先日、自主トレとして、
ベン・ロモンドを自己最高タイムで完歩した理由。それは、グリーンストーン渓谷(Greenstone Valley)とケイプルズ渓谷(Caples Valley)の間に鎮座するホーム・ヒルという山(Home Hill, 1608m)を猫かぶりと歩くためであり、さらにホーム・ヒルを歩く理由は、宝石のように美しい高山湖のスリーピー・ホロウ(Sleepy Hollow, 1700m)に行くためのトライアルなのだ。
ブログ読者(クイーンズタウン在住の読者も含む)の99.99%は、「それなぁに」という反応だと思うけど、分からないのが普通、分かる人は尋常じゃない山好き=ねむりねこ
の同類項。「ニュージーランドって、どんなところだろう……」と思ってこのブログを開いたアナタは超ラッキー
これを知っておけば「自称・ニュージーランドの山博士」としてワーホリ仲間に自慢できます(周囲をドン引きさせる覚悟・要)。
さて、ホーム・ヒルは、クライミングやロープワークなどの登山技術は不要だが、トラックや標識が全くなく、地形図やコンパスを頼りに己のいく方向を確認しながら道なき道を歩く技術(ルートファインディング・スキル)が求められるので、上級者向きのトランピングである。
もし位置を確認するのなら、ニュージーランドで市販されている地形図(Topographical Map、通称 Topo Map)の次のいずれかが必要。
Terralink Recreation Mapの"Greenstone and Routeburn"
Parkmapの"Greenstone and Routeburn"
旧地形図1:50,000のE41Queenstown"
新地形図1:50,000のCB09HollyfordとCB10Glenorchy
グリーンストーン小屋を朝7時半ごろ出発。トラックをグリーンストーン駐車場に向けて歩き、スリップ・フラットの小川(Slip Stream、上流に雨天用の橋あり)を渡って少し行った草地を、北へ向けてずんずん登っていく。登山道なんかない本当のバックカントリーだから、地形図と太陽の向きをたよりに草地から森へと入っていく。途中、シカのこさえた獣道があれば、それをたどった方が歩きやすいのでそうする。
森を抜けて尾根に出る。ここから先は、頂上を目指して稜線の緩やかそうなところを見定め、草地を藪こぎしたり、岩場やガレ場をトラバースしながら、ガンガン辿っていく。
<ワカティプ湖(Lake Wakatipu, 奥)とレレ湖(Lake Rere, 手前)。このアングルのショットは珍しい>
幸か不幸か、この日は快晴。眺めがよいのは嬉しいことだが、日差しを遮る物がない稜線上はとにかく暑い。すぐに水がほしくなる。「こりゃ今日は暑さとの闘いだな」と思っていたら、ある地点から心地よい涼風が吹き始め、一気に楽になる。昼食を取った地点で、近くに小川を発見。たらふく水を飲んだ上で、水筒とハイドレーションパックを満タンにする。この先、他に給水できる場所があるか分からないからだ。
頂上付近はガレ場、岩場のオンパレード。
メニエール病でやられた平衡感覚が、リハビリの成果でほぼ元通りになったおかげで、こんな足場の不安定な場所でも恐怖を感じることなく、積極的に登り続けることができる。健康であることって、何て素晴らしいのだろう。
やった、頂上に立った
これまでの苦労が報われる一瞬。
この達成感と爽快感は、何度経験しても本当にサイコーだ。頂上は標高1608mとそう高い方ではないんだけど、他の高い峰々から離れたところにあるので、結構な絶景である。手当たり次第に周囲の写真を撮りまくる。
<ピジョン島 (Pigeon Island)、ピッグ島 (Pig Island) とリチャードソン山脈 (Richardson Mountains)>
<トゥース峰(Tooth Peak, 2061m>
<ケイプルズ谷 (Caples Valley) >
<エイルサ山脈 (Ailsa Mountains) >
<たぶん、これもエイルサ山脈>
<ボンプランド山(Mt Bonmpland, 2348m)とボールド峰(Bold Peak, 2128m)スリーピー・ホロウのあるあたり>
<アーンズロー山 (Mt Earnslaw, 2820/2830m) >
登ったら、あとは下るだけ……
……なんだけど、この下りが登り以上に曲者だった。この時点で日が傾き始めており、うす暗くなる前に森から出るために、登りとは違うルートを辿ることになった。つまり、稜線に出ずに草地や灌木の生い茂る斜面を延々とトラバースしたのだが、まぁ、これがスゴかった。
この草地といったら、植物が密生してて地面がまったく見えやしないのだ。で、適当に灌木を踏みつけて歩いていると、いきなりズボッと落ちたり、ズルッとずっこけたり。これを越えれば森なのだが、その森はまだ遥か彼方、だんだんと参ってくる気分を紛らせるのは、これまた楽じゃなかったりする。
そのうち、手当て済みの靴ずれが酷くなりだし、つま先が痛み始め、いつの間にか涼風が止み照りつける日差しになす術もなかったが、もうそんなことは構っちゃいられない。一刻も早く、快適な小屋に帰りついてほっと一息吐くまでは……
やっとこさの思いで森に辿り着く。ここから先は、脚の痛みと疲労と暑さで体力を消耗していたねむりねこは、猫かぶりの跡をついて行くのが精いっぱいだった。時折、気分転換に猫かぶりが話しかけてくれるのだが、返事を返す余裕も段々となくなってきた。最後までペースを落とさずに歩こうと、行動食を胃に押し込み、水を飲み続けて、歩く、歩く、歩く……
森が切れて、元来たトラックが見えた時には、全身の力が抜けてヘナヘナと座り込みそうだったが、小屋までは、ここからさらに1時間弱歩かなくてはならなかったので、とにかく頑張り続けた。それにしても、トラックを歩くのは本当に快適でいい。何にも考えずに、ただ歩くだけでいいんだから。
小屋に辿り着いたのは夜の8時過ぎ。途中の休憩も入れて、約13時間の長~い一日がやっと終わった。猫かぶりは、
がここまで頑張れたことに対して、心から喜んでくれた。彼に言わせると、今回ので
のレベルがランクアップしたとのことで、スリーピー・ホロウを始め、この夏に計画しているトリップはどこもほぼ問題ないだろうとのこと。
うん、褒めてもらってとても嬉しいんだけどね、疲れちゃって、あいにくと今はどこへも行く気になれないな……