エコ・ニュージーランド Eco New Zealand

ニュージーランド発。エコライフ、環境保護、山、森、動物、アウトドア、山歩き、猫についてのブログ。

ねむりねこよりみなさんへ

エコ・ニュージーランドへようこそ!! その時の気分で、過去の旅行の話になったり、庭、環境保全、トレッキング等々、話が飛んでいます。ジャンル別にお読みになりたい方は、左のカテゴリーからどうぞ!! また、本文中のトレッキング(トランピング)関連の用語の説明は、同じくカテゴリー欄から「ニュージーランドのトランピング用語集」をご参照ください (^o^)

ニュージーランド絶滅危惧種・タカへの幼鳥育成体験!!

2010年01月26日 | 環境保全(生態系、動植物)
先月のことになるが、ニュージーランドの絶滅危惧種の鳥の一種、タカへ(Takahe, クイナの一種/学名:Porphyrio hochstetteri)の幼鳥を育成するお手伝いのボランティアを猫かぶりと二人で体験した。

 タカへは飛べない鳥のため、特に生後1年に満たない幼鳥期は、天敵に襲われ幼い命を落とすことが多い。だから人間によって管理育成を行うことで、幼鳥の存命率を高くし、種を絶滅から救おうとするもの。具体的には、

(1) タカへの卵を野生動物保護地区(Wildlife Reserve)に住む、成鳥のつがいの巣から採集
(2) 卵は人工孵化機に入れられ、約28日で孵化する。生まれたヒナは、生後1年まで幼鳥育成センターで育成される。

 タカへセンターに到着すると、検疫所にてセンター内専用のゴム長靴に履き替えなくてはならない。また、一切の食べ物は持ち込み禁止。そして、センター内入ったらしっかりと手を洗う。生まれたばかりで抵抗力の弱いヒナたちを、あらゆる雑菌から守るための配慮である。


<ヒナの育成室棟>

 ねむりねこと猫かぶりが訪れた日は、生後2日()が一羽、生後2週間程度が三羽いて、一羽と三羽は別々の育成室に入れられていた。まずは窓越しに対面。どのコも本当に可愛い 成鳥は、赤いくちばしに青と緑の体という、原色鮮やかな外観なのに、ヒナはまっ黒…… でも、飛べない鳥らしく、脚は生まれた時からとてもよく発達している。



 ヒナに給餌する時は、タカへのくちばしの色形を象った模型を指にはめ、



タカへの体と同じ色の手袋をはめ、その手のひらには給餌の際の親鳥の鳴き声を再生する小さなi-podとイヤホーンを握り、壁越しに行う。壁の上部は、特殊ガラスになっていて、外側から内側は見えるが、ヒナのいる内側から外側の情景は見えない。これによって、実際はヒトにエサを与えられているヒナが、あたかも親鳥に食べさせてもらっていると思いこみ、よって人間としてインプリントされるのを防いでいるのだ。

 給餌する間隔は、生後2日は45分おき、数週間のものは1時間おき。与えるエサの内容は、フダンソウやクローバーの刻んだものに、ビタミン数種類、粉ミルクなどなど。生育過程によって、これらのブレンドの比率は異なり、専門のレンジャーがきっちりと計量して作る。

 
<親鳥をかたどった模型>

 育成室の内部は、親鳥をかたどった模型(この内側で眠る)、エサ、水、下には土色のタオルを敷き詰めてある。タオルや模型は、毎日清潔なものと取り換えられる。  

 ……つまり、タカへのヒナたちは、お抱えシェフの作る特性料理を、ばあやに食べさせてもらい、部屋の清掃もしてもらう、というVIP待遇なのだ。う~ん、さすが絶滅危惧種

 専門のレンジャーのお手本を見せてもらってから、も給餌を体験。模型をはめた不器用な指先で、流動食のようなエサをつまみ上げるのは難しくてなかなかうまくできないんだけど、ヒナは模型の周囲にこびりついたエサをバクバクと食べる。



 生後2日のヒナは甘えん坊だ。エサを食べている途中で、手袋をはめた腕の下に入ってしばらくうずくまったり、給餌を終えて腕を抜こうとすると、ピーピー鳴きながら追いかけてきたり…… 親鳥の愛情も必要な時期なのかもしれないけど、そこまでの演技は要求されない。食事が終わると、親鳥の模型の下に入っておねんね。人間の赤ちゃんさながらだ。

 一方で、生後数週間のヒナたちは逞しい。エサもほぼ自分で食べられるし、ふざけ合ったり、走りまわったりしてとても活発だ。人間だと2~3歳に相当するのだろうか。エサを差し出しても興味を見せないので、満腹なのかと思って腕を抜こうとすると、いきなり食べ始めるし、食べている最中にヒナ同士で遊び始めたりと、無邪気でやんちゃなヒナたちだ。

 ヒナたちがすっかり気にったは給餌を担当。指にはめた模型の操作にも慣れ、時計とにらめっこで二つの育成室を行ったり、来たりする。猫かぶりは給餌を一回経験した後、他のレンジャーと一緒に屋外作業を担当した。

 せっかく来てくれたから、と野生動物保護地区の中も見学させてもらい、成鳥のタカへを間近で見るチャンスも得た。ニュージーランド国内で、いや世界中で400羽程度しか棲息しないこの鳥(注・ニュージーランドの国鳥キーウィよりずっと少ない)を野生で観察したのはこれが3度目だが、こんなに間近で見たのは初めてのことで、とっても、とっても感激した



 さらにおまけで、タカへの卵の孵化室の見学もさせてもらえた。ニワトリのものに比べると細長く、象牙色で黒い斑点がある卵が、孵化機の中に静かに横たわる。



 センター長が、あと2日で孵化する予定の卵を取り出してチェックしたあと、

「もう、鳴き声が聞こえるんだよ」

ねむりねこ達の耳元に卵を近づけた…… 



本当だ 殻の内側からピーピー言うのが聞こえる 

「でね、これを下に置くと、動くんだよ。ほら」

机の上に卵を置くと、ひとりでに左右に揺れ始めた 卵の中で息づくちいさな命。その初めての出会いに、言葉には尽くせないほど感動した。

 夕方近くまでエサやりを手伝い、センター長と育成係のレンジャー達にお礼とお別れを告げて、施設をあとにした。センター長のロス、育成係のリズ、本当にどうもありがとう……

クイーンズタウンに本物の夏が来た

2010年01月23日 | クイーンズタウン
 今度こそ、本当に本当だ

 もし違ったら、なんて縁起でもないこと考えるのは止そう

 新年が明けてから、ほぼ立て続けの大雨警報や、山間部にはジョーダンみたいな量の降雪など、およそ「真夏」とは思えない毎日が続いていたが、今日は素晴らしい青空が広がり暑い一日になった。

 これぞ誰もが待ち望んでいた夏だ

 こんな日に働いているねむりねこは、窓の外を眺めて、溜め息の連続。青空に向かって飛び立てない「カゴの鳥」の心境だ。

 フィールドのスタッフとの定時連絡で、
「今日はこっち、とってもいい天気だよ
なんて聞かされて、
「アンタ、いいわね。あたしらは一日ここに缶詰だわよ
「ああ、そいつは気の毒だねぇ 日が長いんだから(注:1月23日の日の入り時刻は午後9時25分)仕事が終わってから外でのんびりしろよ
……言われなくたってそうするもん

 遠足の日を指折り数える小学生のように、もう次の非番が待ち遠しくて一日に何回もカレンダーを眺める。次はここへ行って、その次はあそこへ、そして…… 楽しい空想に耽るである。

 ちなみに、今年の夏に歩きたい場所は

 地元ではグリーンストーントラックの近くに聳えるホーム・ヒル(Home Hill, 1608m)。死ぬ気で頑張ってケイプルズ谷(Caples Valley)の北にある宝石のような湖スリーピー・ホロー(Sleepy Hollow)。グレノーキーにあるアーンズロー・バーン(Earnslaw Burn)に再トライしたいして稜線も歩きたい。マトゥキトゥキ谷(Matukituki Valley)からカスケードサドル(Cascade Saddle)までの往復もいい。

 フィヨルドランド国立公園では、ガートルード・サドル(Gertrude Saddle)。Uパス。ちょっと頑張ってティティロア山(Mt Titiroa, 1710m)。もっともっと頑張ってアデレード湖(Lake Adelaide)。 

 これを読んで、頭の中がはてなマークだらけになるのは、ごく普通の反応なのでご心配なく。

 「ははぁ、あそこか」なんて思ってニヤニヤしてるアナタや、地図を広げて場所を確認しているアナタは、ただならぬ山好き 晴れて(の同類です


新年初トレッキング ~感動の二日目~ 後編

2010年01月20日 | トレッキング
 1543の頂上を目指したあたりは結構風があったので、これも急坂の最短距離を行かず、頂上から左側に伸びる稜線目指してジグザグに登り、岩だらけの稜線をたどると頂上に着いた 
 やったぁ~



 頂上から四方を見下ろす景観は、山々がいっそう間近に迫ってこれまで以上に迫力があった


<クリスティーナ山(Mt Chrisitina, 2474m)>


命名「おにぎり山」ことサーベル峰(Sabre Peak, 2161m)>


<マッケラー湖(Lake Mackellar)とマッケラー峠(Mackellar Saddle)>


<エイルサ山脈(Ailsa Mountains)の一部>

そして、ここからは遠いので見られるとは思わなかった、グレノーキーの秀峰アーンスロー山(Mt Earnslaw, 2820/2830m)にも出会えて物凄く嬉しかった この辺では最高峰の、その頂上にはまだたっぷり雪が残っている。



これまでの苦労やつらさが一瞬にして報われ、感動で胸がいっぱいになる。東側の斜面には、カスケード・クリークの最上流部が見え、このはるか下流にあるキャンプ場で一夜を過ごしたのかと思うと、感慨ひとしきり。


<写真をクリックして拡大。右下の方、岩のすぐ上に見える、山の麓のキレツのようなのが上流>

これぞ、ピーク・ハンティングの醍醐味 岩場に腰をおろして、しばし休憩。

 1543からの下りはかなり急で険しく、滑りやすい下草が茂っている。ちょっと方向を間違えると、急に足下がなくって滑落してしまう箇所があるので、ルート・ファインディング能力が確かでないと危険だ。


<途中の岩場で見つけたエーデルワイスの花>

 じきに緩やかな鞍部に出て小休止。近くの大岩から飛び降りようとするねむりねこ(クリックで拡大)



さらに下り続けると、ところどころ人の足(もしくは野生のヒマラヤヤギ)で踏み固められた跡を見つけてほっとする。標識が全くないバックカントリーでは、これだけでもあるとないのとでは大違いだ。グリーンストーン渓谷を見下ろす展望所を示すケルンがあり、ここから先はトラックが付いているので、さらに足元が楽になる。


<展望所からグリーンストーン谷>


<展望所からマッケラー湖(Lake Mackellar)このほとりに今夜の宿がある>

 展望所では、ちょうど今から1年ほど前、このあたりで若い命を落とした、猫かぶりの元同僚のトレッキングガイドのために、二人で静かに手を合わせた。地元クイーンズタウン出身、明るい笑顔で誰からも好かれた彼の、遭難と葬儀の様子は地元の新聞に写真入りで載った。なぜ、神様は彼のことをこんなに早く呼び寄せたのだろう……

 その後は、森の中の下りが気が遠くなるほど延々と続き、ダック・クリーク(Duck Creek)のせせらぎが近づいた頃、トラックは平坦になり、やがてグリーンストーン・トラックに出合う。一日の大半を歩いた「道なき道」と比べると、整備の行き届いたグリーンストーン・トラックは「舗装道路」のよう。その歩きやすさたるや、目をつぶっていても歩けるんじゃないかと錯覚してしまうほどで、普段はあまり感じない、その有難さが身に沁みる。

 人里を遠く離れた辺鄙な山奥は、本来なら適切な技能・経験が備わった人でなければ探索が不可能な場所。しかし、それを誰でも手軽に探索できる場所に変えてしまう、魔法のツールがトラックなのだ。だから、トラックを造成した人々や、整備をする人々には、その絶大な尽力に感謝こそすれ、つまらないアラを探して文句を言ったり、まして批判するなんてもってのほか と思うであった。

 その晩は、マッケラー小屋(Mackellar Hut)に滞在。



町のアジア食品店で買った、日本製のレトルトカレーと軽く炙ったピタパンの夕食。海外では高価な日本製のレトルトカレーは、これまでわざわざ口にしたことがなかったが、今日は大仕事を成し遂げたご褒美に食べた。美味しい。とても美味しい。ニュージーランドの山奥で、懐かしい故郷のカレーの味。疲れた体に、マイルドで豊かなスパイスが心地よく、食が進む。ジューシーなオレンジを食後のデザートに食べ、大満足のディナーだ

 翌朝は曇り空の中を、駐車場に向けて出発。前日の疲れも大して残っておらず、整備されたトラックを快調に歩き続ける。ところどころ、ぬかるみ地帯があり、その周囲をうまく迂回しながら歩く。お昼頃には駐車場に到着し、サンドイッチの昼食をとったた後は家路へ。

 初日のマリアン湖にはしてやられたが、今となってはそれも山歩きの醍醐味の一部となり、結果的には大満足の2泊3日だった 
メニエール病
が完全に抜けて、体調に不安がなくなった2010年は、こういう経験をたぁくさんする年にしよう

新年初トレッキング ~感動の二日目~ 前篇

2010年01月20日 | トレッキング
<キャンプ場内を流れる、カスケード・クリーク。河原で満開の美しいルピナスは、ニュージーランドでは本来の生態系を破壊する害草>

 カスケード・クリーク・キャンプ場では心休まる一夜を過ごした。ブナの林の、フカフカの落ち葉の絨毯の上にテントを張り、キャンプ場を流れるカスケード・クリーク(小川)のせせらぎがBGM。夕食はクスクスのカルボナーラソースがけを食べた。クスクスは北アフリカのあたりが発祥の、小麦でできた乾燥食品で、ニュージーランドのスーパーマーケットで簡単に手に入る(詳しくはこちら)。調理法はいたって簡単。沸騰したお湯に、油少々とコンソメを溶かし、その中にクスクスを入れたら火を止め、2~3分蒸らせばでき上がりなので、キャンプやトランピングの必需品である。 

 夜通し時折ぱらついていた小雨が朝には完全に止み、予報通りこの後晴れそうな気配なので、予定を決行することにした。今日のコースは、地元の山好きが「ウィスキー・トレイル(Whisky Trail)」と呼んでいる尾根歩きのルートを辿り、稜線の最高峰「1543」(標高がそのまま名前になっている)に登頂し、マッケラー湖(Lake Mackellar)側に下りる、というもの。トラックが途中までしか付いていないので、トランピングの専門書モイヤーズ・ガイド・サウス("Moirs Guide South")の記述を参考に、5万分の1地形図(NZTopo50-CB09, Hollyford)を見て安全なルートを割り出す必要がある。経験者向けのルートで、地図を読んだり、ルート・ファインディング(route finding)ができない人にはお勧めできない。


<周辺の地形図。クリックすると拡大。訪れた場所は赤で、泊まった場所は黄色で表示>


 スタートは、ニュージーランドを代表するトレッキングコースの一つ、ルートバーン・トラック(Routeburn Track)の始点になっているザ・ディバイド(The Divide, 532m)。ルートバーン・トラックを30分ほど歩いて、キー・サミット(Key Summit, 918m)への脇道へ入る。このトラックは、道幅が広く、手入れが大変よく行き届いており、標識もいたるところにあるので、山好き達は冗談で「ルートバーン・ハイウェイ」と呼ぶほど。これならニュージーランドに来て初めてトランピングを経験する人でも安心して歩ける。

 歩いているうちに、曇り空がみるみる晴れ、夏の日差しが顔を出したと思ったら、あっという間に暑くなったので、フリースのジャケットを脱いでザックにしまう。

 キー・サミットの頂上からは、ホリフォード谷(Hollyford Valley)にちょこんと佇むマリアン湖、白い雪を抱くクリスティーナ山(Mt Christina, 2474m)、


<クリックして拡大>

ガン湖(Lake Gunn)、



ハウデン湖(Lake Howden)、ジーン・バッタン峰(Jean Batten Peak, 1971m)などを一望する、この辺の日帰りウォークでも一、二位を争う絶景に出会える。この絶景は、クイーンズタウン周辺でいうなら、ベン・ロモンド(Ben Lomond, 1748m)頂上への日帰りウォークに匹敵する。

 頂上付近を一周する木道を歩くと、貴重な高山植物の数々を間近で眺めることができ、展望の開けた所にはベンチがあり、休憩や昼食には最適の場所だ。


<高山植物の一種、マウンテン・デイジー>


 頂上のベンチで、少し早目の昼食を取った後、稜線上に伸びる古いトラックを辿り始める。ところどころ、大雨の跡と思しき泥んこ地帯を迂回したり、マヌカなどの生い茂る藪をブッシュ・バッシングするのだけど、トラックの状態はおおむね良好。いつ頃から使われなくなったのだろうか。

 ここからはしばらく平坦な尾根歩き。山々の織り成すダイナミックな景観を両側に眺めながらの素晴らしいウォーク。いつもは下から眺め上げている山々や峰々がドーンと間近に迫り、「このままずっと歩き続けることができたら……」と思ってしまう。稜線歩きの醍醐味である。

 古いトラックの終点にはちょっとした展望所になっており、足下には昨晩その近くでキャンプしたガン湖(Lake Gunn)、ファーガス湖(Lake Fergus)を望む。



濃い緑の森に包まれた湖の美しいこと。見える山も変わってきて、遠くには登山家に人気のエミリー峠(Emily Pass, 1607m)、稜線の反対側の下方にはグリーンストーン・ケイプルズ・トラック(Greenstone/Caples Track)の最高標高地点、マッケラー峠(Mackellar Saddle, 947m)などが風景に加わる。


<ジーン・バッタン峰とその下にマッケラー峠>

この辺は高緯度(南緯45度)のため森林限界が1000mぐらい、麓から少し登るだけで高山地帯の風景に出会える、ラッキーなロケーションなのだ。1543まで道のりはまだ長いけど、これだけの絶景を眺められただけでも満足に値する

 キーサミットで休憩中に見かけた、三人組が後から追ってきていたのに気が付いた(クリックして拡大。岩の上にちっちゃく映る人影がそう)。



あまり遅くならないうちに、この先を行くには泊まり掛けの装備が必要だと言おうと思っていたら、そのうち一人は足が速く、途中で追いついてきた。

「このコース、何て名前? 日帰りウォークの地図には載ってないんだけど」
「地元の人の間でウィスキー・トレイルって呼ばれてる稜線歩きだよ」
「そうなんだ。それにしても、素晴らしい景色の稜線だよね!! あなた方はどこまで行くの?」
「この先、最高地点の1543に登って、グリーンストーン谷に下りてマッケラー小屋に泊まるんだ」
「そうなんだ。僕たちは何にも持ってきてないから、どこかで引き返すしかないけど、いやぁ、全然知らなかったよ、こんないいコースがあるなんて。ありがとう」

 このアメリカ人の三人組はご両親と20代後半(らしい)の息子さん。その後トラックがなくなってからも、丘陵地帯を歩く小気味良い足取りから、経験者ということがうかがえる。キーサミットで休憩していた時に、ねむりねこ達が他の人たちとウィスキー・トレイルのことを話しているのを小耳にはさんたのだろう。興味本位でちょっとついて行ったら、見事な景観が続くものだから、引き返すに引き返せず、時間の許す限り行ってみよう、ということになったらしい。

 トラックが姿を消してからは、草むらや地衣類の広がる、緩やかな稜線を延々と歩き続ける。地形図ではわからなかったが、実際歩いてみると小さなアップダウンがたくさんあるから、起伏が緩やかで楽に歩けるところを見定めながら歩く。目標は1543登頂なので、時間と体力を温存するために、途中にある丘の頂上にはあえて登らず、楽に抜けられるルートをトラバースする。ぬかるみや草地に足を取られながら何もないところを歩いていると、人があまり足を踏み入れない、本当のバックカントリーに来たことを実感。山並みを眺めながら、歩く、歩く……


<ジーン・バッタン峰と、尾根にある名もない池糖>

 高曇りのお蔭で日差しがきつくなく、谷あいの風が時々吹き抜けるという、稜線歩きには絶好のコンディションだけど、何時間も歩いていると、それなりに体がしんどくなってくる。越えても、越えても、「モグラ叩きゲーム」のように次々と新しい丘が前方に姿を現し、果たして無事完歩できるのか不安になってくるねむりねこ

 一方で、「おれもキツイし、けっこう疲れたよ」と口では言うものの、依然として涼しい表情の猫かぶり。ここ数年、夏の間は山で過ごす仕事をしており、一昨年、地元のオフロードマラソン2種類に参加し、トレーニングなんて全くしなかったのに、平均を少し上回るタイムで走破した経験のある彼は、持久力におそろしく長けているのだ。

「せっかくだから、これを機会に、トレーニングを積んでタイムを縮めれば」
と勧めたのだが、
「そんなツライことしたって、せいぜい10分か15分しか変わらないだろうから、やらない方がましだよ」
と言って利かない。も一緒にトレーニングに付き合う、といえば気が変わるのかもしれないが、瞬発力・敏捷性を要する運動が得意で、持久力系はダメという猫型人間には口にできないセリフである。

 話が横道にそれてしまった。1543の手前の丘越えは中でも一番険しく、最後の部分は急坂を上るか、それを避けてガレ場をトラバースするかのどちらかを行くのだが、結局、多少足元は悪くても傾斜の緩いガレ場を選んだ。ガレ場を抜けて丘の反対側に出たところで少し休憩。さあ、目標の頂上までもう一息だ…… 



<草地の丘の上に顔を出した、岩らだけの山が1543>
 

新年初トレッキング ~傷心の一日目~

2010年01月15日 | トレッキング
 年が明けて、猫かぶりと非番の日が3日間重なったので、一緒に泊まり掛けで歩くことにした。今回は、地元クイーンズタウンを離れ、ニュージーランド最大の国立公園である、フィヨルドランド国立公園を探索することにした。
 
 初日は、ホリフォード渓谷にある、ハンボルト滝(Humboldt Falls)を眺めてから、マリアン湖(Lake Marian)を歩き、湖畔でキャンプする計画を立てた。この湖を訪れるのは何と10年ぶりのことだが、雪を頂きに抱く山々と緑濃い森に囲まれ、ひっそりと佇む美しい湖の姿は、未だにまぶたに焼きついている。

 今年に入って、すっきりと晴れたのは1月2日のみ、その後10日ほどの間に大雨警報が何回も発令され、降雪もあり(注・ニュージーランドは今が盛夏です)という、とんでもない悪天候が続いていたのだが、この日は曇り空で小雨が時折パラつく程度。歩くには支障のないお天気だったので、ウキウキ、いそいそと歩き始めたねむりねこ達であった。



 ハンボルト滝 (275m) へは往復30分とたいへん手軽だが、何と見ごたえのある立派な滝なのだろう……(写真をクリックすると拡大) 



 ここがニュージーランドの本当に凄いところで、だれもが簡単に歩けるトラックからでも一級品の自然景観を眺められるのだから、手軽さは決して侮れないのだ。

 
 次は往復3時間のマリアン湖。



こちらは歩き始めていきなり 木道のすぐわきにはほとばしる渓流が流れているのだが、大雨や雪解け水で増水したのだろう、物凄いしぶきをあげて猛り狂うように流れている。ひぇ~っ!! 誤って落ちたら、即死は間違いないだろう。



さらに進むと、トラックの一部が川に



そしてトラックの終点は、水没していた(写真をクリックすると拡大)。



湖畔には小さな石が敷き詰められ、きれいな草地が広がっているハズなのに…… 湖は深い森に縁取られていて、こんなの藪こぎしたら体中傷だらけになりそうだ。



湖畔を歩いて対岸へ抜けて、リトル滝(Lyttle Fall, 122m)を眺めてキャンプするつもりだったのに。ふぇ~ん!! 野営用の大荷物を背に、元来た道をトボトボ戻る、傷心の達であった。


 その晩は、ミルフォード道路沿いにある、DoCが管理するキャンプ場のひとつで、ガン湖(Lake Gunn)の近くにある、Cascade Creek Campsiteで静かな一夜を過ごし、翌日のハイライトに備えた。


クイーンズタウンよりハッピー・ニューイヤー

2010年01月01日 | クイーンズタウン
      <朝焼けのアスパイアリング山(Mt Aspiring, 3033m)>
 
 新年明けましておめでとうございます

 除夜の鐘も、お節料理も、こたつもないお正月を迎えるのはこれで12回目になった。大晦日には友人宅で年越しそばを食べ、ニューイヤーの打ち上げ花火を見に行った。この明るい活気ある雰囲気も悪くないけど、やっぱり新年は静かに迎えたいと思ってしまう。大晦日は飲んで騒いで、元日は二日酔いで迎えるだけなんて、ああ、情緒のかけらもなくって興ざめしちゃうなぁ

 おおっと、新年早々辛口になってしまったけどどんなに長く異国で暮らしても、はたまた異国の暮らしをどれだけ楽しんでいても、心は日本人のまま変わることがない、ってことを改めて感じた。でもね、仕事の関係で、年末年始はお休みがとれないんだから、スパッとあきらめるっきゃないのよね

 気分直しに地元の山の写真を。クイーンズタウンから車で15分ほど西に行ったところにある、クライトン山の頂上(Mt Crichton, 1866m)から、セシルピーク、リマーカブルズ連峰とワカティプ湖の眺め。



 山頂付近に静かに佇むイソベル湖(Lake Isobel)。



 イソベル湖に近づいてみると……



 なんてきれいな水の色……



 この美しい眺めに、すっかり癒されてしまったねむりねこです 
 
 明日から三日ほど非番なので、グリーンストーン渓谷の猫かぶりのところに行って、遅ればせながら新年を祝おうと思ってる。お天気次第で、また新たな場所を探索する予定。