をしたケイ土(Silica)の川底に勢いよく流れる清流(Rapids)。水量が多いと色が白っぽくなるため、川を眺める場所によって微妙に色が異なる。明るい色の川底は、周囲の土や石とは明らかに色が異なり、ちょっと不思議な印象を与える。
時間が経つにつれお天気が回復し、北島最高峰のルアペフ山までがくっきりと見えるようになったので、ドライブを兼ねてルアペフにあるスキー場のひとつファカパパスキー場まで行ってみることにした。道路は、ゲレンデの駐車場まで舗装されており、路上に雪もなかったので
でも楽に登れた。
素晴らしい景色を背景に、キャンピングカーの記念撮影をした。「馬子にも衣装」と言うが、どこにでもある車が、雪化粧した山と青空のお蔭で輝いて見える。内部はこんな感じ。
運転席の上部、後部エリアの上部、そして後部エリアの長椅子の下は収納スペースとなっていて、慣れると結構使い勝手がいい。後部エリアは、日中はリビング、夜は向かい合わせの長椅子の間に、テーブルと、折りたたみ式の板(日中は長椅子の下に収納されている)を渡して、そのうえに灰色のクッションを並べるとベッドに早変わり。二人で並んで寝て充分ゆとりがある。
今晩泊るところは、DoCが管理するキャンプ場(Conservation Campsite)。施設が完備された私営のホリデーパークとは大きく異なり、設備は汲み取り式トイレと水だけ、というきわめて簡素なキャンプ場だが、裏を返せば、余計な人造物が何一つない自然環境の中で一夜を過ごす贅沢を味わえる貴重な場所である。料金は一人一泊7ドルと格安。
達以外には3台しかキャンパーがいなくて、閑散としているのもまたよろしい。
今晩は初めてキャンピングカーでの料理。車内に煮炊きのニオイが残るのはちょっと勘弁してほしかったので、ご飯、みそ汁、アボカドの刺身、冷やしトマト、アスパラガス、オイルサーディンというヘルシーメニューになった。
オイルサーディンなんて、日本じゃ見向きもしなかったけど、背の青い魚が手に入らない(たぶん、英国系ニュージーランド人の味覚に合わないから)この国に暮らすようになってからぐっと食する機会が増えた。特に、イワシの身をタテ半分に割り、ショウガ醤油にたっぷり絡めてアツアツご飯に乗っけたイワシ丼の旨さと言ったら!! 今回の旅は、不覚にもおろし金を忘れたので、イワシどんぶりは実現できなかったけど、気にしない、気にしない。おままごとのようなガスコンロだったけど、ご飯はおいしく炊けて、アボカドの熟れ具合も良く、アスパラの瑞々しさは言うまでもなし、デザートにはマンゴー・アイスクリーム付きの大満足のアウトドア・ディナーとなった。
外は風がものすごく強いが、夜空には満天の
…… あした天気になぁれ